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『ちむどんどん』第67回 理想のレストランと女性像

 アッラ・フォンターナで6年目の暢子。常連客である西郷の再婚問題などなど、細かいことが今もあります。

和歌子は青森からきた

 賢秀が助けた和歌子は、青森から出稼ぎに来ていました。『ひよっこ』でもヒロインたちがそうだった、東日本からの出稼ぎ労働者ですね。この青森言葉がなんとも味があります。賢秀は制御しつつ、沖縄相撲大会のお手伝いをしたら、ギャラとして電車賃を払うと三郎が約束します。
 今みたいに通信手段もない。そういう時代は、地方から来て帰れなくなるようなこともあったんですよね。でも、賢秀は養豚に戻ると思うので、この恋も実らないような。

愛の記事は読者に届いた! 博夫も目覚める

 愛と田良島のやりとりがすごくよかった。この投書を読む愛の場面では、田嶋陽子さんのことを思い出しました。彼女もさんざんメディアからイロモノ枠にされていじられてきたけれども、その教えが響いていた人がいた。だから彼女は活動を続けていたと。
 この愛周りの描き方から、ジェンダーについての発信を考えると実に興味深い。やっぱり、上の顔色や世間のことに必要以上にビクビクして、自分の心を裏切っている人っているもんですよ。朝ドラチームもそういう反省があるんじゃないですか。
 羽原さんも、ジェンダー描写が『マッサン』に比べて妥協しなくなっている。

 そして博夫だ。ジェンダーのことは女性だけを救うのではなく、男性もそうする。家父長制に反旗を翻すことで、博夫も救われる道へ一歩踏み出したと思えます。

理想のレストラン

 そして西郷も、正面から向き合った。あのポルチーニのリゾットがあればこそ、最高の解決に向かいました。幸せになって欲しい三人でした。
 正面切ってそう誘導できる房子は素晴らしい。そりゃ暢子も感動する。私も感動した。いい話だ!

良妻賢母路線だけじゃない

 朝ドラのヒロイン応援といえば、なんだかんだで良妻賢母路線におさめようとする流れはあった。定番の働く母と反発する子。『あさが来た』にせよ、その雑な焼き直しである『わろてんか』にせよ。モデルはそうでないのに、ヒロインがそのあたりをウダウダ昭和高度経済成長期をトレースして悩む描写は馬鹿げていました。実にくだらなかった。でも結局アリバイなんですよ。『半分、青い。』や『なつぞら』みたいに、周囲から助けを得てそこを切り抜けようとするとウダウダウダウダたたく声の大きな“朝ドラ通と良識派を自認する皆さん”が騒ぎ出す。だからそこは誤魔化す必要があると。

 本作はそうでないし、房子オーナーという良妻賢母ではないロールモデルを出してきました。『おかえりモネ』のさやかも素敵だったっけ。そういう女性がいてもよいのですが、結婚も子供もいないでいきいきのびのびしている女性となると、「少子化促進する!」みたいな寝言を言う人が一定数いるんですよね。

 今回はそういう忖度がなくていいです。

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