『おかえりモネ』第33回 次は、何かできるようになりたい

 森林組合のおばちゃんおじちゃんたちが気象予報士たちをもてなします。登米名物の油麩丼、そしてお米が振る舞われています。登米の米は宇宙一! そう誇らしげな声もある。野坂は日本酒を飲みながら、だからおいしいのかと納得しています。東京の三つ星シェフも舌を巻いた米! そう自慢げです。そこに中村と菅波の二人もやってきて、はっと汁もできあがります。
 ずんだや牛タンだけではない。そういうメジャーで誰でも知っているもの以外、B級グルメをあげてくるところがシブい。

あれからもう4年

 あれからもう4年。おもてなしのあと、そう語るサヤカと朝岡。この二人の関係はどういうことかとモネが聞くと、4年前からだと語られます。中村もそう。医者として災害派遣されてきた。朝岡は観測器の設置で沿岸部を回った。救援と防災のために、二人は宮城まで来たのです。
 中村からも姫と呼ばれるサヤカ。サヤカはそんな復興支援チームに居場所を提供していました。以来なんとなく、お互い分野はちがうけど、朝岡と中村のの関係が続いているのです。
「しかしまだまだだなぁ」
「まだまだですね」
 復興を助け、支援しても、それを誇らず、むしろ「まだまだ」と交わす。そこには紛れもない誠意があります。そしてこの場面には菅波がいるのですが、無言で目立たないと。こういう菅波も、個性があっていいと思う。

無理せずがんばる未知

 さて、高校三年生の未知は大学に行かないと父に断言します。すぐにでも水産試験場で働く! しかし父の耕治は大学受験に切り替えて好きなところに行けばいいという。未知は県職員試験が今月末、出願済みだとイライラ。ここで耕治が受からないようにできないかと持ちかけたもんだから、未知は怒ります。
「わざと落ちろってこと? 何?」
「みーちゃん、無理してないが?」
「無理なんかしてない!」
 世代間格差だな。
 耕治あたりの世代って、真面目にやらないことがカッコいいという価値観があると思うんですね。でも、そういう親を見てきた未知世代からすれば、ズルして真面目にやらない親世代が嫌で仕方ない。なんか小汚く思えちゃうんじゃないかな。
 グレタ・トゥーンベリさんがカッコいい! マイカップ持ち歩く! そういう世代からすれば、親世代は嫌なんでしょうね。

朝岡はモネを見出す

 モネは朝岡を駅まで送ると言い出します。車が運転できるって素晴らしい! 朝岡は忙しい。なんでも台風が立て続けに来ているんだとか。
「わかりますか?」
「少しは」
 おっ? 朝岡が弟子をとる師匠モードだ。ここでモネが野坂と話していたリードタイムについて質問すると、朝岡はうれしそうにします。
「よしきた、やっぱり食いついてきたね!」
 十分後がわかるといったときの食いつきから、モネに目をかけていたようだ。未来は誰にもわからない。でも気象はわかる。そううれしそうに語り出す朝岡。気候を分析すれば未来に起こることがわかる。気象は危険を予知する時間がわかる。これがリードタイム! 全力尽くして提供するのは、大切なものを守る時間です。そう言い切ります。
「あと……」
 そう言いかけ、戸惑いつつ、こう朝岡は言う。
「何もできなかったと思っているのは、あなただけではありません」
 そう、モネは朝岡の前でこう言ってしまっていた。
「あの日……何もできなかった」

最大限の警戒を!

 こうして朝岡が帰って行き、テレビで本業をこなしています。これから雨は東北へ。200ミリ降るらしい。モネはペットボトルを持ち、サヤカの部屋は山の側だから一緒に寝ようと持ちかけます。
 最大限の警戒を。テレビでは朝岡がそう言っている。
 サヤカは修学旅行みたいだとウキウキしながら、モネの部屋にある天気の写真に驚いています。仕事の記録になっているとこぼすモネ。気象と向き合う時間が減っているのでしょう。そんな中、朝岡は「これまで経験したことのないような重大な危機が差し迫っている」と言っています。
 サヤカは1947年(昭和22年)9月17日、カスリーン台風の日に生まれました。モネも超大型台風の日生まれで、誕生日が一致するのだとか。
 山に引っ張られてきたとサヤカがいうと、モネは山の怒りなんか鎮められないという。それはサヤカもそう。怒りを鎮めるのではなくて、防ぐことが大事ですね。ここで停電!
「山神様がぁ」
「ふざけないでください!」
 懐中電灯をつけ、皆の無事を心配する二人。モネはスマホで気象情報を確認し、雨雲が切れているから一時間くらいでやむと言います。
 サヤカはここで語り出す。
 水害でここらの集落は全部壊滅状態になったらしい。その混乱の中で生まれ、山の主に引き取られた。この家は、伊達の殿様の言うことを守って、山にコツコツと木を植えてきた家だった。
 木は家になる。燃料にもなる。船にもなる。何もかも失ってしまったとしても、そこに木があれば、人は必ずそれを使ってまた生きようとする。
 モネはそう聞かされ、樹齢300年のヒバにかけるサヤカの気持ちを察しています。
 あの木はひとびとの暮らしを守る最後の砦。そう教えられてきた。私はこの土地を守るのが役目だと思って生きてきた。
「案外、真面目でしょ?」
「知ってます」
「おっ! フフフ、こりゃ参った」
 そう二人は語り合うのでした。

何もできなかったと思う人は

 このあと電気がつき、モネが起きていくとサヤカが電話で話しています。迫川も北上川も大丈夫。そう確認する姿でした。
 モネは朝岡の言葉を思い出します。
「何もできなかったと思っているのは、あなただけではありません。私たちは、サヤカさんももしかしたら誰もが、自分は何もできなかったという思いを、多少なりとも抱えています。でも何もできなかったと思う人とは、次はきっと何かできるようになりたいと強く思うでしょ? その思いが私たちを動かすエンジンです」
 このときの台風は、関東から東北にかけて大雨をもたらしました。これまでの雨量は東北南部で700ミリを超えた。記録てきな大雨です。土砂災害に警戒が必要。そうテレビの朝岡は語っています。
 何もできなかったと思う人は、次は何かできるようになりたいと強く思うでしょう?
 そんな言葉を噛み締めるモネでした。

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