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『おちょやん』108 芝居を作る大志

 かつて、NHKの番組がギラギラしていた時代がありました。ラジオドラマ『お父さんはお人好し』は絶好調です。

みんな大好き『お父さんはお人好し』

 道ゆく人から「お母ちゃん」と声をかけられる千代。そうすれちがう若奥様は、後頭部のみパーマネントをかけてますね。せやせや、当時は前髪おろさないで、こういうパーマネントをかけてます。サザエさんのあの髪型って当時の流行なんですよ。それをきっちり再現してきました。

 収録現場は息があっていて、自分のセリフを言わないでいい子役も吸い込まれるようです。ほんで桜庭がワイシャツを腕まくりしていると。その腕だけで緊張感が伝わってくるちゅうか。桜庭が腕を動かすと、すちゃらかしたテーマソングの生演奏です。
 ほんで、四ノ宮が今日も絶好調といいよる。こいつ……あんなに箕輪悦子推しとったやんけ、千代はあかんと思とったとか言っとったやろ! こいつはあれですわ。戦争中、日本は負けへんと強気で、戦後「いやあ、負けると思ってたんですよ」とかなんとか言うとったで。ハァ〜、しょうもなっ!
 そこがええ味出しとるかもしれない。桜庭との対比がおもろい。それに昭和のフィクションっぽいと思う。こういうイケメンで調子ええ奴はライバルで、主人公は桜庭タイプと。すかして調子こいてて顔だけはいいという、そういう存在を体現する四ノ宮、ええやんか。

 岡福で『お父さんはお人好し』を聞いて、ビールと酒を飲む。それが新喜劇の習慣になりました。放送時間に生活習慣を合わせる時代です。『君の名は』の放送中は銭湯から人が消える、なんて言われましたね。すっかりこれがみんなの楽しみになっているのでしょう。
 千代をひとしきり褒めた後、気がかりなことも言い出される。それは毎週ようこんなおもろい話を作る、という脚本家への褒め言葉ですわ。何やら不穏ですな……。
 ここでみつえとシズ、大阪のおばちゃんコンビが突っ込んでくる。ボンやん、すなわち一平の不調をかぎ取っています。一同の顔は暗い。ライターズブロックにぶつかっているようでして。一平は自分を追い詰めているそうです。宗助一人がそんな一平に歩み寄ることを言う。
 なぜ、道頓堀うどん屋の女将が芸能情報に詳しいのか? そのからくりが見えてきましたね。ズケズケ聞いてくるおばちゃんには勝てへんのよ。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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