『今ここにある危機とぼくの好感度について』第3回
みのりちゃんの真剣トークを聞いて、神崎真は、変わったのか、そーでもないのか。イケメン大学広報マンの奮闘は続きます。
炎上はどこから起こるかわからないけど、燃料はある
帝都大百周年イベントに張り切る神崎。といってもですね、これでお給料もらってるし、まあこなさなきゃいけないよね。無難に多様性をテーマにしたトークイベントをやるはずが、もらい事故のような炎上をします。
韓流アイドルがこじつけ&切り取り炎上
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その背景にあったジャーナリスト・浜田剛志の著書ポスターが「反日だー」
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浜田剛志って帝都大でトークやるんすよ、いいんすか?
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炎上爆破予告
炎上って、そこに燃えるもんがないと起こりませんけど。まあ、韓国絡みは定番ですよね。SNSで燃えて、まとめサイトが取り上げて、ガーッと燃える。Amazonレビューなんかもきっと荒らされましたね。
で、私なりに調べましたけど。まとめブログを買い取る業者なんてもんが暗躍してるそうですよ。そこまで調べた脚本でしょうねえ。
でも、悲しいのは情報リテラシーってやつ。
大学に爆破予告したのって、76歳、無職のおじいちゃん。自宅電話番号の出てくるファックスで送ったもんだからすぐ警察が対処しました。既視感あるなあ、余命騒動とか。
この国の停滞って、このITリテラシー不足も大きくて。ITわかんないけど権限持っちゃった人の意見が通る。でもあくまでわかってないからやらかすんですね。
このおじいちゃんの言い草もね。国立大=税金が原資なら俺様の意見をきけ、ってやつ。NHKはさんざん言われてる話ですよ。受信料のことでね。
ガイアツvs好感度
安全確保を理由に浜田はキャンセルされちゃって、外圧頼みにでます。外国人記者相手に会見をして、大学の弱腰を皮肉ったわけですね。となると、大学も出てこなくちゃいけない。
今まさに、ガイアツ戦略が飛び交ってる。もう皮肉るもクソもなくて、現実を反映させたらこうなりますよね。五輪中止のために、各新聞社だのマスコミがおずおずと「あのぉ、大手外国メディアが批判してますけどぉ」と言い出した。自社の記者が言えよ。がんばってるの東京新聞以下地方紙クラスでしょ。そう突っ込みたくなりますね。どっちがドラマかもうわからん状態。傑作って現状とシンクロするんだって思いますよ。
そのせいで総長も引っ張り出されちゃって……神崎は想定問答集を作ります。でも、結局安全確保を繰り返すだけ。すごくバカみたいだし、神崎は散々周囲から突っ込まれる。でもリアリティがあるからしゃーない。
会見に中身はいらない。好感度だけでいい。最近もどっかで聞いた気がします。心理学ではもうとっくに答えは出てるっていうか、【ハロー効果】っすね。
神崎は中身がない。連続講座を「連続する講座です」と説明するくらいバカです。帝都大出身で大手のアナウンサーをしていてもバカってどういうこと? つまりね、日本で生きていくにはそうなったほうがいいんじゃないかって、そういうことだと思いますよ。正論吐いてる連中、このドラマでもボロクソに悪口言われているじゃないですか。
総長の覚醒
そんなわけで、逃げるだけののらりくらり会見に総長は挑みます。
あくびが出るほどしょうもねえ、安全性確保を繰り返す会見。しかし、最後の質問タイムで外国人ジャーナリストが問いかけます。
ここが、歴史を学ぶ意義を感じさせる名場面でして。
歴史には、独裁の局面がある。言論弾圧。忖度して沈黙してしまうこと。そのことが危険なはずだ。歴史を学んでいるのであれば、そこは知っているのではないかと問いかけるのです。
ここ、大事ですよ。
前回までのみのりは、医学を学ぶ、いわば理系の根源を問いかけてきた。人の命を守るはずの科学者が、害するようなことをする是非を問うていた。そういうことをすると、結果的に人を害することになる。
今回は文系での問いかけ。言論弾圧をしていると、危険性が回ってくる。歴史学にせよ、表現にせよ、これは問いかけねばならない話でした。学術会議なんてその産物なんですよね。
日本の学問は権力に忖度して、ボロボロになった歴史がある。だからこそ、忖度してはならないと先人が訴えてきた。それをパヨクだのレフティだのケラケラ笑い飛ばすことって、本当に堕落の極みでして。そういうことをうまく反映しています。
この会見はとても上手な作りで、歴史学の徒ならば、歴史からそういう教訓を学んでいないのかと問いかけることが効きます。まあ、総長みたいにプライドと良心が残っていればの話ですけど。
総長、覚醒します。英語できっちりと、もう沈黙しないと言い切るのです。
そして理事会でも、警備をしっかりつけて、浜田を予定通り呼ぶというのです。
ああいう爆破とか、テロ予告とか。危険っちゃそうですよ。でも、ファックス脅迫おじいちゃんみたいに、できるわけないことを使うやつもいる。警備を厳重にして開催することは、よかったと思います、
しかし……。
よい独裁は存在しない
学生やら、そして神崎までもが、総長Tシャツを着ています。なんでも総長人気がバズっちゃったみたい。成功要因しをやたらと対人属性にする。日本人の悪癖が出ちゃったよ。
三谷がここで苦言を呈する。総長独裁が可能になるよ、って。帝都大は総長の権限が大きいわけで、そこが危険だというのです。神崎はヘラヘラと総長の独裁ならいいと言うわけですけれども。
これが危険なところでして。
歴史をみていくと独裁者って、はじめのうちはやる気があったり、明君要素があったりするんですよ。それが堕落するとどうしようもない。
封建制はそういう危険性がある。民主主義は? とんでもねえ悪党が権力握ることだってあるわけです。三谷は次の総長がそうだったらどうするか問いかけてきます。実際、次期総長と目されている須田は、政府やら企業に忖度するタイプだそうで。
結局、予定通り浜田は登壇し、イベントは満員御礼で終わります。じゃ、それでいいかっていうとどうなのか。総長と神崎が和やかに飲んでいたあと、不吉な予告が入るのですが……。
全方位に喧嘩を売るストロングスタイル
このドラマのよいところって、全方位に喧嘩売っているところでして。ファックス脅迫おじさんとか、電乙とか。モロにおちょくってますよね。
リベラルジャーナリストっぽい浜田が、女子大生にメロメロになるところ。キモいです。前のめりになるわ、声まで変わるわ、まじキモいです。
これは日本のリベラルありありっちゅうか。日頃人権だのなんだの言っていても、女性がらみでお粗末なことをやらかす。それこそあるあるっすね。今年の大河主人公もそうか。
弁当を食べながら軽く忖度しまくる理事会もゲス。でも、彼らも学問は何かわかっちゃいる。
人間の生きる世界は複雑だから、役に立たないようなことでも研究するしかない。それなのに、政府や企業は金になる研究をしろと言ってくる。そういうことになったら学問が終わりだ! そう神崎の質問に説明する水田はよかった。学術会議がこれだけ荒れる現在、ものすごくよい説明でした。
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