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【読書】高森明功『「女性天皇」の成立』

 2021年のマイブームといえば水戸学(我ながら嫌すぎる)。渋沢栄一顕彰を検証するために色々調べていくと、明治政府がだいたいこの影響下で色々やらかした理由がスッとつながりました。学べば学ぶほど嫌気がさす、それが水戸学ですね。

 ゆえに、本書もそうしたパズルのピースとしてつながりました。そんなもん井上毅の時点で「理論が滅茶苦茶だな」と突っ込まれていたわけで。そんなトンデモ理論でも150年経過すると否定にエネルギーを使う羽目になるんだな、というのが読み終えた感想です。

だいたい明治政府が原因

 明治以降、女性天皇と女系天皇を排除した理屈として、フランスが参考になるんじゃないかとは思っておりました。栗本鋤雲がメルメ・カションと交わした問答に、女性君主および垂簾聴政に関するものがありまして。フランスでは「そんな馬鹿げたことはありませんよ」と返ってきたワケです。でもこれはイギリスの干渉防止という特殊事情があるんですよね。

 このフランスを参考にしたのかな? そう思うところはあった。明治政府は幕臣の功績をつまみ食いしておいてそれを隠す卑劣さが持ち味ですので。日本の警察制度はフランス式で、川路利良の発案になってはいるけれども、栗本の時点でフランス式を推していたんですよね。
 といっても、栗本は別段皇室をどうこうしようという意図はないし、参考までに聞き取ったくらいかなという気はする。

水戸学の呪いは続く

 その答えが本書にあった。本書はシナ式(中国)由来ではないかと推理しています。理論は中身を読んでくださいね。

 それで合点がゆく。水戸学は華夷変態、自分たちこそほんものの中華だと思いたい欲求が根底にある。清の皇室は所詮満洲族だし。なんなら自分達が本物の尊皇攘夷を成し遂げるくらいの野心があっても無理はない。
 このことを暴いたら「なんでそんな儒教由来の中国のパクリを目指してんだよ!」となって、色々とトーンダウンすると思うんですけどね。
 またそんな新たな気づきを得てしまった。もっとまっとうにこのことを検証しているので、これだけで判断せず、中身はちゃんと読んでくださいね。

 日本がドイツをモデルにした理屈もわかってきて。
 フランスは革命をしている。イギリスも革命をされたことがある。明治政府は革命が何よりもおっかなかったんですよ。それだと倒されるのが自分らになるから。ゆえにそういう物騒な革命がないドイツを選んだと。

 結局明治政府のやらかしたことって、自己保身だらけで伝統も何もないんだな。そう再確認できた2021年でした。

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