『ゴールデンカムイ』と“被害者意識”の罠
SNSで、ドイツ人に日本の嫌いなところを聞いたという投稿がありました。
原爆や空襲の被害は教え込まれるのに、戦争での加害はやらない。ドイツと大違いでそこが嫌だと。
私もこれと同じことを中国語圏の方と会話していて言われたことがあります。
「でも日本人の戦争って、原爆でしょ?」
その人は『火垂るの墓』は好きです。日本人が戦争の被害を語ることに対して、文句はないのです。戦争の被害“だけ”を語ることに不満があるのです。
そして再生産される被害者意識
この投稿に対し、こんな趣旨の引用がありました。
「でも戦争の加害を言い出すと、隣の国が嘘をを植え付けて、金を取ろうと言い出すでしょ」
これも無茶苦茶なんですよね。
加害したのは日本なのに、かえってそのことを蒸し返されるから「被害」を受けているという認識。
前置きが長くなりましたが、これは『ゴールデンカムイ』にも関係あるんじゃないかと思いますよ。
画竜点睛を欠くラストの一因
これについてはもう考えるのもかったるいのですが。アイヌを差別した和人だけじゃないという認識の背後にだって、どうしてもこの加害意識の抜け落ちがあると思えるんですね。
そりゃ、アイヌを滅びゆく民族のように描かれてばかりでしんどいという当事者の声はあります。私も知っています。でもだからといって、それを和人の加害性を薄めるアリバイにしてはいけないでしょう。
個人単位でアイヌを差別した人ばかりでないというのもわかる。じゃあ個人と政府のやらかしたことを切り分ければいいんですよ。
※ちなみに先の大戦についてもこの考えはありますからね。日本の民衆は悪い軍部と政府に騙され洗脳されていたという理論での免罪も散々されています。これが初耳なら、それは受け手の認識不足ですので、つきあう義理も暇もこちらにはない。
どうにもこのへんが甘いから、本誌掲載の白石がラストで植民地支配もどきをやらかしたりするのではないかと思いますし。
杉元のような善良な和人がいるけれども、政府はアイヌの「土人」扱いをやめないという問題提起もできたと思うし。
アイヌへの加害認識を薄めたい、そういう忖度があるんじゃないかと思います。
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