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『虎に翼』第40回 一生懸命頑張るトラちゃんが見たい

 昭和19年(1944年)、寅子たちは登戸にある直言工場の社員寮に住んでいます。そこを訪れたのは後輩の小泉でした。
 なんでも女子部は閉鎖されるとのこと。瞬きをして動揺しつつ聞く寅子。高等試験は受けるのだろうと促すと、今年は高等試験そのものがないとのこと。娯楽やスポーツといったイベントからなくなり、ついにここまできました。小泉は先輩のあとに続けないことを詫びつつ、高等試験再開後また挑戦すると決意を語るのでした。
 寅子が十年年以上かけて切り拓いた女性法曹の道は、かくして閉ざされたのでした。道から外れたと思ったら、道ごと崩壊したのです。
 くすんで色のない世界の中、心に蓋をして忘れ、家族とともにこの戦争を乗り切るだけだと誓うしかない人々でした。「はて?」という余裕すらもうありません。
 空襲の前に意味があるとも思えないバケツリレー訓練をする人々。これは関東大震災のおり、住民が炎症を防いだ稀有な事例が元となりました。『らんまん』で描かれていたあの震災です。

色の薄い赤紙が、三十路の男にまで届く

 そんな寅子の安らげるひとときは、優三と優未と過ごす時間でした。
 そう思っていた矢先に、優三に赤紙が届きました。色がかなり薄くなった召集令状です。優三のような兵士としては高年齢、子がいる父、胃弱の男まで徴兵されるあたりが、戦争末期そのものです。直言は出征前の希望を尋ねます。優三はトラちゃんと少しだけおでかけしたいと言います。直言はそんなことでいいのかと戸惑い、はるは理解を示します。直道出征時のように、ささやかなご馳走を作ることすらもうできません。花江は優未を預かるといいます。
 寅子はこの日が来るとわかっていて、何をしてきたのか、何がしてあげられるのかと悩んでいます。

 二人はあの思い出の河原を歩いています。登戸に思い出の場所があるというのが重要です。前の家のそばならこうはなりません。
 優三はかぼちゃまんじゅうを取り出します。ここで寅子が土下座して、謝りだします。自分なんかと結婚させたこと。高等試験を諦めずに続けろと説得しなかったこと。そこまで詫びると優三は深呼吸を促します。
 ここが寅子の性格だと思います。寅子としては自分が進路に迷った時、確たる論拠でメリットとデメリットを呈示された方がよいのかもしれない。よねも「頼りにしろ」でなく、具体的に子どもを預かってもよいと言えばよかったのかも。寅子は自分がして欲しいことを最愛の相手にできなかったことが悔しいから、大仰な土下座までしているのでしょう。

トラちゃんのできること

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