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『ちむどんどん』第77回 愛のない家庭のはて

 和彦と結婚するために、将来の義母である重子を訪ねる暢子でしたが……。

差別と個人情報の扱いがゆるかった昭和

 今回はギョッとするような話ではあった。一週間かけて、比嘉家のことを重子が調べ尽くしていたから。興信所か、探偵でも使って調べたのでしょう。
 今ほど個人情報の取り扱いが厳密でもないし、ご近所さんに聞いて回ればある程度はわかる。
 そして経済やら学歴やら調べてくる。そして嫌味たらしく、釣り合わないと言い募る。いやあ、実にいやらしい。

 これは本土と沖縄ということもある。都市部と地方。日本はなんでかしらんけど都道府県別に最低賃金すら違いがある。戦争もあって、沖縄は全国的にも経済が苦しい。そこを踏まえると、実は差別の温床だということがわかるわけでうよ。
 イギリスのフィクションなんか鑑賞していて、階級差別が厳しいと思った。日本だって差別はあちこちにある。ただ、わかりにくくしているだけで。本作はそこをあえて踏み込んでできた。

 そういう差別構造があるのに、比嘉家に対して過剰な自己責任論を振りかざす粘着性アンチがどっさり沸いている本作。無自覚に差別をする日本人像がハッシュタグで観察できて、なかなか興味深いものはありました。

愛のない家庭と人生は

 貧しくても愛がある!――こういうのは現実逃避に過ぎないので過剰に美化したくはないけれども。金とステータスはあってもあたたかい愛がない、そんな青柳家はただただ虚しいと思えるからお見事。
 重子は何もない女なんですよね。ステータスだけで人をみる。それしかない。からっぽ。暢子がおいしいものを作っても、味わうだけの感受性があるのかな。心が乾き切っていますもんね。

 一方で比嘉家は、良子は愛をばねに踏み出す。歌子もシャイだから人前では弾けないけれども、そこを克服するために踏み出す。動機は姉の結婚式のため。
 賢秀は……忘れましょう。

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