『おかえりモネ』第32回 資格を取って自信を得て、迷って
2015年8月、普通に暑い。そうこぼしつつ、菅波がやってきます。初免許、国家資格を取得しました。国家資格にはしゃぐモネ。
「よかった」
そう微笑む菅波です。普通免許でも、取ったことそのものがよい。それを悟る菅波の目です。
来年も、蓮の写真を撮ろう
田中は蓮の写真を撮りに行けるようになったって。でも、年に二回の気象予報士試験当日でもありました。モネは一緒にいけないことを悔しがっています。
「来年一緒に行こう! 冗談きついって」
「行きますよ、来年」
田中とモネはそう言い合います。前向きになっているとわかる場面です。蓮の写真は、かつては田中にとって死の象徴だった。それが生の象徴になったのです。早く帰らないと先生が怒るとモネはそそくさと、帰ります。先生はうるさいって。まあ、確かにうるさいですね。
モネは森林組合の仕事が忙しくて、前回から半年間、勉強進んでいません。それでも二度目を受験し、暗い顔で帰ってきます。また受ければいいとサヤカは励ますしかない。そんなサヤカは苗木の根っこを見ていました。モネは苗木はえらいと言います。育つもんね。
欲しいのは資格? それとも自信? 充実?
菅波はそんなモネの気持ちを理解しています。冷たいし、無愛想なので突き放しているようで、そう単純なことでもない。仕事や生活が充実すると資格試験の情熱は薄れる。そう分析しています。
モネは仕事が楽しくなりました。車の免許を取って、とってやることも増えたのです。んだな、田舎で免許は必須だべした。資格に頼らずとも自信を持ってできることが見つかった。どうせ昨日の試験の結果はさんざんだろうし。そう思い始めたモネ。
菅波は理解する。気象予報士試験をとってもビジョン明確じゃない。医者は直結するけれども。そしてこうだ。
「やめますか?」
やるなら、今日から始める。そこまでのモチベーションがあるかどうか考えるよう促します。
菅波……勉強やめてモネとの時間が減っても、仕方ないと諦められそうではある。むしろ恋愛が動機を認めないとみた。結婚したとしても、離婚するかもしれないし。死に別れる可能性もありますよね。そうなったときにモネが困らないよう資格を取れ! そこまで言いそう。真面目だからさ。
気象を知ってできること
運命の相手は、揺らいでいると突然現れたりする――そう語られて、朝岡が出てくるあたりが残酷っちゃそう。菅波は? まあ、いいんです。
ここで東英大学の中本教授が出てきます。気象年輪学が専門で、日本の気候を研究しています。樹齢300年のヒバ伐採を聞きつけ、10センチでも、5センチでも分けていただきたいと言い出しました。天明の大飢饉と天保の大飢饉までわかるってさ。
もしも数百年単位で気候が変動するなら、300年後も予測できるかもしれない。そう言い出した中本の話に佐々木の目も輝いて、名刺を渡しています。
これは仙台藩領という舞台設定も生きていると思える。伊達政宗はじめ、奥羽の大名はずっと気候と戦っていた。全国的にそうっちゃそうですけどね。でも、やっぱり影響を受けやすいもの。伊達の殿様はそれこそ、北でもできる稲作をがんばって、屯田兵になってからもそうしてきただよ。
ここで野坂と内田という二人も出てきます。彼らは朝岡のもとで働いています。この二人と、モネはフィールドワークへ。
野坂はレーザースキャナで山の水分量を計測中。防災が彼女の専門なんだとか。
内田は花粉の測定だ。なんでも花粉症が酷いそうです。ブタクサやカナムグラが生えているとモネがいうと、つらそうにしています。地獄と嘆きつつ、測定する内田です。
野坂は木の保水力を語る。特に針葉樹はスポンジみたいに吸い込む。最近は水害が多いと語ります。モネはサヤカの「山は自然のダム」という言葉を思い出しています。宮城のロケがいいですね。『おちょやん』の大阪や京都のことを思い出して欲しい。関西の寺社仏閣には風情があった。それとはちがう、東北の自然美がそこにはある。どちらもよくて、東西で美しさを競っているようで、朝から眼福です。
気象ビジネスという道
森林組合に戻ると、内田は優秀だと野坂が明かします。なんでも一発合格! 風を読むのもうまいとか。ここで朝岡がくると、野坂がデータを見せます。しかし朝岡は局所的だという。もっと地形をいろいろ考えて取ってこいと。防災のためとはいえ、税収の少ない市町村では確実に効果が出ないと動かない。そう言います。
そしてここで朝岡が「リードタイム」について語る。普通は短い方がよい、注文から納品までの時間です。森林組合もそうかと聞かれ、モネはそうだと返します。
それが気象ビジネスはちがう。
水が危険水位を越える時間。花粉が到達する時間。備えるための時間を生み出す。そのことが安全、快適、利益を生み出す。それを外さなければ、いずれ誰かに直結する。がんばってください! そう励まします。
西島秀俊さんの個性と長所を掴んでますね。理屈っぽいことを言ってもきつくならなくて、染み込んでくる。親しみやすいのに説得力がある。
東北繋がりで『八重の桜』のあんつぁまこと山本覚馬を思い出す。あんつぁまも理想主義者で理屈っぽいのだけれど、包み込むようなあたたかみがあるから、そこが魅力的でしたね。
ちなみに長谷川博己さんは、理詰めで語るとちょっと険が出やすい。そこも彼の個性で、『八重の桜』でそこが見出され、『麒麟がくる』で極めた感があった。
そういう役者の個性の見極めをしている気配がある。このドラマから大河抜擢者が出ることは、もはや確定しているとみた。
モネは朝岡の「株式会社 ウェザーエキスパーツ」を検索してサイトを見ています。
気象であなたの暮らしとビジネスを守ります――
そんなコピーを見つめるモネでした。
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