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『ちむどんどん』第95回 ふたりの原点回帰

 賢秀のせいで200万円を失った暢子。賢秀は逮捕か?

武蔵と又八

 三郎と田良島の活躍もあり、賢秀は逮捕を免れたものの、暢子の200万円は戻ってこなくなりました。
 でも……前科がつかないだけでよかったのかも。

 そしてこの二人は、吉川英治『宮本武蔵』の武蔵と又八みたいなものに思えてきました。スタートラインは同じで目指すところもあるのに、片方は邁進、もう片方は堕落していく。
 それを男女のきょうだいでやるのがおもしろい。条件面ではほぼ同じ。良子や歌子ほどのちがいはない。性格的にも似ている面はある。
 
 そしてプロットとしても似ていて、今週が原点回帰です。暢子は沖縄そばの味。そして賢秀は養豚へ。両者の転機が重なり合うことは必然ともいえます。
 あとは和彦。和彦には、フリーランスで沖縄を追い求めていく原点があります。愛ではなく暢子と結婚することで、、その原点へ近づいています。

200万円をポンと出せる経済

 実は200万円は伏線が張ってある。石川家の海外旅行もそうだし、和彦が田良島に頼んでいた融資もあった。
 大事なのは、この時代ってがんばって貯金すれば、石川家のような中流でもそのくらい出せることかも。石川家は当時まだ珍しい共働きなので、経済的にはやや上なのでしょう。
 
 でも、令和現在はそうじゃない。
 そんだけ日本は貧しくなった。そういうことを朝ドラで流されたら困る誰かがいるから、あやしい圧力がSNSでかかるんじゃないですかね。なーんてさ。

 で、ここの石川夫妻の語り口が完全に親戚の人なんだな。まだ若い川口春奈さんと山田裕貴さんがすごい。この二人の昭和ぽさはすごいと思いますよ。

女がワインを味わい、男が給仕する

 羽原大介さんの朝ドラ『マッサン』では、エリーがウイスキーを飲めない設定でした。わからないけど、愛ゆえに夫を応援していたと。
 これはひっかかった。ウイスキーを飲むなんてヒロインらしくないってこと? ウイスキーはことさら男の飲み物扱いされるのですが、歴史的にもそれはおかしいんですね。スコットランドやアイルランドでは一般家庭のおばあさんやおばちゃんが副業でこっそりウイスキーを密造していた歴史がありまして。醸造所なんかにも女性は関わっているけど、それを見えないことにされていただけです。
 もろにジェンダーバイアス。それに乗っかってたんですね。無意識かもしれないけど。無意識の差別、マイクロアグレッションを感じてちょっと辛いドラマでした。

 それを本作は修正している。暢子と房子がワインを飲む場面はその象徴です。

 女性二人がワインを美味しそうに飲んでいて、男性である二ツ橋がそこへ料理を運んでくる。そして女性二人は、ベクレルテストを通る、男以外の話をしている。知的な会話である。

 なかなかすごいことだ。

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