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『おちょやん』107 みんなのお母ちゃんになる

 ラジオドラマ『お父さんはお人好し』収録開始! 千代は大家族のお母ちゃん役です。NHKと書かれた時計を見つめ、全員が緊張しております。

ラジオドラマ草創期回顧

 ラジオドラマ草創期を再現する。しかもNHKで。資料はぎょうさん残っとるやろし、そら有利やろけど。でも、今まではそんなことしておもろいんか、というツッコミは出てきたと思うんですよ。いや、おもろいで! 大変だったと再現する流れやね。
 NHK東京の『なつぞら』でもジャパニメーションでそこに挑みましたが、何事も草創期は興味深い。裏事情を再現することで見えてくることはありまして。

 例えば衣装ひとつとっても、子役が半ズボン。中学生は学ランに丸坊主に眼鏡。こういう風情って、ちょっと前だとおっちゃんおばちゃんのノスタルジーになっとった。でも、今はもう演じる側も作り手も、実物を見たことがない層が多いわけでして。貴重ですね。
 収録に挑む千代の背後には、木琴の前に立つBGM担当者の姿がチラッと見えます。はえー、大変やったんやな!

 岡福では、ラジオをデンと卓に置いてみんなが熱心に聞き入っています。宗助なんてはしゃいで立ち上がってしまう。客がざわつくと、みつえがガッと立ち上がって怒鳴る。
「ああもうやまかし! 聞こえへんやんか!」
 みつえさん、すっかりええ大阪のおばちゃんになって。割烹着も着物も似合っとるし、バネが入ったようにガッと立ち上がるのがええわ。着物って裾はだけんように動くのは、タイトスカート履いとるようなもんやがな。それでこの動き。ええなぁ、みつえが立ち上がるところみとると元気出るわ。
 
 ここでNHKアナウンサー・林田伸太郎が番組の説明をします。昭和のNHKアナウンサー発声をNHKが再現すると。
 まだ戦争の傷跡が残る大阪に、藤森商店があって、子どもがなんと1ダースいるという話。新喜劇の面々もラジオを聴いています。感極まって泣いてしまう香里。松本妃代さんがいつもよい顔で。女性が一番輝くとか綺麗になるのって、恋をした時とかなんとか言いますけど。友情を発揮するときもそうですよね。香里を見ているとそう思えます。恋でも、友情でも、人は人を思う時が綺麗な顔になるんですね。

 栗子と春子も、興味津々でラジオの前にいます。千代の声が聞こえたとたん、春子の顔に喜びが広がって、栗子が抱きしめます。
 千代の演技が人を幸せにする。栗子はそのことをよく知っているのです。

生放送、生演奏はたいへんだ

 そしてスタジオへ。
 超絶技巧やな。そう感動してしまう。演じる役者だけでなくて、効果音係が合図を見て、戸の開け閉めをしたり、小道具振ったり、足音を演じたり。これを全部録音なしでやっとるわけですよ。
 主題歌もその場で演奏する。楽器なんて当時のもの持ってきたんですかね。ほんまにすごいと思う。すごいだけでなく、うち以外どこがやるんか、そういう気合を感じます。
 出番のたびに役者がマイクの前に来て、セリフをいうとか。大変ですな。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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