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「下系」プロレス英語 ~実例集~

こんにちは。プロレス翻訳家のキッツです。

「斜め」上の英語力を目指す「英語xプロレス」のエッセイ。
今回はプロレス英語には欠かせない「下(しも)系」英語についてご紹介します。

※以下、R18的な言葉が出てきますので、未成年者や汚い言葉を見たくない方はご注意ください。

1. はじめに

日本語では、相手を罵る時などの定番ワードは「クソ」ですね。「クソ野郎」や「クソな気分だ」などという風に使います。
英語では「shit」という言葉が「クソ」に当たります。とても気軽に使われる言葉で、「クソ」の他にも「チクショウ」とか「しまった」などと訳すこともあります。

プロレスラーも「shit」は良く使いますが、そんな生易しいワードでは表現しきれないのがプロレスラーコメントの世界です。

「クソ」よりも上位(下位?)の激しい表現となると何を思い浮かべますか?
日本語だと「死ね」あたりが出てくるのではないでしょうか? 死ぬとは、生物の根源に関わる非常に重たい言葉です。言われた方はグサッときて、面白みはありません。
プロレス界において「死ね」とは、なんて野暮な言い方でしょうか。

もちろんキャラやシチュエーションによっては「死ね」でもOKなのですが、そんな直接的な言葉を使わずとも、英語にはたくさんの上級汚いワードがたくさんあるのです。

今回はそんな言葉の数々の中から「お尻」エリアにまつわるワードをいくつか紹介していきましょう。

2. ケツ系

ケツ(尻)」は英語で「ass」です。「ass」は「お尻の穴」や「性交」も意味します。
みなさんも聞いたことがあるかもしれない「asshole」は、「ケツ穴」転じて「バカ」と訳されたりします。

3.  タマ系

タマ(睾丸)」は「balls」や「nuts」「bollocks」などです。睾丸をオンライン辞書で引くと約25個もの言い回しが出てきます。
こんなにもバラエティ豊かなのかと驚くばかりですね。まあ、それだけ男にとってタマは大事ということでしょうか。

ちなみに「bollocks」は、先日G1で見事優勝したザック・セイバーJr.がよく使います。意味は「くだらないこと、ばかげたこと」で、「こんちくしょう」や「くだらん」などと訳します。

4.女性系

女性の陰部を指して「pussy」と言います。動物の「猫」という意味や「(男が)女みたいな」という意味もあり、弱虫や軟弱という意図も入りそうな言葉です。
また「性交」そのものや「性交相手の女性」を表すときにも使います。

bitch」も良く出るワードです。
最近は日本語でも「ビッチ」は使われるようになりましね。
「雌犬・雌オオカミ・雌キツネ」というのが本来の意味ですが、「嫌な者・こと」についても「bitch」と言います。
「bitch」というと「あばずれ」や「悪女」など、女性を指すことが多い印象ですが、男性についても「嫌な野郎」「ヘタレ」という風に使えます。
実際レスラーは、対戦相手(男性)を「bitch」と呼ぶことも多いです。

5.実例

ではいよいよ、これらの汚い言葉をふんだんに用いたコメントの実例をみていくとしましょう。

ケース1)

英文:Fuck his little goth pussy ass, little bitch!
翻訳例1:ちっぽけな汚ねぇケツの穴をヤッてやろうか!? このチビのクソ野郎が!
翻訳例2:ファック! このクソ野郎が!

翻訳例の1はかなり具体的な訳です。実際のコメント訳では、自分の場合はここまで詳細に訳しません。日本語にしてしまうと生々しすぎて下品ですね。また翻訳は公式に掲載されるものなので、あまり詳細な言葉は出さないようにしています。
よって例文の2くらいのノリで訳しています。

ちなみにこれは、成田蓮に対し、ELPが言っていたコメントです。

ケース2)

英分:I will spade your asses, and I will neuter your asses, and well, WAR DOGS will be done!
翻訳例:おまえらのケツを刈って、タマを取って、WAR DOGSは終わりだ! 

これは訳すのがとても難しかったフレーズです。
「spade」は「鋤(すき)で掘る」という意味です。なので「ケツを掘る」が直訳になりますが、やや直接的過ぎて面白みよりも、えっ…(ドン引き)という感じの方が少し上回ってしまうかと思いました。(視聴者は、どのレスラーがどのレスラーに対して言っているコメントかがわかるだけに)

一方、後半の「neuter」は「去勢する」という意味です。「neuter your ass」で「タマを取る」ですね。

「鋤(すき)」から「鍬(くわ)」を連想し、「ケツを刈る」としたのですが、今改めてこうしてみると、意訳しすぎだったかもしれません。

別のエッセイでも話したのですが、プロレス翻訳は時間との勝負です。じっくり考えている暇は残念ながらないので、その時のひらめきで訳したりします。
後から見直すと、「……あ~……」ということも多々あります(苦笑)。

この文を訳した時は、全体のリズム感とノリを優先してこうした翻訳にしました。
これはジェフ・コブが、WAR DOGSに向けて放ったコメントです。コブに「おまえのケツの穴を掘ってやる」なんて言われたくないですよね。(個人的感想)

ケース3)

英文:You goddamn cowards, that's all the bitch ass BULLET CLUB is!
英訳例:この臆病者め! それがおまえらヘタレのBULLET CLUBだ!

「goddamn」をちゃんと日本語に入れて「いまいましい臆病者」としても良いところですが、こういうちょいちょい挟み込まれる汚い言葉は、あえて翻訳しないパターンも多々あります。

ひとつの文章で多数の汚い言葉が入る場合はよくありますが、それを逐一翻訳していると、日本語としてはおかしなことになります。

「いまいましい臆病者、それがおまえらヘタレのケツのBULLET CLUBだ!」
と言った具合です。
やや間延びしている感じがしませんか? 
きちんと意味を伝えることも重要ですが、プロレスのノリというものも大切なポイントです。
まだまだ試行錯誤ですが、私はそのバランスが取れるよう心掛け翻訳しています。

6.まとめ

今回の「下系」英語、いかがでしたか?
英語の「下系」ワードの豊かさは凄いものがありますね。
日常会話では使うことはあまりないかと思いますが、知っていれば外国人レスラーのコメントが何倍も楽しくなる「斜め」上のプロレス英語。
ぜひ実際のバックステージコメントを見て、上述の言葉の数々が出てくるか確かめてみてくださいね!