ヒラタケ

もしも幕末の志士がクラスメイトだったら……をテーマに短編小説を書きました。幕末の志士と…

ヒラタケ

もしも幕末の志士がクラスメイトだったら……をテーマに短編小説を書きました。幕末の志士と男子高校生の躍動感を重ねて、漫画のような世界観を表現したいと考えています。2~3分で読めますので、ぜひお試しください。ご感想やご意見もいただけると嬉しいです。

最近の記事

私立徳川高校 第七話「体育祭で勝利をつかめ!」

 オレは九州の古い男子校である私立徳川高校の2年生で、上野ヒコマという。毎年5月の週末に行われる体育祭は、我が校の一大イベントだ。  今年もその日がやってきた。朝から初夏を思わせる晴天ではあったが、オレの気分はどんよりしていた。正直、運動があまり得意ではないし、団体行動もどちらかといえば苦手だ。だから、新聞部のカメラマンとして取材に徹し、自分のことは気にしないことにした。  号砲の花火が打ち上げられると、生徒たちの入場行進が始まった。オレはトラックの内側からカメラを構え、そ

    • 私立徳川高校 第六話「文化祭の主役」

       オレは九州の歴史ある男子校、私立徳川高校の2年生で、名前を上野ヒコマという。  来週の土日は我が校の文化祭だ。オレは新聞部で記者兼カメラマンをやっているので、文化祭では過去に制作した校内新聞を展示するのだが、いかんせん地味であることは否めず、来場者も多くはない。昼飯の弁当を平らげたオレは、なにかいい出し物はないか、と頭を悩ませながら男子トイレで用を足していた。すると、隣に背の高い男子が並んだ。オレはそいつの顔をチラッと見て、思わず声を上げてしまった。 「坂本! 坂本リョー

      • 私立徳川高校 第五話「御門(みかど)高校の刺客」

         オレが通学する徳川高校は、九州のとある県にある古い私立の男子校である。オレは新聞部の2年生で、名前を上野ヒコマという。新聞部の部室は校舎の3階にあるのだが、その日のオレは記事を書きあぐねて、部室の窓から空を仰いでいた。窓のすぐ下には武道場があり、その1階が柔道部、2階が剣道部の練習場だ。  剣道部の練習場からは、部員達、通称「新選組」が練習する音が聞こえてきた。 「やーーっ!」 「とぉーーーっ!」 「めーーーーーんっ!」  気合いのこもった叫び声に、ダンダンと裸足で踏み込

        • 私立徳川高校 第四話「対決!オムライス」

           オレは、九州のとある県にある私立徳川高校の2年生で、新聞部の記者兼カメラマンをやっている上野ヒコマという。うちは歴史のある男子校だが、個性の強すぎる教師や生徒たちでいっぱいで、校内新聞のネタがごろごろ転がっているのだ。  その日、オレは、4時間目の授業の終了を告げるチャイムが鳴るやいなや学生食堂に走った。走ったのには訳がある。いつもなら母親が作る弁当が昼食だが、その日は弁当の代わりにワンコインもらっていて、それで1日10食限定のオムライスを食いたかったのである。そのオムラ

        私立徳川高校 第七話「体育祭で勝利をつかめ!」

          私立徳川高校 第三話「もうひとりのカメラマン」

           オレは九州にある男子校、徳川高校の2年生で上野ヒコマという。新聞部で記者兼カメラマンをやっている。新聞部を選んだ理由は、写真に興味があったからだが、モノとしてカメラが好きだったこともある。  その日は新聞部の部室で記事も書かず、カメラをいじるのに没頭していた。部の備品として配備された一眼レフのデジタルカメラは、本体に貼ってあるシールから8年前に購入されたものとわかる。自分で買うにはなかなか高価なもので、先輩達から大切に引き継がれてきたが、最近はマウントのガタつきが少し気に

          私立徳川高校 第三話「もうひとりのカメラマン」

          私立徳川高校 第二話「俳句同好会」

           オレは九州のとある県にある徳川高校の2年生で上野という。うちの学校は、古い私立の男子校だが、教師も生徒もやたらと個性の強い人間ばかりだ。新聞部の記者兼カメラマンであるオレは、バスケ部1年生の高杉と剣道部3年生の土方が、俳句の同好会を作ったと聞き付けて、2人にインタビューすることにした。校内新聞「マンスリー徳川」の記事になりそうだし、あわよくば新聞内に俳句コーナーを設けられるかもしれない。  放課後に約束した場所である土方の教室を訪ねると、すでに高杉も来ており2人で談笑して

          私立徳川高校 第二話「俳句同好会」

          私立徳川高校

           九州のとある県に存在する私立徳川高校は、江戸時代に開かれた私塾から数えると、180年の歴史をもつ名門の男子校である。その文武両道かつ自由闊達な校風から、かつては九州各県はもとより中四国地方からも入学希望者が集まるほどの人気校であったが、自由の度が過ぎるのか、集まった生徒の個性が強すぎるのか、近年はその人気も低迷気味と聞く。  オレはこの学校の2年生で上野という。新聞部で記者兼カメラマンをやっている。カメラを持って校内をウロウロしていると面白い出来事にぶつかることも多く、そ

          私立徳川高校