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#2 北辰テストの勉強法【社会科】

お世話になります。黒猫です。

北辰テストとは?

前回の記事でも簡単に紹介しましたが、北辰テストとは埼玉県の公立中学の3年生の約9割が受験する埼玉県入試の「模擬テスト」です。

このテストは以下の3点を目的に受験される生徒が多いです。
①自分の偏差値を把握すること
②志望校の合否判定
③入試対策

しかしながら、この北辰テストは学校等の公教育の場で受験するのではなく、民間企業が主催するため受験料がかかります。(各学年・各回・5教科4,730円)また、学校での進路指導は基本的に学校内の定期テストと中学3年生の地区ごとの公的テストを活用します。

では公立中学校で北辰を用いた進路指導が行われていないのでしょうか?この疑問を解決するためには北辰テストの歴史を知る必要があります。

北辰テストの歴史

北辰テストは1952年(昭和52年)に誕生し、1970年代には埼玉県内の公立中学校での実施が広がりました。1992年(平成4年)以前までの公立中学校では授業時間内に北辰テストを実施しており、学校の先生はここで算出された偏差値を参考に進路指導を行っていました。また、私立高校の事前相談会では中学校側の先生が生徒の北辰テストの結果を持ち込み、生徒の「確約」をもらう仕組みがありました。

しかし、1992年(平成4年)の秋に、当時の埼玉県教育長であった竹内克好氏が業者テストに反対することを宣言、当時の文部大臣であった鳩山邦夫氏も同調する形で業者テストを批判しました。翌年の1993年(平成5年)2月に文科省が業者テストの結果による選抜禁止、中学校側が業者テストに関わることを厳に慎むよう通知。
これ以降公立中学校の先生は、内申点、定期テストの点数、地区ごとの公的テストの結果を参考に進路指導を行うようになりました。

このような経緯から、公教育の場で北辰テストは姿を消しました。
しかし、1993年以降も保護者及び生徒を対象とする私立高校の説明会、相談会では持参された北辰テストの結果を参考にして合格を「確約」する私立高校もあることや公立高校の志望校の合格率などの判断材料になるため、埼玉県内の中学3年生の約9割が一度は北辰テストを受験しています。

北辰テストの問題構成

次に北辰テストの問題構成を見ていきます。社会科に関しては、大きく分けると第1回~4回、第5回~8回の2つに分かれます。

01_北辰テストの解き方(H29年度)

第1回~第4回までは、地理的分野と歴史的分野、総合問題で構成されていますが、第5回以降は入試本番の形式に近づいていき、地理的分野、歴史的分野、公民的分野、総合問題となります。

ただし2020年度の北辰テストは例外的で、第5回(10/4)が例年の第3回、第6回(11/1)が例年の第4回、第7回(12/6)が例年の第6回の範囲となっています。より詳細な範囲は公式HPで確認してください。社会科に関しては、公民的分野が北辰テストの範囲となるのは第7回からとなるのでご注意ください。

試験時間に関しても、社会は40分間と本番よりも短く設定されています。ただし第8回は試験時間が50分となります。
*H29年度より、埼玉県の公立高校入試の理科・社会の試験時間が40分から50分に変更されました。

北辰テストの対策

対策方法に関しては、基本的に公立高校の入試対策をそのままやっていけばOKです。入試問題の出題傾向や対策方法は前回の記事を参考にしていただければ幸いです。

今回のメインは勉強方法に関してです。

まず社会科のイメージと聞かれれば、暗記教科という印象が強いと思います。私もそのことを否定する気はありません。

実際、問題もセンスというよりも、知っている or 知らないで正解か不正解かが決まります。つまり、勉強すればできるようになる教科ですが、勉強しなければ絶対にできない教科です。

「知っている」言葉を増やし、定着させること(=暗記)が社会科の勉強だと考えています。

この「知っている」言葉を増やすためのコツをご紹介します。

インプットとアウトプット【概要】

ここでは知識の定着の方法をインプットとアウトプットの2つに分けてご紹介します。
①インプット =「入力」すること ⇒「脳内」が変わる
②アウトプット=「出力」すること ⇒「現実」が変わる

また、このインプットとアウトプットの比率に関しては3:7が理想とされています。コロンビア大学の心理学者であるアーサー・ゲイツ博士の小3から中2までの100人を対象とした暗唱に関する実験によると、「覚える時間」に約30%の時間を費やしたグループが高得点をとったという結果が出ています。

この実験から、インプット<アウトプットに時間を割いた方が良いことが分かります。

家庭学習を多くしていても中々点数が上がらない方の原因は、インプット(教科書、参考書の読み込み)が多くなりすぎており、アウトプット(ワークや問題集による演習)が足りていない可能性があります。暗記する時間の約2倍近くの時間をかけて問題を解くことを意識してみて下さい。

勉強方法【インプット】

インプットとアウトプットの3:7の比率を確認した上で、インプットの補助になる勉強法をご紹介します。

まず、要点としては以下の3つです。
【暗記の三原則】
①「重要情報」だけに絞る
 
②情報を「整理」して覚える
③「繰り返し」を習慣化

まず①「重要情報」だけに絞るに関しては、教科書や参考書に記載されている太字部分や学校の先生が授業で繰り返している部分、抑揚をつけて話している部分にあたります。教科書に書いてある文字をすべて覚えるというよりは、必要な単語を拾っていくイメージになります。

例えば、中学1年生で習う班田収授法は「戸籍を持つ6歳以上のすべての男女に口分田を与え、死ぬと国に返す法」ですがカッコ(「」)でくくった部分を一気に覚えようとするのではなく、「6歳以上の男女」「口分田」などパーツを分けて覚えることで負担を軽減できます。また、これらの言葉は記述問題で必要なキーワードであったり、北辰テストや埼玉県入試の場合は用語の穴埋め問題としても出題されやすい部分です。

次に②情報を「整理」して覚えるについては、重要用語を自分なりにまとめることで情報を整理する方法です。これは私見になりますが、知識を棚に整理するイメージです。

例えば「征夷大将軍」という用語を整理する場合、私であれば以下のように整理します。

征夷大将軍の整理

このような整理が自分でできるようになれば、必要な時に必要な用語を自分の知識の棚から取り出すことができようになると思いますし、問題演習の際にミスも減ると思います。

最後に③「繰り返し」の習慣化は、この3つの中で一番重要な要素です。人間の脳は重要な情報は長期間維持することができますが、重要でない情報は忘れるようになっています。重要な情報と重要でない情報の違いは、その情報を何度も使うか使わないかです。

暗記した情報は短期間(2~4週間)は脳の「海馬」に保存されます。この2~4週間のうちに何度も知識を使うことで情報が「海馬」から「側頭葉」に移動し、長期記憶を可能にします。

樺沢紫苑先生の『学びを結果に変えるアウトプット大全』では2週間に3回アウトプットすることで長期記憶がされるよいうことなので参考にしてみて下さい。

中学3年生などの受験生であれば、入試問題の過去問や北辰テストなどの模擬試験を解く際に選択肢がある問題であれば、正解だけを判断するのではなく、他の選択肢がなぜ誤っているのかも確認することを癖にするだけでも変わってきます。

また、碓井孝介さんの『図解でわかる暗記のすごいコツ』では「エビングハウスの忘却曲線」が紹介されています。こちらでは、復習のタイミングが【1日後、1週間後、1か月後】と紹介されています。最初は自分の中で1日後、5日後などのルールを決めて習慣化させることを目的に始めてみてください。

参考文献:碓井孝介(2017)『図解でわかる暗記のすごいコツ』(日本実業出版社)、樺沢紫苑(2018)『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)

勉強方法【アウトプット】

先ほども述べた通り、勉強で大切なのはインプットよりもアウトプットを重視することです。そして、その比率は3:7くらいが理想という話をしました。

アウトプットに関しては、以下の4つが要点となります。
【効果的なフィードバックの4つの方法】
①短所克服と長所伸展 
②広げると深める   
③「なぜ?」を解決する
④人に教えてもらう  

まず①短所克服と長期伸展は、成長の方向性を示します。勉強する際に自分が苦手とする分野を克服するのが短所克服、一方自分の得意な分野を伸ばすのが長所伸展です。端的に言えば、基礎ができない場合は短所克服、さらに高得点を取りたい場合は長所伸展となります。

まず北辰テストや定期テストなどで自分が得意・不得意な教科・分野を把握します。基本的に受験勉強では短所克服を中心に行った方が良いです。理由としては、得意な教科・分野での点数を伸ばすよりも苦手な教科・分野で点数を伸ばした方が全体の点数(五教科の点数)が伸びやすいためです。まずは基礎的な部分をできるようにすることで成功経験を積み、自分に自信を持つことが重要です。最初からできないと決めつけず挑戦してみてください。長所伸展に関しては時間に余裕がある場合であれば有効ですが、全体の点数、偏差値は中々上がりにくいと思います。

次に②広げると深めるは、勉強の方向性を示します。自分が勉強している教科の分野の幅を広げるのか深めていくのかの選択になります。ここでも特定の分野を深めていくよりも幅を広げた方が全体的な点数も伸びます。

例えば、社会科の歴史的分野では時代が縄文から平成まであるので、まずは用語の時代分けを中心に勉強して幅を広げることで記号問題の正答率を上げ、時代分けがある程度できた後に用語の穴埋め、記述問題などの対策で深める勉強を中心にシフトするのが理想だと思います。

そして、③「なぜ?」を解決するに関しては、勉強していく中で必ず疑問が生じてきます。この疑問を持つことが大切です。疑問が出てくるということはそれまでの内容が頭の中に入っているので、後はどのように解決するかです。現代社会ではインターネットの環境も整備されてきているので、その疑問を放置せず、まずは自分で調べてみる癖をつけてみて下さい。

最後に④人に教えてもらうは、他者から見た客観的なアドバイスを自分の中に吸収することができ、自分ひとりの勉強では気づけなかった点に気づくことができる他、③の疑問を深く追求することができていれば、より具体的なアドバイスや解説がいただけると思います。

大切なのは疑問を放置せず、解決しようとすることです。

参考文献:樺沢紫苑(2018)『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)

まとめ

北辰テストは受けるべき
インプットとアウトプットの比率は3:7
③インプットは暗記の三原則を心がける
 1.「重要情報」だけに絞る ⇒太字やキーワードをチェック
 2.情報を「整理」して覚える⇒自分で情報をまとめる
 3.「繰り返し」を習慣化する⇒復習しないと忘れてしまう
④アウトプットはフィードバックの4つの方法を意識する
 1.短所克服と長所伸展 ⇒受験では短所克服を優先
 2.広げると深める   ⇒まずは広げる
 3.「なぜ?」を解決する⇒疑問を持つことが重要!
 4.人に教えてもらう  ⇒他者からのアドバイスで自分を高める

以上となります。またしても長文となってしまいましたが、少しでも受験生や保護者の方々のお役に立てればと思います!ありがとうございました!

《参考文献》 
碓井孝介(2017)『図解でわかる暗記のすごいコツ』(日本実業出版社)


樺沢紫苑(2018)『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)


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