見出し画像

島の雫

作詞:コヨーテ

「雨、降りそうだね」
肌色の砂浜でやっと見つけた
空より青いシーグラス
もらった君は雲を指差すのをやめて
ありがとうと言った
白いワンピース揺らめかせた君を
覚えている最初の夏だった

生まれた時から 丸い形のこの島
あの砂浜は無くなった 港になった
ゆらめく海面を伸ばす
アイロンみたいなフェリーが
今日はやってくる

緩やかなカーブを 自転車で下りてゆく
防波堤に腰掛け待ってた君は
白いサンダル置いて
バタ足でつま先から弾ける雫を
得意げに飛ばして見せた

あぁ 言葉が足りないよ
この景色 この気持ち
忘れたくないんだ
忘れちゃうんだ
だから この潮風を
吸い込んで 掴んで
離さない


消えていく潮風 夜の透き通る空気になる
曖昧な この季節が この時間が
いつまでも続けば良いのに

遠く離れた街に行くっていうから
君の手を引いて 海へ向かった
水平線がわからないくらい
綺麗だった
流れ星を数えている間は
見つめられた
その輝きを忘れたくなくて

あぁ 時間が足りないよ
この今が 消えぬうち
離れたくないんだ
離れちゃうんだ
だから この星空を
焼き付けて これからも
瞬いていて

この潮風 胸いっぱいに溜めて
会いに行くから 聞こえるはずもないのに
海に消えてく フェリーの跡
埠頭に寄せる波は シミになって
まだ ここに 消えないんだよ

あぁ 言葉が足りないよ
この景色 この気持ち
忘れたくないんだ
忘れちゃうんだ
だから この潮風を
吸い込んで 掴んで
離さない

あの島の水面よりも煌めく
ビルに囲まれて
僕は大人になった

手のひら傘がわりに駆け込んで
水滴払う雨宿り
首元で光る晴れた空色の海の雫
雲間の光が照らす
偶然目が合い 隣の人はほほえんで 言う
「雨、上がりそうだね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?