本の話をしよう|2022.9


セプテンバーが去っていく。
夏の疲れが出てきたのか、今月は、苛々したり、急に泣き出したりと、情緒不安定な日々の連続。本を読む気力がなくてぼーっとスマホばっかり見ている日が続いた。
九月最後の日曜日の夜、ふと思った。本を読んでいないから、感受性が乏しくなって心の余裕もなくなっているのかも?ということで、スマホを手に取る時間を本を読む時間に代えて意識的に読書しよう、という宣言をしてみた(言っておかないと行動しないのが目に見えた)。すると、びっくりするくらい本がすいすい読めた。改めて思った。言葉の力ってすごい。
前置きが長くなったけれど、ざっくりとそんな感じだった九月の本の話をしよう。



映画化されるとニュースで知って、朝井リョウさんの『少女は卒業しない』を再読した。
廃校になる高校の卒業式の一日が、七人の女子生徒の視点で描かれているのだけど、重なれば重なるほどブルーを帯びていく透明なレンズの向こうからその青春を覗いているようで、どこまでも美しかった。
各章のタイトルがまず美しい。「エンドロールが始まる」「屋上は青」「四拍子をもう一度」「夜明けの中心」…美しいのにずっと寂しさと切なさが漂っていた。思い出した。卒業って、こんな感じ。

表紙も美しい

それから、朝井リョウさんは女を生きたこともあるのか?ってくらい、空気感がリアルだった。高校生活なんてもうだいぶ前のことなのに、「わかる〜〜〜」って頷いてしまうくらいにはリアルだった。笑
余談だけど、ずっと前に「殆ど人の来ない図書室によく来ていた先生と生徒が卒業式の朝を迎える」という設定の創作をしていたのだけど、「エンドロールが始まる」を読んで書くのをやめたことを思い出した…。苦笑



「本の話をしよう|2022.8」で楽しみにしていると書いていた、青山美智子さんの『いつもの木曜日』を読んだ。元々は〜で書かれていたストーリーで、前はnoteにも残っていたのにいつのまにか読めなくなっていて落ち込んでいたので、本となってわたしの手元に現れたのはものすごく嬉しかった!
しかも!絵本とも単行本とも言えないこの感じ!かつ田中達也さんとのコラボ再び!好きすぎる!

結局『くみたて』も買っちゃったのは言うまでもなく。




同じく楽しみにしていた十二国記のガイドブックと画集、読み応えバツグンでとても満足…ガイドブックは、某番組のブックランキングでも長らく上位にランクインしていて、さすが。

裏(?)が『白銀〜』の泰麒で、思わず叫んだ。笑

中でもやっぱり『漂舶』は、主従と言うよりは悪友と呼んだほうがしっくりくる延主従とその周りのわちゃわちゃが読めて楽しかった…!『漂舶』ってタイトルからして本当に傑出した物語だと感じた。読む前にガイドブック内の年表で若干ネタバレ踏んじゃったけどネ!笑



寺地はるなさんのデビュー作、『ビオレタ』を読んだ。

長らく積んでしまっていたな……

婚約破棄された主人公・妙は、相手の反応を気にして言いたいことがあっても口を噤んでしまうところや人の言動を勝手に深読みして傷つくようなところがあって、思い当たる節がありすぎるわたし(三姉弟の真ん中っ子ってところまで同じ。笑)にはグサグサと刺さりまくった。
たぶん、妙と同じ歳の頃はもっともっと刺さってたのだろうな、痛くて痛くて読めなかったかもしれないな〜と思ったので、うん、読んだのが今で良かった。



高橋久美子さん、通称くみこんのエッセイ『一生のお願い』を途中まで読んだところで、「あっ、そういえばその前に読む本があったじゃないか!」と思い出して手に取ったのが、小説集『ぐるり』。

表紙は奈良美智さんのイラスト

舞台は何気ない日常だったりSFだったり近い未来だったり。そんな中で、出会ったりすれ違ったりを繰り返す。くみこんワールド全開の、ちいさな物語たちだった。テンポ良く読みきったので、今度こそ『一生のお願い』を読んでいこう。



最近、夜明けの直前に起きることが多くて、まだ闇に包まれている天井を見上げながら、瀬尾まいこさんの『夜明けのすべて』の帯に書かれていた「知ってる?夜明けの直前が、一番暗いって。」という台詞をおもいだしていた。
ほんとのことを言うと、新刊の頃から気になってはいて、ただ、PMSについてもパニック障害についても、どこか自分が引っ張られてしまいそうだなぁ、と思って、タイミングを見計らっていた。いっそ文庫になるまで待つかーって、気持ちだったのだけど、今急激にこの本が読みたい。さっき知ったけどこれも映画化されるようなので、たぶんもう少しで文庫になると思う。でも今読みたい。図書館では貸出中。うーーーん………
はやく文庫になってくれ〜〜



ゆるりと読書の秋、はじまりました。
というわけで、今月の本の話はここまで。

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