本の話をしよう|2022.8

今月も終盤。ここ最近の本の話をしよう。

辻村深月さんの『凍りのくじら』を、ようやく読了した。
実はこの本、おおよそ二年前から手元にあった。好きなバンドがやっていたラジオで、メンバーの一人が最近読んだと話していたのをきっかけに購入した。各章のタイトルはドラえもんの道具であり、物語の要所各所にもドラえもんのストーリーが垣間見える。辻村さんのドラえもん愛がひしひしと感じられる物語だ。

なぜ今になってようやく読み終えたのか。簡潔にいうと、登場人物のうちの一人が、生理的に無理すぎたからである。

誰とでもそつなく接する一方で、自分を「少し・不在」と感じている主人公の理帆子。彼女のその性格ゆえ、前半は周囲とのダル絡みや元恋人とのだらだらとした関係が続き、なかなか読み進めることができず……これまでも読んでは挫折をくり返し、今回で三度目の正直。しんどさに耐えて耐えて、ようやく読了。
物語の大半が薄闇に包まれているような重さがあって、読み進めるほどこちらも息苦しさを感じる展開。別の作品にも登場していたので主人公のことは知っていたけれど、それでいてもなお、彼女の言動には混乱やら呆れるやら…後半の怒涛の展開にハラハラしながらも、「や、でも自分で蒔いた種だよな…」とどこか冷静に考えてしまっていた。
とはいえ、痛みや恋や悲しみを経験する前に本から教わり、現実感が薄いと感じていた理帆子がフィクションではない痛みに気づいたこと、そして光あるラストには「は〜〜〜、読んで良かった」と思わず口に出して言っていた。あんなに読めなかったのに、この先きっと何度も読み返すだろうな、と思ってしまうくらいの読後感。久しぶりの感覚。

ちなみに、無理だったのは理帆子の元恋人。見た目はいいにしても性格が幼稚で、言い訳ばかりでどうしようもないといった感じで……いや、こんなにオブラートに包む必要はないのかもしれない。とにかく、とんだ胸糞野郎で。これまで読んできた本にも苦手だったり嫌いになってしまった登場人物はいたけれど、こいつは堂々の一位に躍り出た。笑

チャットモンチーのドラムを叩いていた高橋久美子さん、通称くみこんの最新エッセイ『一生のお願い』が気になっていた。
帯に「文筆活動10年」と書かれていて、ええ〜もうそんな長い期間になるのか…感慨深いわあ…と思いつつ、積読が増え続けている現状をふまえて購入には至っていなかった。

つい先日、二週間ほど実家に帰省し、ふたたび自分の住まいに戻ってきたら、リビングのローテーブルの上に、某通販サイトの包みがひとつ。

わたし「あれ、何か本買ったの〜?」
旦那さん「ああ、くみこんの本。」
わたし「ファッ!??」

なんとその中には、『一生のお願い』が!
なんたる偶然!あっぶねー、被るとこだった!
という小さな奇跡が起こった。(なので、最初の文章は「気になっている」ではなく「気になっていた」。細かいけれど。)
旦那さんも読んでいる最中なので、栞の位置をずらさぬよう気をつけなければ…。



いつものことではあるが、あい変わらず欲しい本、気になる本がわんさかある。中でも俄然楽しみなのは、十二国記関連書籍と青山美智子さんの新作だ。

世の中がこんなふうになってから前よりも積極的に本を読むようになったのだけど、まあ、見事なまでに『十二国記シリーズ』にハマった。最初は「うひょ〜、15冊もあるんか。続けて読めるかな」なんて思っていたのに気がつけば血眼になりながら『白銀の墟 玄の月』の最終巻を読んでいたのであった…そんなわけでガイドブックも画集もとても楽しみ。

青山さんの新作は、ファンになったきっかけでもある『木曜日にはココアを』のスピンオフ。ミニチュアアーティストの田中達也さんの装飾もとても好きなので、絵本のような作りだという新作がとても楽しみ。こうなると、田中達也さんの絵本『くみたて』も欲しいなぁ……

今月は一冊と半分くらいしか読めなかったけれど、こんな感じで月ごとに本の話をしていきたい。つまるところ、あ〜〜〜、はやく本屋さんに行きたい。ただそれだけの、どうってことのない話を。

この記事が参加している募集