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近況と本の話

6月が終わる。つまり、2023年も半年が過ぎた、ということになる。

なんて、なんて一瞬のことだったのだろう。季節は冬から春へ、そして夏へと移り変わっていったのに、わたしときたら何も変われていない。公募に挑戦してみよう、と意気込んでいたのに、結局カタチにできなかった。noteだって。書き続けたい、と思っていた気持ちは一体何処へ行ってしまっていたのだろうか。

言い訳してしまえばいろいろ出てくる。子が保育園デビューとともに洗礼を受けまくっているとか、自分の体調もあまり良いとは言えないとかとか……。
とはいえ、嘆くことはいつでも誰にでもできる。何気なく過ぎていく自分の日々に意味をもたらしたい、そう思うのなら、また一から頑張るしかない。悲観してばかりなのも虚しいだけだ。

冒頭から自問自答かつ長めの反省文、お目汚し失礼いたしました。
気を取り直して、すっかりご無沙汰になっていた本の話をしよう。2023年の折返しなので、今回は上半期の読書の話でも。


これまでは冊数を気にしていなかったのだけど、今年は何冊読めたか把握するためにきっちり記録をしてみた。2023年1月〜6月に読んだ本は、全部で32冊!
お、月5冊は読みたいと思っていたから、ギリギリだけど達成できたのではないだろうか!(自分で自分をアゲていくスタイル)
作家別では、寺地はるなさん、千早茜さん、辻村深月さんの本が他より多め。見事に女性作家さんばかりだな……。笑

ここからは、中でも特に良かった3冊について、もう少し詳しく話そう。いや、話をさせてください。

1冊目 水を縫う / 寺地はるな

5冊読了、1冊読み途中と、この上半期で最もたくさん読んだ作家さん。「わたしの良い子」も「川のほとりに立つ者は」も「カレーの時間」も良かったけれど、ダントツで刺さったのが「水を縫う」だった。

最近文庫化したのだけど、まだ購入できていない……

刺繍や手芸が好きというだけで周囲から浮いている主人公の清澄は、かわいいものや華やかなものが苦手な姉・水青のためにウェディングドレスを手作りしようとするが……というストーリー。
視点が清澄から水青、母親、祖母、父親と共に暮らす黒田へと移り変わるのだけど、それぞれが抱える過去や思いを知ったらもう、全員に共感してしまった。

この本を読んで、家族のこと、個性のことをたくさん考えた。少しずつ変わりつつはあるのだろうけれど、それでもいまだに「男だから」「女だから」「年齢」「普通」「当たり前」などという固定概念に縛られ、翻弄されることの方が多い。わたしにも身に覚えがある。「女の子なのに青を選ぶの?」「そんなよくわからない音楽を聴いて楽しいの?普通に流行りの音楽を聴けばいいのに」と何かしら指摘されることが多かった、主に、母親に。
とはいえ同じく母になった今は、その気持ちもわかる。きっと主観が大半だけれど、「周囲に馴染むように」という思いやりの気持ちが隠れていたのだろうな、と思うようになった。きっと、本人も気がつかないくらいの小ささだったんだろうけど。(でなきゃもうちょい言葉選ぶよね、と思う。笑)

寺地さんの作品を読むと、わたしはわたしのままで良いんだ、と、肯定してもらえるようで、心がふっと軽くなる。誰が何を好きだとしても、それを「すてきだね」と等しく受け入れるような、寛大な世の中になっていって欲しいし、まずは自分がそうなりたい、と強く思った。

2冊目 さんかく / 千早茜

千早さんの作品も上半期は4冊読了。「透明な夜の香り」で美しい情景描写や心理表現に引き込まれて、一気にファンになった作家さん。その中でも「好き!」の気持ちが溢れたのが、「さんかく」。

装丁がかわいい……

古い京町家に暮らす高村と、食の趣味が合う、という理由でルームシェアをはじめた伊東。そしてその恋人・華の、三角関係未満の物語。
浮気とも言えない歪な関係性ゆえの複雑さや登場人物たちの心境は読んでいて苦しくなったりモヤモヤしたけれど、美味しそうな食事とゆっくり流れていく時間の描写も相まって、うんざりするような嫌な感じではなかった。
特に、ルームシェアのことをいつまでも話せない、ばれそうになっても嘘で固めようとする伊東には何度も「うーん……」って思ってしまったけれど、そのずるさや不器用が人間臭くてどこか憎めなかった。

『人間って、自分に都合が悪いものを変って言うんだよ』

欲しいものに手を伸ばすより、手の中にあるものをなぞるようになったのはいつからだろう。

(本文より)

どの台詞も文節も、刺さり過ぎて思わず悶えたり、あああ……って目から鱗が落ちたような気持ちに。自分にもずるさや甘えがしっかりあるんだな、と突きつけられてハッとなった。
自分の手元に置いておきたい本。文庫化しないかな……

3冊目 小説家の姉と / 小路幸也

大袈裟に言うならば、奇跡の再会。
10年くらい前に買った雑誌で連載されていた小説で、定期購読していたわけではないので、買ったタイミングでしか読んでいなかったのだけど、雰囲気が良いなぁ、好きだなぁと思っていたらいつのまにか終わってしまっていた。その作品と、図書館で再会!ページを捲った瞬間から、一気に思い出が蘇ってきた。

嬉しくて、『汚れあり』とか気にせず手に取ったよね!

タイトル通り、小説家の姉を持つ主人公のささやかな日常が描かれた物語。突然「一緒に住んで欲しい」と頼まれ同居を始めるが、どこか嘘をついていると感じていた……というストーリー展開。主人公と姉、幼馴染と彼女、そして家族という、登場人物も至ってシンプル(ときどき編集者やらご近所さんも出てくるけど)でわかりやすい。

いくつかの出来事は起こるものの、劇的な展開や大騒動は起こらない。でもこの「何気ない」日々の描写って実はとても難しいのだろうな、とも思う。物語がスッと入り込んでくるこの感じ、非常に好きだ。
これも手元に置いておきたい……(そればっかり)


……というわけで、近況と反省と本の話でした。
明日から、書くことも読むことももう少し頑張りたい下半期です。自分を奮い立たせよう……