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【創作文】日常早朝39

(631字)

【39.0】

谷とも山とも言えない場所から浮かび上がる。ぼやんぼやん。

ただの日常。

僕は昨日買ってきた納豆パックを一つ手に取り、蓋を開け、そこからふわんと浮いてくる細い糸を何も考えずに眺めつつ、箸を持つ手を規則的に動かした。

そういえば今日は熱があったんだっけ。

ところどころパーツがない生物が複数名そこに存在していて、「途中にしていないで早く全部を描け」と口々に言われる。

「いや、途中じゃない。僕的には君らはそれで完成している。今はとにかく納豆を食べるよ」

僕は他所様よそさま用の美しい表情を微塵も作らずにそう答え、納豆をかき混ぜる手を止めた。信頼している相手にしか向けない顔だから怒らないでほしいな。

「君らの完成形の決裁権は君らにしかないんだから僕が手を加えるわけにはいかないんだよ。だから僕の担当箇所はもう完成。終わり」

返事なし。独り言の烙印。
それは意思が通じた証拠。

……ということにする。

納豆を乗せるものを白米、玄米、パン、どれにしようか迷う。

そのまま単体で食べる?

単体、単体、単体……

ん? 納豆がもう一つ見える。

そっか、今は熱があったんだ。

「ねえ、僕はしばらく眠るから、そっちで完成形会議を繰り広げてほしい。出来ればお静かに」

シーン。

あ。静かになった。

今日もいい日だ。高熱で色々とぼやけて分からない分、きっと曖昧な美しい日になる。

【38.5】

数値は下がったけど、まだ寒い。

納豆はやっぱり一個だった。また独り言を呟く。

「やっぱり納豆には白米だよ」


とても嬉しいです。ありがとうございます!!