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『介護施設と理念の浸透』 ~介護リーダーがあなたの施設を辞めていく【本当の理由】とは?②~


介護の「定着・採用・育成」をテーマに、

「職員が辞めない、採用に困らない施設づくり」
をお手伝いしています、

アクア社会保険労務士法人(アクア・ブレイン)の後藤と申します。

前回に続き、介護リーダーが職場に抱いているホンネの不満を取り上げ、
解説してみたいと思います。

前回同様、某ユニットリーダーさん(Tさん/女性介護福祉士)からいただいたご意見から抜粋してご紹介しますね。

まず、前回のおさらいから。


1.前回のおさらい

前回紹介した介護リーダーが抱える不満とは、

『ユニットによってケアの仕方がバラバラ。』
『職場で決めたルールが守られていない。』


というものでした。


そして、これは、同僚や部下への不満ではなく、
厳しくチェックをしたり、新たなルールを根付かせる努力を怠る

「上司や上層部」への不満である、ということも書きました。

ひどい施設になりますと、
主任中心の会議で決めた新たなルールを、
主任自身が面倒になって勝手に元に戻してしまう施設もあるそうです(実話)。

確かに、新しいルールや対応を習慣化するのは
莫大なエネルギーが必要です。

業務もギクシャクしますし、面倒なこと極まりない。

新たなルールを一定期間実施して、
その結果を見てさらに改善するなら良いのですが、実践の途中でせっかく決めたルールを勝手に元に戻してしまったら意味がありません。

「一体全体、あの会議はなんだったのか?
なんのために会議で決めたのか?」
ってなりますよね?

このような不満って、介護士さんから結構良く聞かれますし、
根強い不満だと思います。

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さて、前回のおさらいはこれくらいにして、

介護リーダーが抱える不満の2つ目はなんでしょうか?

これです。


2.「組織の方向性が、全く伝わってこない」「理念があいまい」


介護リーダーの不満その2は、

「施設や法人がどこに向かおうとしているのか?」

「この施設・法人をどんな風にしていきたいのか?」

などが、上層部から全然伝わってこない、


というものです。

つまり、
いわゆる「ミッション」とか「ビジョン」とか「バリュー」(以下、MVV)

組織の存在意義、組織の目的、目指すべき目標(以下、理念等)

などと言ったものが、

上層部から現場にほとんど伝わってこない、ということです。

実はこの不満、
介護士さんの多くはハッキリと言語化できずにモヤモヤし 、
結果的に「上司との関係悪化」「同僚との関係の悪化」
に置き換わってしまったりしているのですが、 
非常に多くの介護リーダーが心の中で不満に感じている点だと思います。

「組織の向かう方向性があいまいでハッキリせず、
現場の私たちままで伝わってこない!」

という不満。


3.スポーツの場合は分かりやすいが…


MVVや理念等 の重要性は、
今さら私が言うべきことでもありません。

が、介護施設においてはどうしてもないがしろにされがちなものでもあります。

なぜ、ないがしろにされるのでしょうか?


スポーツ
の世界と比べてみましょう。

例えば、2019年に大旋風を巻き起こしたラグビー日本代表。

彼らの スローガン(キャッチフレーズ)は?「ONE TEAM」  

チームのミッション(目的)は、「日本ラグビーの歴史を変える」 

そして目標は、「W杯ベスト8」

そしてその目標達成のための戦略は「JAPAN WAY(日本人の強みを活かした戦い方)」

目指すべき目標は「W杯ベスト8」と明快ですし、

その上位概念のミッション(目的)も、「日本ラグビーの歴史を変える」 ですからね。非常に明確です。

前HC(監督)のエディー・ジョーンズ氏は、
就任当時、選手たちにこう言ったそうです。

「君たち日本代表は、なんのために存在するのか。世界中が、『日本人にはラグビーができない。ラグビーは無理だ。』と思っている。その価値観・観方を変えるために君たちが存在するんだ。」

なんと分かりやすく、浸透しやすくかつ一体感を持ちやすいミッション。

このミッションが選手、スタッフ達にしっかり共有されていたからこその結果であった、とも言えるのではないでしょうか。


もし、逆に、目的も目標もなく、

ただ「メンバーを集めてみました」というチームだとしたら、

いくら有能な選手たちであっても、あの世界の強豪たちに勝てるわけがない。


「俺たちはラグビーの歴史を塗り替えるんだ。

そのために毎日厳しい練習をしている。

W杯でベスト8に残れば、歴史を塗り替えることができる。

俺たちは「ONE TEAM」。

日本独自の戦略「JAPAN WAY」で必ず歴史を変えてやる!」


…これは部外者の私が適当に並び替えて作った文ですが、
でも、この文字列を読むだけで、体の奥底から力がみなぎってくるのが分かりますよね。


4.介護の場合はどうか?

確かにスポーツと介護は違います。

スポーツの場合は、「勝つ」という成果が非常に分かりやすいし、
チームで戦う、という面でMVVや理念の共有もしやすい面は確かにある。

介護の世界は、確かに成果が分かりにくい。自分たちで成果を定義しなければいけない。

しかし、そんな介護の世界であっても、

・組織の存在目的、
・施設の一員として大切にすべきこと、
・目指すべき状態、
・判断基準

などをわかりやすく、より共有しやすくすることは十分可能だと思っていますし、それを実現できた施設・法人が、やはり圧倒的な人材獲得力を発揮しているはずです。


例えば、滋賀県のエーデル土山さんの場合を考えてみます。


エーデル土山
・スローガン:「小さな安心から大きな安心へ」
・行動指針:「THE EDEL WAY」
※「THE EDEL WAY」
①全ては「利用者」のために
②職業人として自覚ある行動を
③良いシゴト、楽しく生きいきと
④社会とともに成長を
⑤介護業界を変えていこう
・戦略:「職員ファースト」


エーデル土山の廣岡施設長がホームページで語っていることを引用してみます。


”エーデルが不可欠な公器として多くのご利用者、ご家族、地域の方々から愛されるよう全力で努力していく所存です。

そして、それを支えるスタッフが気持ち良く働くことができる環境を作っていくことが今の自分にとって一番大きな仕事であると思っています。

この激変する世知辛い世の中で、一つのオアシスのような場所を作ること。その場所が大きく広がっていくよう、日々、一歩ずつ確かに歩んでまいります。”  

~エーデル土山ホームページより~

最初の一文は、どの法人もそれほど大差ないのではないかと思います。

しかし、その次の文章が違う。 

「それを支えるスタッフが気持ち良く働くことができる環境を作っていくことが今の自分にとって一番大きな仕事であると思っています。

これを『職員ファースト』と名付け、具体的に実行。

残業ゼロ、腰痛ゼロ、メンタル不調ゼロの「トリプルゼロ施策」をはじめ様々な角度から施策を打ち、職員が働きやすい職場を作り上げたのです。

その結果、離職率40%を超える状態から、今では入職希望者が後を絶たないという人気施設へと変貌したのです。

入職希望者が行列を作る施設とは、どんな施設なのか?


 

5.ほとんどの介護施設が理念の共有に失敗している。だから、介護業界で理念浸透に成功したら、圧倒的な人材獲得力になる。

安心してください。私の知る限りでは、介護業界では MVV や理念の共有はほとんど実現できていません。エーデル土山さんは数少ない例外です。

そのエーデル土山さんも、理念の浸透には10年以上かけてきました。
もちろんトップのコミットが大きいのですが、その結果が、今の圧倒的な実績です。

エーデルさんの成功の要因は、
余裕のある適正な人員配置やコンプライアンスの徹底も含め、

「働きやすさ」
を徹底的に改善させたこと。それに尽きます。


例えばですが…、

月何十時間ものサービス残業を放置しておきながら、
休日や勤務時間後に理念研修を行おうとする法人も多いですが、
そんなことしても、現場の不満は増すばかりです。
かえって、逆効果になってしまいます。

理念浸透の前に(同時でもいいですが)、働きやすさを改善させる。その点は注意が必要だと思います。


6.まとめ

1.介護リーダーの多くは、理念があいまいであることに大きな不満を感じている
2.介護業界は、理念があいまいなまま運営している施設・法人が多い
3.逆に、理念(MVV)を明確にし浸透させることに成功すれば圧倒的な差別化となる。
4.もちろん、まずは適正な人員配置をはじめ、働きやすい職場環境を整えることが優先。現場の負担ばかり増え逆効果になる。


次回に続きます。


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