ちょっとした失敗

ある晴れた日、大観衆と軍隊が見守るなか、宇宙船らしき飛行物体が地響きを立てて着陸した。
地響きがおさまった。固唾をのんで見守る群衆たち。
ひとりの兵士が手をあげた。彼はミサイルの発射装置に指をかけている。
「司令官、発射の許可をください」
司令官はクビを横に振る。
「ダメだ。まだ敵と決まったわけではない」
にらみ合いが続いた。
「もうダメだ」
さっきの兵士が耐えきれずボタンを押した。ミサイルが白い煙を上げながら宇宙船に命中した。宇宙船は粉々になった。
「おまえ!なんということを!」
司令官の怒号が青い空に響いた。

モニターの映像が途切れた。ぼくは後ろにいる母さんに叫んだ。
「ママー!ぼくのおもちゃ、壊されちゃったよー!」
「あらあら。あんな野蛮な生きものしかいない星に降ろすからよ。また買ってあげるから」
母さんは、正面ではご近所さんとおしゃべりしながら、後頭部にもある目で、こちらに目配せした。

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