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“にがり” って、一体なぁに?

にがりとは?

広義のにがり

海水から塩を抽出する時にできる液体のことです。
塩の主成分の「塩化ナトリウムを除いた成分」で、残りの約20%の成分の事を指します。(「海水の成分」参照)

狭義のにがり

主成分の「塩化マグネシウム」を指します。

海水の成分

左の図のように、海水に含まれている塩分は、約3%です。

海水中の塩分の成分は、右の図のように、多い順に書き出すと、下記になります。

  1. 塩化ナトリウム
    77.9%

  2. 塩化マグネシウム
    9.6%

  3. 硫酸マグネシウム
    6.1%

  4. 硫酸カルシウム
    4.0%

  5. 塩化カリウム
    2.1%

  6. その他
    0.3%

にがりを多く含む塩の特徴

にがりの主成分である、塩化マグネシウムは、吸湿性が高いため、にがりを多く含む塩は、べたついている特徴があります。

現代とは違って、製造方法が未発達だった江戸時代の塩は、粗塩だった為、にがりを多く含んでいたため、沢山の水分が出て来たそうです。

水分を飛ばすために、「焼き塩」にしていたという事です。

過去記事で「落語から見えてきた、にがりと塩の話」にも挙げましたが、
そちらで、『落語の舞台を歩く』様 のHPに「焼き塩」の工程の資料がありました。

写真:行徳塩、製造工程の最終工程「焼き塩風景」 市立市川歴史博物館蔵模型 
右:素焼き壷の「焼き塩壷と蓋」 江戸東京博物館蔵

粗塩は ニガリ が強く直ぐにシケってベタベタになるため、
粗製の食塩を焼いて作った純白のさらさらした塩にした。

素焼きのつぼなどに入れて蒸し焼きにすると、粗製塩中の塩化マグネシウムが吸湿性のない酸化マグネシウムに変わるため、苦みがとれ
湿気(しけ)にくくなる。

また、焙烙(ほうろく)などで煎った塩。炒塩(いためじお)ともいう。

『落語の舞台を歩く』
http://ginjo.fc2web.com/219nakisio/nakisio.htm
右図:原画・職人本『略画職人尽』文政の頃 岳亭五岳画。 『江戸商売図絵』三谷一馬画。

お爺ちゃんが、こうして担いで、焼き塩を売り歩いていたそうです。

にがりの豆知識

凝固剤として使われる

【豆腐を作る時】
これは、皆さんご存知ですね。
大豆のタンパク質を固める作用があります。

【その他の凝固剤として】
自然塩を使って、砥石の凝固剤にする事も、
テニスコートを固める凝固剤としても、使われるそうです。

ジェラルミンの原料

マグネシウムをアルミニウムに混ぜて飛行機用の合金(ジェラルミン)を作った事から、その原料として、戦時中は軍需物資・統制品であったそうです。

ジェラルミンのトランク

融雪剤の主成分の一つ

北海道が所轄する道路や各自治体の管理する道路で、「塩化ナトリウム」の他に撒くのは、「塩化カリウム」「塩化カルシウム」「塩化マグネシウム」が主に融雪剤として使われています。

融雪剤

下剤として

ニガリの中の、「硫酸マグネシウム」が下剤に用いられます。

にがりたっぷりの塩は、人体にとって有益か?

アメリカの西部開拓時代に多く使用された馬が、時代の流れで不要になって無人島に追われたそうです。
その馬たちが、海水に近い、にがりを多く含む地下水や、にがり分の多い草を食べた結果、子孫たちは、ロバの様に、身体が小さくなったという話があります。

江戸時代の日本人は、製造技術が発達していなかったため、海水を煮詰めた
にがり成分が15%くらいの粗塩を食べていて、寿命は40~50歳くらいでした。

記事「塩の品質と病気の関係」で、戦前の塩について書きました。
戦前の塩は、江戸時代よりは、製造方法が進化しましたが、それでも、
にがり成分が多すぎたので、腎臓を傷め、老化を促進しました。
その結果、日本人の死亡原因の第1位は腎臓病でした。
男性でも、身長が五尺(1.55m)と小柄で、人生50年と言われていました。

戦後に、塩の製造方法が改良されてから、塩の品質に変化が起こります。
にがり成分が大幅に減らされた事で、背の高さは大きくなり、寿命が延びました。

にがりをたっぷり摂取したいのなら、海水をそのまま飲んだり、料理に使う歴史が続いていても良いのですが、人類は、塩の製造方法と品質を進化させ、にがりを減らして、バランスよく摂るように、進歩してきたのです。

「昔ながらの塩」、と聞くと、にがりがたっぷりミネラルたっぷり
という、良いイメージが思い浮かぶと思います。

にがりがタンパク質を固める作用がある事(人体のタンパク質も固めるのではないか?)、腎臓を傷めるという事を念頭に置いて、「江戸時代の塩」「戦前の塩」に戻る事が果たして、人体にとって、良いのかどうかを、今一度考えてみる必要があるのではないでしょうか?

ミネラルについて

過去記事を参照ください。
人体が、塩からのミネラルは、吸収し難いというお話や、講演会でお話しているミネラルのお話をご紹介しています。

①「○○○○は必要だが 人はそれを吸収し難い
②「ミネラルのお話  / 講演会ではこんなお話をしています

塩に含まれるにがり成分の理想的な割合は?

食べるお塩に含まれるにがりは、約2%~3% あるくらいがベストです。

にがりの見かたが、変わったでしょうか?

お読みいただき、ありがとうございます🙇


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