おじろスキー場に行きました。(2024/01/27)
【あらすじ】
再来月に友人たちとスキーに行く予定の私。運動神経が悪く、それでいて格好つけたがりの私は一人、おじろスキー場へと「コソ練」をしにやってくる……。バスに揺られて3時間弱。スキー板とブーツを借りる際に気づいた。現金を口座から下ろしていないことに……。
この写真を撮った段階ではまだ財布の中を見ていない。自分の所持金が3000円しかないことに気づいていない。
レンタル代は2300円。この時点で残り700円。
コインロッカーにスキーウェア以外の荷物を入れるため500円を支払った。所持金200円。
とりあえずスキーを楽しむが、喉が渇きすぎて堪らなくなる。自販機でスキー場価格のスポーツドリンクを買った。所持金20円。
しかも、スマホをコインロッカーに入れてしまったがためにスキー場の写真はない。
所持金20円の私にコインロッカーを開け、再び利用することは許されていない。もちろん、所持金20円男が食える飯などどこにも売っていない。
スキー場は現金至上主義だった。所持金20円でも「せっかく来たし……」という思いから4時間ほど滑り倒した。カロリーを消費するだけ消費して、もう体力の限界というところまで追いつめ、私はスキー場を出た。まだ帰りまで時間がある。
時間をつぶすためにトボトボ寒空の下を歩いた。腹が減りに減り、寒さがいっそう堪える。話し相手もおらず、金を貸してくれる者もいない。この時代に路傍で乞食をするしか空腹は満たされないのか……と途方に暮れていたところだった。
「あっ!」
声を上げた。沸き起こる歓喜に小躍りしそうな自分を慌てて止める。目の前には郵便局。私の口座はゆうちょ銀行。だが、慌てるな。あの郵便局が営業しているかどうかまだ分からない。それにATMがあるかどうかも定かじゃないだろう。
おそるおそる、近寄ってみる。こんな態度で郵便局に臨んだことはこれまで一度もない。
顔を上げ、よくよく目を凝らし、看板を見る。たしかに、ゆうちょ銀行ATMの看板だ。
果たして開いているのか。足を進めたところ、ウィンッ、と自動ドアが自動で開いた。視界に飛び込んできたATM。「お取扱い中」の文字。
私は寒さなど忘れ、軽快なステップを踏みながら現金を下ろした。1000円札が10枚。
真っ先に向かったのは、スキー場入り口で営業している露店。6、7人ほどが行列を作っているが構わない。いくらでも待とう。私はあなたのメンチカツが食べたい。
そんな強い意志のもと、勝ち取ったメンチカツを頬張りながら、帰りのバスへと歩き出したのだった。