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【#孤高の書】其の三:同調圧力の正体

 初回で、「独りでも生きていける環境が加速的に整ってきたことで、人々はより一層孤独に陥りやすくなっているのではないか」、「社会や地域の発達がよりリアルに実質的な孤独感を助長する結果に至ったと言っても過言ではない」、社会構造が発達するにつれ「社会で生きるとはこういうものだ」「組織に属すとはこういうことだ」といったソーシャルバイアスが蔓延することになったというようなことを述べた。

 よくよく考えてみると、社会構造の発達の方向と、古く遅れた認識から来るソーシャルバイアスの方向とに乖離があるというよりは、双方の向きが真逆なのではないか、そういう矛盾を感じてしまう。

 「みんなで一緒に同じことをやりましょうね~」という古い義務教育の在り方が、個々の意思よりも古い常識でがんじがらめの、まるで鳥籠のような檻の中で過ごすことが正しいのだという正常性バイアスをかけられ続けて、現在60代70代のおじいちゃんおばあちゃんが「社会で生きるとはこういうことだ」「組織とはこういうものだ」と若い世代を管理する立場にある40代50代の人たちに刷り込み、現在、20代30代の若者たちが刷り込まれようとしている。

 正常性バイアスとは、「〇〇は正しいんだ」と思い込んでしまうように認識させる刷り込み効果のことである。

 同調圧力に屈して、周りの人間たちに合わせることで疎外されることを回避し、自分の居場所を確保することが優先だということが正しい認識だという刷り込みは、同調圧力をかける側と屈する側とが存在し、これに抗う者は疎外されたり、叩かれたりする。

 そうやって、自分が疎外される側に立たされないように意思を殺して周りに染まっていればとりあえず大丈夫だと錯覚する。そして、少しでも周りと違う行動をしたり違う言動をしたりする人間がいると、その人から距離を置いて囲むようにして集中砲火を浴びせるような卑劣な真似をする。

 同調圧力の効果に魅了された人間は、便利だと感じたり、洗脳するには最適だと妙なことを企む人間がいる。

 5歳児の母親とそのママ友が宗教上の主従関係にあり、ママ友がこの母子を洗脳し、金銭の搾取を繰り返し、結果5歳の男の子が餓死したという事件が今もリアルタイムで連日大々的に報道されている。

 男児の母親とママ友の関係性は、ママ友よりも宗教上の主従関係のほうが強いことが見て取れる。母親も外面がよく、断れない性格だったのかもしれない。それ故に、同調圧力を洗脳に悪用した女は、幼い子供の未来を奪うに至った。

 立場や肩書などに付随する権力を振りかざし、同調圧力をかけて洗脳し、その檻から少しでもはみ出す人間がいれば、圧力に屈した人間たちの総スカンを喰らわせ、疎外する。

 「力を手にした者は、これを他者のために正しく行使する責任と義務がある。」

 にもかかわらず、私益を貪るためにその力を濫用し、言うことを聞くお気に入りの人間を周り集めて、言うことを聞かない人間のことを「協調性がない」「愛想がない」などと言って爪弾きにすることも、「組織に属すとはこういうことだ」などと言って正当化する。

 協調性がないのではなく、組織における同調することを強制した結果、強調する意味がないことに気付いた人間が、同調圧力に抗うことになる。

 其の二で、苦痛への耐性を強化するためには、小さい頃から徐々に徐々に大なり小なり様々な苦痛を経験する以外に手段はないと述べたものの、納得のできない同調圧力に屈してまで自分の居場所を確保するような苦痛にいくら耐えようとも、誰も得しないし、そのために自分の人生時間が食い潰されていくことになる。

 悲しいかな、「Noと言えない日本人」などというフレーズが存在したことで、同調圧力をかける側の人間たちが洗脳に悪用するようになったとも言えなくもない。

 確かに、集団に染まっているほうが波風が立たなくてラクかもしれない。でも、そういう人間関係に慣れてしまえば、いつからか自分の意思で考えて行動することが困難になり、より一層断れない人間に塗り固められていくような気がするが、誰しもそれでいいとは思っていないのではないか。

 たった一度きりの人生を集団に操られて毎日を過ごせば、きっと死に際に後悔しか残らない。

 同調圧力の正体とは、疎外されることを恐れ、薄っぺらい関係性で作られた集団の愚力である。

 それ故に、脆く崩れやすく、統率しにくいため、いざとなるとそういう集団は不正さえも良しとしてもみ消そうとする。そういう集団の中で自分の居場所を確保しようとする時点で、自身の意思は機能せず、ただただ疎外されまいとして意思を殺し続ける。

 いじめがその構造をシンプルに表している。いじめる側がリーダー1人と9人の群、いじめられる側が1人、この場合、いじめる側10人は本当に全員悪意100%でいじめていると言えるだろうか。

 リーダー以外の9人はどうか。自分がいじめられる側のターゲットにされまいとして、本当は悪いことだという認識がありながら、意思が働かずにただリーダーに従うしかできない者もいるのではないか。

 同調圧力は、本来人間が手にしてはならない力の一つだろうと言える。武力と同様に、心の通わない強制力を行使するわけだから言葉も通じない。

 真実を語る者、未知の思想を提言する者、不正を暴く者、彼らは歴史上でも現在においても疎外、迫害される側に立つ。集団に対して反旗を翻すということは相応にリスクが伴うものだから、誰もが意思を殺して染まろうとする。

 それほどに、人間とは弱い生き物なのだ。

【次回予告】独りでいる時の過ごし方

お楽しみに!(・∀・)ノ


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