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【視察レポート】難民移民向けテックスクール「ReDI-School 」in デンマーク&スウェーデン~成功モデルをローカル化する秘訣~

こんにちは!ゆうかです。
私は、日本に暮らす難民の方々の雇用創出にビジネスを通して取り組んでいます。

今回の記事では、2023年に最も刺激的な時間だった視察のレポートをnoteに残しておきます。
6月の訪問から時間が経ってしましたが、年末に振り返り、その時のインスピレーションを忘れる前に言葉にしておきます。


進化が止まらない、クリエイティブでインパクトに溢れる、ReDI-Schoolとは?

<ReDI -School(レディ・スクール)>
難民に対してITスキルを教えるドイツ発の非営利団体。高品質なトレーニングを提供し、起業家やデジタル業界と協力する機会を提供。ドイツのベルリンでコース(授業)が開始され、現在はヨーロッパを中心にスウェーデンやデンマークにも支部を広げ、最近ではオンラインのコースやサイバースペースでも活動をしている。移民や難民である生徒は、そこでデジタル技術を学ぶことができる。「貴重なデジタルスキルと、すべての人に新しい機会を創造するためのハイテクリーダー、学生、同窓生の強力なネットワークを学生に提供すること」を目的としている。

ReDI-School HP
https://www.redi-school.org/

日本語記事『難民にプログラミングの学習支援を。ザッカーバーグも注目するベルリンの“難民のための学校”』
https://ampmedia.jp/2018/01/05/redi-school/

私は、ReDI-Schoolの存在を、大学2年生の時(当時2017年ごろ)に知りました。海や陸を渡って多くの難民がヨーロッパへ避難していることが大きくニュースに取り上げられていたことをよく覚えています。

そんな中、『Hacking the refugee crisis(難民危機をハックする)』というかなりイケてるタイトルがついたTEDトークを見つけます。
それが、ReDI-Schoolを創設したAnne Kjaer Riechertさんだったのです。

鳥肌が立ちました。何度見たことでしょう。とても憧れました。
Anneさんがプレゼンの中で言っている、”Not Talk ABOUT Refguees, But Talk WITH refugees(難民についてではなく、難民とともに話そう)”は、私の活動の指針になりました。

彼らは、”難民”という名前ではない。
一人一人に名前と人生のライフストーリーがある。それを私は知りたい。

そして、彼らのタレント(才能)やパッションが発揮できる場所を日本に創るんだと、私の志が芽生え、それは7年経った今も変わりません。

そして今回、デンマークとスウェーデンにできた新しい支部に訪問する機会があり、その時の様子を皆さんにもお伝えできればと考えております。

大学や行政と協働!イノベーションセンター内にオフィスを構えるスウェーデン支部

デンマークコペンハーゲンから電車で40分ほどのところにある、スウェーデンの北西部の都市Malmö(マルメ)。ここに新しい支部が2022年秋に立ち上がり、デジタルスキルトレーニングを通して、移民背景を持つ女性向けのトレーニングをメインに提供しています。ドイツのBerlin支部では、インターネット記事などから、4割程度は男性向けにトレーニングを提供しているイメージがあったので、地域ごとに特徴が違い、非常に面白いなと思いました。

実際に訪問して、支部代表のFelix Unogwuさんにお話を伺い、面白いと感じた3点を皆さんにもシェアします。

①行政が運営するスタートアップ拠点と協働し、起業家が集まるシェアオフィスで活動。

ReDI-School Malmöのオフィスは、Malmö市が運営するスタートアップ拠点「MINC(ミンク)」の中にありました。

MINCは、スカンジナビアで最初のスタートアップ・インキュベーター・プログラムの一つとして、2002年にマルメ市によって設立されました。

Malmö市が運営するスタートアップ拠点「MINC(ミンク)」 

この施設が非常に面白くて、施設内にはこのスタートアップ拠点を創業時に使用していた起業家たちの写真が多く展示されています。

ここから伺えるのは、20年以上に渡って起業家の支援を行ってきた、このスタートアップ拠点自体が、広いネットワークを持っていること。この点は、お話を伺ったFelixさんもこの施設を使用している強みと話しており、100を超える起業家や企業はこの拠点から排出されているそうです。

私自身、Malmö市は、5年前のデンマーク留学時代に何度も遊びに来ている街ですが、個人的にコペンハーゲンよりものんびりしていて、過ごしやすい場所というイメージがあります。

しかし、はじめて見た街の一面なので、すごく興味を持ちました。
なぜこんなにスタートアップ支援が盛んなのでしょうか?

上記の疑問に対して、Malmö市の強みを書いた別の記事があったので、引用させていただきます。

スウェーデンとデンマークの国境近くにある、人口30万人弱のまちに、スローで落ち着いた暮らしやレベルの高い起業環境を求めて、感度の高い若者や起業家たちがヨーロッパ中から集まっている。

マルメ大学をはじめ、マルメ市が運営するスタートアップ拠点「MINC(ミンク)」や、メディアやデザインを中心にデジタルイノベーションハブとなっている「Media Evolution City(メディア・エボリューション・シティ)」などがコンパクトなスタートアップのエコシステムを形成し、人口1万人あたりの特許数は世界でもトップクラス。OECD(経済協力開発機構)の「world’s fourth most inventive city」にも選ばれている。

その源泉にあるのが、住民が170カ国の出身者で構成されるという驚くべき多様性だ。まさに世界の縮図ともいえるこの内訳は、30%強が外国生まれ、約半数が35歳以下。そして、徒歩圏内に機能を集積したコンパクト・シティであり、空港へ20分、コペンハーゲンへも電車で40分とアクセスも良好だ。

社会の変化を牽引するリ・ジェネラティブな都市のあり方とは?【vol.3】

上記の記事内では、日本の都市に例えるならば博多が近いとあって、とても納得しました。
私も仕事の関係で、約1年ほど福岡市内に住んでいましたが、空港へのアクセスがよく、なおかつスタートアップ拠点として行政の施設「Fukuoka Growth Next」があり、共通点が多いなと感じました。

② Malmö大学とテックスキルトレーニング授業を共創。講義は大学内の施設で

先ほど紹介したスタートアップ拠点「MINC」の良いところは、Malmö大学のすぐ側にあることです。また、大学とMINCの交流や連携プログラムもあるようで、大学のゼミの活動の一環で、ReDI-Schoolの活動にも、学生達がボランティアとして参加しているそうです。

Felixさんが、「いつもMINC内に併設されているカフェでMTGをするよ。ここは居心地が良くていいアイディアが生まれるんだ。」と教えてくれました。

併設されているカフェの様子

他にも、Malmö大学は、ReDI-Schoolの活動をサポートしているようで、Malmö支部のコースの授業は、大学内の講義室を使用して行われるそうです。

③プロボノとして、Microsoft社などの現役エンジンアがコースのプログラムを設計。
2022年からスタートした、Malmö支部では、2023年6月時点で、既に100名の方々がコース受講されていました。
Felixさんは、実際に現役のエンジニアとして働いているプロボノ(専門性を持ったボランティア)が講師を務め、彼らが最先端のテック事情を踏まえて設計するトレーニングコースが、ReDI-School Malmöの最大の強みだ、と話しています。

どうしても大学の授業等では、数年をかけてプログラミングやコンピューター工学を学んでいくため、常にトレンドを追ってカリキュラムを柔軟に変更していくことが難しい部分もあるそうです。

その点、ReDI-Schoolは、3ヶ月〜6ヶ月のコースのため、毎タームごとにすぐにカリキュラム内容を変えることが可能です。
例えば、企業がどこもサイバーセキュリティに力を入れているという時代の流れから、そこに特化したコースを充実させたり、プログラミング言語も一番必要なものを重視して教えたりしています。

また、コース終了後にプロボノが勤務する会社等で、講師からの推薦をもらってインターン生として、実践経験を積むことができ、エンジニアとして即戦力になることを目標にされています。

Malmö支部のこれからのインパクトが非常に楽しみです!

移民女性へのプログラミングスクールに特化したデンマーク支部のコース終了発表会の様子

続いて、デンマークにあるReDI-School Copenhagenにも訪問させていただき、コースを終了した方々の発表会「Demo Day」に参加しました。 

場所はコペンハーゲン市内にあるMicrosoft社のオフィス。
ReDI-Schoolの職員さんに聞いたところ、コースの授業は、このオフィスの2階で行われることもあるそうです。

中に入ると、ReDI-Schoolの看板が見えました。

受付

会場のホールは非常に広々とした場所で、100名以上が参加しているようでした。

会場の様子。コース修了者だけでなく、プロボノも多く参加しているよう。

デンマークらしい、リコリスのキャンディー(黒いハッカのような味がするアメ)が入ったお菓子と、飲み物を片手に、ワクワクしながら開始を待ちます。

オープンニングでは、Vibeさんから、終了したコースのインパクトについてプレゼンがありました。

コペンハーゲン支部代表Vibe Lindgård Bachさんによるオープニングスの様子


今回は、テックスキルを学ぶコースを受講した方が102名、デジタルリテラシーコースを学んだ方が48名だったそうです。

デジタルリテラシーコースでは、デジタル化がどんどん進むデンマーク社会で、より生活しやすくなるように必要不可欠なデジタルリテラシーを育むコースになっていて、コースを通してデジタルスキルだけでなく、デンマーク社会についても理解を深められる内容になっています。

テックコースは、テクノロジー領域においてキャリアを歩みたい方々を対象に、AIやデータ分析、UXなど様々なコースを展開しています。

スキルトレーニングに加え、受講生はコーチングを受けたり、ネットワークイベントに参加したりと様々なキャリア活動も同時に行うことができます。
また、ReDI-School生のみを対象にしたインターン制度や採用募集もあります。

今回のタームでは、75名のボランティア講師と、25名のコーチ/メンターが運営に関わっており、非常に大きなチームとなっています。

実際にコースを終了した受講生による、ReDI-Schoolでの学びに関するプレゼンもありました。

プレゼンの中で印象的だったことについて、プロボノの方々やパートナー企業との繋がりから、3社に企業訪問ができたことと話していました。

訪問した企業は、デンマークのIT領域、ソフトウェアをリードするKMD社、Visma社、ITコンサルティング会社のNetcompany社だったそうです。

他にも、実際の仕事に近い内容を学べるコースや、メンターによる履歴書の書き方、就職活動の面接に関するアドバイスやフォローアップが手厚かったことを感謝している方もいました。

最後に、Demo Dayの締めくくりとして、「テクノロジー領域における多様性を高めるには?」というテーマでパネルディスカッションが行われました。
やはり印象的だったのは、ジェンダー格差が少ないといわれるデンマーク社会でも、まだまだテックキャリアを歩む女性は多くないこと。
つまり、テック領域で働く女性を増やすという共通ゴールは、デンマーク社会において、非常にパワフルなストーリーであり、より様々なステークホルダーとの協働においても重要な点であると感じました。

ReDI-School Copenhagenでは、受講生は完全に女性に焦点を絞っています。その理由は、IT業界のジェンダー平等のインパクトだけでなく、移民難民の雇用を増やすという意味でも、より大きなインパクトがあるからだそうです。

また、デンマーク支部代表のVibeさんに話を聞いたところ、「男性はIT業界で、すぐに様々なチャンスやポジションに恵まれる場合が多い、ならばもっと機会が少ない人にチャンスとサポートを届けたい」と想いを語られていました。

今回、ReDI-School Copenhagen とReDI-School Malmöの両方を訪問して、ReDI-Schoolという世界でも有数のロールモデルを、ローカル化する方法に学びとインスピレーションを感じました。
ドイツのベルリン支部の話をTED Talkやオンライン記事から学んだ時は、「難民の方々が才能を発揮できる場所をデジタルスキルを使って広げていこう」というストーリーが強かったですが、北欧の支部では「いかにテック領域での多様性を、女性のテックキャリアを築く人を増やすか?」というストーリーでそれぞれの社会のニーズに合わせていて興味深いと感じました。

ただそのまま持ってくるのではなく、より地域の課題に結びつけ、インパクト拡大に最適な現地のパートナーと協働することが、非常に大切だなと思います。

私もいつか、日本にReDI-School Japanを創りたいという夢を胸に抱きながら、目の前の一歩を着実に進んでいきます。

最後に、今回、ReDI-Schoolの方々とお繋ぎいただいた皆様、訪問を快く受け入れてくださった皆様に、心から感謝申し上げます。
このインスピレーションを日本の現場でもどんどん活かしていきます!

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