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Leica M9をモノクロセンサーカメラに改造する。

どうも、四葉三丁目です。
タイトルの通り、Leica M9をモノクロ専用カメラに改造してみようという企画です。
※慣れていない人は真似しないでください!ほぼ確実に壊します!壊れなくてもそれは運が良いだけ!

さて、Leica M9と言えばレンジファインダーカメラで唯一のKODAK製フルサイズCCDを搭載したライカのカメラで未だに根強い人気があります。

ただし、CCDセンサーのコーティングが剥がれるという持病(通称CCD剥離)を持つカメラです。修理は現在はライカで行っていないので、Kolari VisionやMaxMaxのような有名な会社で修理が行われています。
中国の北京や深圳でも交換をしてくれるカメラ修理屋さんがありますが、カバーガラス単品でも購入できるためDIYで修理を行う人もいます。

なお、個人がDIYで修理を試みてセンサーに傷をつけたりガラスを割って諦めたジャンクがたくさんメルカリやヤフオクなどのフリマアプリで見受けられます。
実際、カバーガラス交換は手先の器用さと忍耐力、集中力などが必要なので個人でやるのは私もお勧めできません。

というかたまに「カバーガラスなんて交換は簡単だしガラスもそんなに高くないから自分で交換しなよ!」と勧めている人もいますが、無責任さに呆れます。やめた方がいいです。業者に任せた方が絶対良い。それはまた別の機会に書きます。

そして、失敗してセンサーに傷が入ったものはもうカメラとして使い物になりません。


■素材のジャンク

はい、そんな使い物にならないジャンクを2023年5月にebayで購入しました。

・LeicaM-E
・マザーボードコネクタ破損(フレキシブルケーブルを接続する場所を素人がぶっ壊している)
・カバーガラス交換に失敗したセンサー(センサー面に傷アリ)
・シャッターフォールト(シャッターチャージ機構が死亡)

という非常にアレなジャンク品です。実際は動作未確認とだけ書かれているものなので、ここまでジャンクだとは思わなかったのですが…
まあ、M-Eのガワが欲しかったのとこんなもんでもいくつかの実験が出来るかと思い納得することにしました。

■モノクロセンサーとは何?

 そんなジャンクも忘れて1年ほど。その日はモノクロカメラが気になりM Monochromについて調べていました。
そういえばモノクロとカラーのセンサーの違いってあんまり知らないな…と思って調べることにしました。

https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/onsemi/142846/

CMOSイメージセンサーは光電効果による光電変換を利用した半導体素子ですが、何も処理しなければ「単に光を電気に変える」だけの機能を持つ素子です。ここから赤、青、緑の色を出すためには色の付いたフィルターに光を通し、各色のフィルターを介した光を電気に変える必要があり、そのために使われるフィルターをカラーフィルターとよびます。

このカラーフィルターは赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の配列で構成されたベイヤー配列(KODAK社のベイヤー博士が作ったからこの呼称)、シアン(Cyan)、マゼンダ(Magenta)、イエロー(Yellow)で構成されたCMYe配列、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の配列に透明(Clear、またはWhite)を追加したRGBC配列といった様々なカラーフィルターアレイがあり、ベイヤー配列以外に斜めに配列したダブルベイヤー配列などがあり、用途・目的によって様々な配列があります。

また、いわゆるモノクロのCMOSイメージセンサーはカラーフィルターがないものと思われがちですが、色が付く前の透明のフィルターがあり、構造はカラーフィルターがあるものと同じです。

https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/onsemi/142846/

モノクロームカメラ

 モノクロームカメラは全てのピクセルに同じ色のフィルターを使ったカメラで、つまり、白黒イメージが撮影されるので、デモザイクを必要としません。また、この様なカメラの一部は赤外線フィルターも持っておらず、独創的なモノクロ撮影を可能にしています。

 RawTherapeeはモノクロームカメラもサポートしますが、ユーザーインターフェイスはその仕様で作られていないので、モノクロームファイルを読み込んでも、カラーに関する機能は有効のままです(もっとも、それらを調整しても殆ど意味は有りませんが)。モノクロームカメラは特殊なカメラなため、私達の開発努力をその仕様作りのために注ぐことは出来ません。ですから、この種のファイルを入力した際に、カラーの調整機能が無効になる、といった利便性が無いことを御承知おき下さい。

 モノクロームファイルを扱う時には、更に幾つか留意点があります。モノクロームカメラには、Leica Monochromの様に色を単一チャンネルで記録するものと、Phase One IQ260 Achromaticの様にRGBチャンネルで記録するものが混在します。単一チャンネルだけを記録する機種であれば、RawTherapeeはそれを認識し、デモザイク処理を実行せず(デモザイクセクションにある機能は有効になったままですが、何もしません)、他の操作にも支障はありません。しかし、ベイヤー配列を使うカメラの様にRGBチャンネルで記録する機種に関しては、デモザイク処理が実行され、カラーマトリクスが適用されてしまいます。従って、この様な機種の画像ファイルを扱う場合は、デモザイク処理で“Mono”というオプションを使って下さい。そして、カラーマネジメントの入力プロファイルを“入力プロファイルなし”に変更して下さい。

https://rawpedia.rawtherapee.com/Demosaicing/jp

 上記のマクニカのページによるとカラーフィルターが赤緑青になっているのがカラーセンサーで、モノクロセンサーはカラーフィルターが透明になっているかの違いなのかということでした。
また、RawPediaを見るとモノクロセンサーはカラーセンサーの時のデモザイク処理が必要ない(というよりはしない)というのが大きな違いのようです。

おや…?もしかして、CFAとマイクロレンズを除去してしまえば、マイクロレンズの除去により感度は下がるけども、フォトダイオードがむき出しになるからモノクロセンサーになるのでは…?と思いつきました。

■CFA除去について

すぐさま、海外でCFAの除去をした改造をしていないかを調べてみたらビンゴ!除去を行ってモノクロ改造をする人が一定数いることが分かりました。

A photographer named Dave reported that scratching off the layer removes both the color filter layer and the microlens layer above it. Losing the microlenses reduces sensitivity, but removing the filter increases it. He says the optical improvement isn’t very big, but there are big gains to be had in IR and UV photography.

翻訳:
Daveという写真家は、この層をスクラッチすると、カラーフィルター層とその上のマイクロレンズ層の両方が除去されると報告している。マイクロレンズを失うと感度が下がるが、フィルターを取り除くと感度が上がる。彼によれば、光学的な改良はそれほど大きくないが、IRとUV撮影では大きな利益が得られるとのことだ。

https://petapixel.com/2013/08/04/scratching-the-color-filter-array-layer-off-a-dslr-sensor-for-sharper-bw-photos/

■実際にやってみよう

さて、ここであのジャンクのセンサーの事を思い出します。

中に傷が入ってるセンサー

中に傷が入ってるし、実験するにはもってこいだなと…

さて、まずはカバーガラスを外します。
前のオーナーが傷をつけてやる気を無くしたみたいで適当に接着していました。
とりあえず、ボンディングワイヤーの断線に気をつけて開けます。

しっかり傷


センサーにはしっかり傷が入ってますね。
これはマイクロレンズとCFAが剥がれてしまって、フォトダイオードが露出しているのですね。さて、まずは様子見で剥がしていってみましょう。

不安になるね…

フォトダイオードのモース硬度は6〜7だと思いますが、念のため硬度の低そうな爪楊枝でカリカリと剥がしてしていきたいと思います。なかなか大変な作業な予感がしてきました。

本当にええんか…?コレ…


ここまで来るのに大体1時間ほどカリカリと削りました。ツルッとした層と少し曇った層がまだらになっています。
マイクロレンズだけ剥がれたスポットとマイクロレンズだけでなくCFAも剥がれてフォトダイオード層が露出しているスポットがまだらになっているためです。

さて、爪楊枝ではCFAは剥がしきれない事が何となく分かってきました。
そのため、知恵を振り絞って考えてこれで剥がせるかな?と思う素材を使って剥がすことにしました。

やったぜ


なかなか綺麗に剥がせるじゃないですか。
ここまで3時間かかりました。
あとは端の方にCFAが残っているのでボンディングワイヤーに気をつけながら慎重に除去していきます。

綺麗になるの大変だった…

というわけで隅々まで取れたかなと。ここまで4時間かかりました。
今回は原理が正しいかの確認なので、カバーガラスの接着は一旦四隅だけにします。

ボンディングワイヤーに神経を使った…

一旦、接着剤が馴染むまで待ちます。
カバーガラスの接着をしたら今度は組み込みです。

モノクロ改造センサー(上)とカラーセンサー(下)
M9 Monochrom

カラーセンサーと今回の改造を行ったモノクロセンサーを比較するとマイクロレンズやCFAの加減で色が違うことがわかります。ちなみにM monochromと比較してもマイクロレンズの有無や透明ではありますがCFAの代わりにオフセットのためのフィルターが入っていますのでモノクロ専用のセンサーと比較しても異なるものとなります。
実際、モノクロ専用のセンサーとカラーセンサーを改造したものは感度の部分で前者の方に利がありますし、センサーメーカーが多額の研究開発費用をかけて開発しているものになります。

■カメラ側の設定と現像ソフトで読み込む

完成したセンサーを実際にカメラに組み込みます。

そのまま組み込むとこんな感じの画像になります。これではモノクロではないですよね……そのため、カメラ側で設定をいじります。

センサーはデフォルトだとカラーのための設定になっています。そのための補正の設定を行う必要があり、これを行うと無事にモノクロカメラとなりました。
(ちなみにですが、JPGの設定をモノクロにしたわけではありません。)

このあと、手元に余ってたジャンクでキメラなライカ(キメライカ)を作りました。画面は割れてるけど気にしない。


■撮った画像をデモザイク処理をせずに現像ソフトで開く

デモザイク処理なしのモノクロ
デモザイク処理ありのモノクロ

センサーからもモノクロの画像が出ることが確認できました。
ただし、これだけでは現像ソフトでモノクロカメラとして現像できません。
理由は一般的な現像ソフトはRAWを読む際にDNGの情報を参照してベイヤー配列かそうでないかの設定を読み込むためこのままだとカラーセンサーのDNGとして認識してデモザイク処理を行うためです。
デモザイク処理がなされてしまうと解像度の低下、モアレ、エイリアシングが発生してしまうためせっかくのモノクロ改造の恩恵を受けることができません。
RawPhotoProcessor、AccuRaw Monochrome、darktable、RawTherapeeなどのいくつかのソフトではデモザイク処理をオフにして現像をすることで本当のモノクロカメラとして現像ができます。

さて、いかがでしたでしょうか。今回はどうしようもないセンサーを活用するためにマイクロレンズをCFAを剥がしてモノクロ改造にしました。以上で今回の改造は終了です。今回も記事をお読みいただきありがとうございます。

もし面白いと感じていただけたならば有料部分にノウハウを載せてありますのでよかったら購入ご検討ください。
(LightroomやPhotoshop、CaptureOneで現像できるようにする方法やセンサーのマイクロレンズ、CFA除去のコツや薬剤についても記載します。)


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