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映画「妖術秘伝・鬼打鬼」でキョンシー映画の源流を感じる

監督・主演 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)のアクションホラーコメディです。80年代に大ヒットしたキョンシー映画「霊幻道士シリーズ」の元となった作品であり、この「鬼打鬼」そして同じくサモハン監督または製作作品の「人嚇人」「人嚇鬼」「鬼食う人」は「霊幻道士元祖シリーズ」と言われているそうです。ちなみに、この「鬼打鬼」より前に公開された「霊幻少林拳」が本当の元祖キョンシー映画らしいです。

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「妖術秘伝・鬼打鬼」
原題:鬼打鬼
英題:Encounter of the Spooky Kind
公開:1980年(香港)

あらすじ

自称・豪胆な男・チャン(洪金寶)。チャンは日ごろから仲が悪かった妻(梁雪薇)と他の男が不倫している現場を目撃するが、相手の男にはすぐに逃げられ、残った妻に男の行方を問いただすも逆切れされてしまう。
一方、逃げ帰った妻の不倫相手である富豪・タム(黃哈)は不倫発覚を恐れ、道士チン・ホイ(陳龍)にチャンを呪い殺すように依頼する。
様々な手でチャンを追い詰める道士チン・ホイ。しかし、術式を人を殺めるために使う兄を許せない正義の道士・ツイ(鍾發)が、追い詰められるチャンに救いの手を差し伸べる。

主な主演

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チャン(洪金寶)
自称・豪胆な男だが実は臆病者。妻の不倫相手・タムが道士に呪い殺すよう依頼したため、命を狙われるようになる。

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ツイ(鍾發)
道士チン・ホイの弟。正義感が強く、術式で殺そうとする兄チン・ホイからチャンを守るため手を貸す。

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チン・ホイ(陳龍)
道士ツイの兄。不倫現場を目撃されたタムに依頼され、チャンをあの手この手で苦しめようとする悪の道士。

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タム(黃哈)
街の富豪で、チャンの妻の不倫相手。チャンの家に靴を片方忘れたことにより発覚を恐れたタムは、チン・ホイにチャンを消すように依頼する。

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チャンの妻(梁雪薇)
夫であるチャンとのケンカが毎日絶えない。タムの不倫相手。

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警部(林正英)
タム、チン・ホイのたくらみでチャンがとある事件の疑惑を掛けられた時、無理に自白を迫った。

ちょっとグロめなサモハン流キョンシー映画

「霊幻道士シリーズ」といえば怖い中にもコメディ感があり、比較的万人が観やすい感じがします。しかし、この「鬼打鬼」はホラー色が強く、かつ観ていて生理的に無理!という描写が多いためグロ描写が苦手な人には厳しいかなあといった印象を受けました。例えば、冒頭チャンが夢の中で幽霊に襲われ太ももを幽霊が食いちぎったり、警部に追われるチャンがやむなく死体の横で寝た際、に動く本物の蛆虫?が体や顔を這ったりとなかなか「うわぁ・・・」となるシーンがあります。サモハンも体張りますねえ・・・。あと、「霊幻道士」でもありましたけど今回も術で必要な雄鶏の血をとるためにニワトリの首を切ります。しかも、この「鬼打鬼」ではただ切るだけではなくホントに切り落としてしまいます。今そんな描写をしたら間違いなく各方面から怒られそうですよね。
キョンシーに関しても、後の「霊幻道士シリーズ」と比べると少々生々しいというか不気味な印象を受けました。というのもこの「鬼打鬼」のキョンシーは腐っているのです。通常キョンシーは死体として長い月日がたっても腐っていないものをいうらしいのですが、恐らく今作品ではまだキョンシーの方向性などが定まっていないせいか、ゾンビのような生々しくて気持ち悪いキョンシが出来上がったのかと思います。

動けるデブが魅せるカンフーアクション

元祖動けるデブ・サモハンは今作でも華麗なカンフーアクションを見せてくれます。

チャンとチン・ホイが操るキョンシーとの一戦。短いながらもハイレベルな戦いが展開されます。サモハンのキレのある動き、そして相手のキョンシーはあのユン・ピョウ(らしい)。キョンシーという動きに制約があるキャラクターながらも、キレのあるカンフーを見せてくれるあたりユン・ピョウはさすがです。

チャンとチン・ホイの弟子(元武)との一戦では、それぞれが西遊記に登場する人物の霊が乗り移っての戦いもかなりのデッドヒートです。輪っかみたいな小物を使ったカンフーバトルを展開し、サモハンに負けないくらいの動きを見せてくれます。

総評

後の「霊幻道士シリーズ」の元となったこの作品。後年の作品のキョンシーや道士の扱いが、まだ模索途中なのか違うところが多々あったり、道士役ではありませんが「霊幻道士シリーズ」には欠かすことのできない林正英 (ラム・チェイン)も出演しているなど、色々と霊幻道士の源流を感じることができる作品でした。
一部生々しかったりちょいグロテスクな描写があるなど、どちらかというと万人向けな「霊幻道士シリーズ」と比べてもホラー感が強くおどろおどろしい雰囲気は二重丸です。
しかし、ラストのあの唐突な終わり方はいかにも当時の香港映画らしいというか・・・笑