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値引き交渉には応じない

1年くらい前の話だが、知人と会って話をした時に仕事の話になった。
自社のWebサイト修正が必要で業者に見積を依頼したらしいのだが、文言を1行直すだけで数十万円という見積もりが出てきたらしい。
たった1行ですよ!?信じられなくないですか!?という言い分だったんだけど個人的には妥当だと感じた。

業者にしてみたら得体の知れないWebサイトである。事前にどういうフレームワークを使っているのかなど調べないといけないし、1行直しただけなのにサイト全体が動かなくなることだってあるし、それによって損害賠償請求をされる危険だってある。あらゆるリスクを加味すれば数十万円という見積もりはボッタクリでもなんでもない。

というかサイトを自分たちで管理できず、たった1行も直せないのがいけないんじゃないかと思ったけど言わないでおいた。

今思えば、会って話をしたというのは相手にとってはおそらくフリーランスの僕なら安くやってもらえるんじゃないかという期待が裏に込められていたんだと思う。
自動車だったらディーラーよりも地元の板金屋なら安くやってくれるだろう、住宅だったら大手よりも地元の工務店なら安くやってくれるだろう、といった具合だ。

仕事で直接声をかけてくる人ってそういう意図がある人結構多いけど、僕は自身で設定した単価をもとに見積もりを出すだけ。一般のソフトウェアベンダーと大差ないし値引きも一切しない。

そして納得いかない相手には内訳を丁寧に説明したうえで必ずこう話している。
相見積取って頂いて構いません。むしろガンガン相見積しましょう。

この台詞を言うためには絶対に足元を見られてはいけないし、ここでキッカケを掴めば本丸はでかいよー損して得取ろうぜみたいに、どんなに高い予算をチラつかされても揺れ動いてはいけない。
目の前の金に動じないためにはまずは1年は問題なく暮らせるくらいの貯金は欲しいところ。
そしてお気に召さないようであれば、お引取りくださいと余裕を持った態度で言おうと常々思って実行している。

勿論、相見積を取ると安くやってくれる業者が現れて、それを持ってA社もしくは別のフリーランスのAさんは貴方の半額でやってくれるそうですよ、と嫌味程度に言ってくるかもしれないが気にしなくていい。
大抵の場合、それは仕様が曖昧すぎるからであって、曖昧すぎるゆえに見積のレンジも広くなってしまうのだ。

例えば新築で2階建ての注文住宅が欲しい、という希望だけで住宅メーカーに見積を依頼すればピンキリの見積が来るのは当然の話であって、それと同じことがソフトウェア開発にも言える。

正直、自分の欲しいものを具体的に書面で記すことができないなら大手SIベンダーに依頼した方がいい。細かくヒアリングして希望通りのものを作ってくれるだろうし、打ち合わせをすればお茶が出て、もしかしたらお歳暮やお中元ももらえるかもしれない。
そう、スキルのなさは金でカバーできる。スマホもよく分からないならキャリア使えばいいし、住宅も大手に依頼する方が無難だ。なんと素晴らしい世界だろうか。
スキルも金もないからフリーランスに依頼しようとしてるんだろうけど。

話を戻そう。

そして安いA社に発注したものの仕様が曖昧だから結局ドタバタして、当初より膨らんだ開発費は発注主かA社が被ることになって、誰も幸せにならない結末が待っている。

それに値下げをしたところで、あいつは安くやってくれるという風にしか見られず、腕前なんて全く評価されない。利益は出ないし、同業者からは疎まれるし良い事なんて一つもない、というご意見をTwitterかどこかで見かけたことがあるが僕もそれに同感だ。

ゆえに皆が幸せな結末を迎えるためにも、価格は安すぎず高すぎず、妥当な価格を提示しないといけない。

ただそうは言っても僕の中には一応値引きルールというものはあって、それは昔から一緒に仕事をしていたなどで既に信頼関係があってコミュニケーションコストが少なく済む、要はツーカーの仲の人が相手の時だけは最初から安くしている。

コミュニケーションコストは案件の大部分を占めるのでそれが圧縮できるのだから安くして当然。責任の範囲など押さえるべきポイントについてはあれこれ言わなくてもお互い分かっていて、かつお互い裏切らないだけの信頼関係があるといった具合だ。
古くからの仕事仲間相手にボッタクってもデメリットしかないので尚更である。

ではよきフリーランスライフを。


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