『白い薔薇の淵まで』

『白い薔薇の淵まで』中山可穂

同性愛、この本では女性どうしの愛を大部分で扱っているけど、自分にも遠くないテーマだったので世界に引き込まれて夢中で読んだ。

あれほど狂った(という表現が正しいのか分からないが)、そんな恋愛をしたことは残念ながら無いけど、喧嘩して、衝突して、お互いもういいよって別れて、でも結局どちらかが戻ってきちゃう。そういう描写にすごく共感した。わたしも一年前くらいに喧嘩別れした大好きだった女の子がいて、こんな関係だったなあって。この本を読んで、その子との日々を思い出した。

本の感想に別の本の言葉を引用するのは気が引けるけど、せっかくなので。
わたしの大好きな小説に、
「多くの人が恋に落ちるとかセックスすることと、愛するということを混同しています。ただ頭に血が上った状態でしかないのに、それが愛の強さの証拠だと思い込んでいる」
というセリフがある。これは正しいと思う。この本において、クーチと塁は四六時中セックスをしているけど、でもそれは愛とその行為を混同している訳じゃなくて、塁にとっての愛が、その行為でしか形を成さなかったんだと思う。塁は、その形でしか愛を知らなかった。写真も、記録もいらない。ただ、抱き合いたい。自分を愛する人で埋めつくしたい。そんな塁をさびしい人だ、と心のどこかで思うけれど、そんなふうに誰かから狂気的な愛を注がれるクーチが羨ましくもある。なんだか複雑な感情。

あの子に会いたい、もう一度だけでも話したい、って、(塁ほどではないけど)狂った気持ちを思い出させてくれた。日常生活では知ることの出来ないような人間の内面的な部分を見られたし、そこからたくさんの学びが得られたように思う。多くの人に読んで欲しい。この本に出会えてよかった。間違いなくわたしの宝物の一冊。

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