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2年ぶりの開催!「Design Matters Tokyo ’22」参加レポート

北欧のデザインカンファレンス「Design Matters」が、先日東京で開催されました!

Design Matters Tokyoは、コペンハーゲンを拠点とするDesign Mattersの姉妹カンファレンスという位置づけで、本家は2015年から毎年開催されている、世界的にも有名なデザインカンファレンスです。Design Matters Tokyoは初の国外開催として2020年1月に開催され、北欧と日本をつなぐカンファレンスとして大盛況に終わりました。

2年ぶりの開催となる今回のカンファレンスは、オフライン会場とオンライン配信のハイブリッドで開催。フォーデジットからも数名のデザイナーが参加しました。会場レポートをお届けします。

アットホームな雰囲気のリアルイベント

会場はDMM.comさんのオフィス。デジタルアートが施されたエントランスがすごい!

受付では感染対策のため、入場者全員に抗原検査が実施されました。ネームプレートとランチチケットを受け取り、いざ会場へ!

木や緑の装飾でナチュラルな雰囲気の会場。リアルのイベントは本当に久しぶりです。オンラインセミナーも気軽に参加しやすいですが、同じ空間で同じ時間を過ごすのはやっぱりワクワクしますね。

会場にはレゴが置かれたスペースも。みんなレゴを触りながら、参加者同士で会話が発生していました。

今回のイベントは主に英語で進行。希望者には日本語への同時通訳デバイスが配布されました。会場にいる通訳の方が、2名体制で全てのトークを通訳してくれます。ありがたい!

2日間にわたってイベントホストを務めたのはデンマークの起業家であるVeronica。彼女のホスト力はすごかったです。これには参加したみなさんが同意のはず!

司会進行だけでなく合間のトークで盛り上げたり、ちょっとしたゲームで会場の空気を変えたり… 彼女のおかげで、イベントは終始とてもアットホームな空気に包まれていました。

Veronicaのリードでランチ後のストレッチをする参加者のみなさん

充実のプレゼンテーション

2日間にわたるイベントでは、デザインにまつわる印象的なプレゼンテーションがたくさん。いくつかピックアップしてご紹介します。

Design for social change

イベントはホストでもあるVeronicaのオープニングトークからスタートしました。

Veronicaはデンマークの起業家でブランドビルダー、そしてDEI(Diversity / Equity / Inclusion)の実践者です。彼女はケニアで月経の不平等の課題に取り組んだ、「RubyCup」プロジェクトでの経験をシェアしてくれました。

ユーザーが自分と大きく異なるバックグラウンドを持っていると、デザイナーがつい「こちら」側を想定するマインドセットになってしまうことがあります。再利用可能な月経カップ「RubyCup」のパッケージデザインで、Veronicaたちは当初、控えめで目立たないデザインが好まれるだろうと考えていました。ところが初めて生理用品を利用する現地の女の子たちからは、華やかでかっこよく、手にすることでパワーを感じられるものでなくてはならないとの意見が多かったそう。

固定観念から脱却し、「こちら」の押し付けではなく「あなた」にとってどうあるべきか?目の前のユーザーに真摯に向き合うことが重要だと考えさせられるトークでした。

Twitter Fuck-Ups: Where Innovation is born

Twitter, Inc. のデザインエグゼクティブであるAnitaは、Twitterの開発チームがどのように「失敗」を受け入れているかをシェアしてくれました。

2つのケーススタディ、ローンチは成功したもののその後クローズした機能「フリート」と、失敗を繰り返しながら昨年ようやくローンチされた機能「リプライ制限」のデザインプロセスを例にTwitterのカルチャーを共有。Twitterでは「EXPERIMENTATION」=実験の文化を大切にしているといいます。

それを支える思想は4つ。「LEARNING OVER SUCCESS」成功よりも学びを重視すること。「TRANSPARENCY」開発プロセスが誰からも見える透明性を保つこと。「HUMILITY」フィードバックを受け入れる謙虚な姿勢。「DESIGNING IN THE OPEN」さまざまユーザーと話しオープンな環境でデザインすること。

イテレーションの様子も垣間見えましたが、ボタンの色味、メッセージの文言など、とても細かい粒度で検証していて驚きました。残念ながらクローズしてしまった機能でも、イテレーションで得た知見が他の機能開発に結びついているそう。

ローンチして失敗するものもあれば、失敗を経てローンチにたどり着くものもある。「失敗したらどうしよう」ではなく「何ができるか」を考えると素晴らしいことが起きるはず、との言葉に勇気づけられました。

The Digital Ethic Compass

ますますデジタル化が進む社会で、テクノロジー企業がEthic=倫理にどう取り組むべきか?デンマークのデジタルエージェンシー Charlie Tangoの Rasmusがシェアしてくれた「Digital Ethic Compass」のやり方は非常に刺激的でした。

「Digital Ethic Compass」は、デンマーク・デザイン・センター(DDC)と協力して開発されたもの。社会への影響力を持つ大企業が、デジタル倫理を取り扱うときに活用できるフレームワークです。

Toolkitはデンマーク・デザイン・センターのWebサイトからダウンロードできます

利益ではなく人をセンターに置いた円形のチェックリストは、大きく4つのカテゴリーに分割されています。Avoid manipulating(操作しない)、Make your technology understandable(システムを理解できる)、Avoid creating inequality(不平等を生まない)、Give users control(ユーザーがコントロールできる)。カテゴリーごとにそれぞれ複数の項目で、デジタルツールの倫理性をチェックできる仕組みになっています。 

AIやアルゴリズムが組み込まれたデジタルツールが、製作者がまったく意図しないところで、社会に根づいた偏見や差別を表面化してしまうケースが、すでに多く起きています(採用AIツールの例など)。デジタルドリブンの現代において、企業が提供するプロダクトやサービスが引き起こす社会的な影響に、デザイナーも自覚的でなければならない、と改めて感じたセッションでした。

気付きを体験できるワークショップも

会場では参加型のワークショップも開催されていました。デジタルプロダクトカンパニー「ustwo Tokyo」のIvyとLarsによるワークショップは、まさに目からウロコの体験でした。

プロダクトにおける発見 — 失敗への戦略的な学習アプローチ

参加者は4、5人でグループに分けられ、「毎日薬局に通うユーザーのためのアプリ」というお題に対してアイディエーションを行います。「再度来局を促す」「健康サポートに役立つ」などいくつかの条件がありました。

グループメンバーと要件定義を議論し、アイデアを考え、コンセプトを合意し、ワークシートに書き込み…なかなか良いアイデアができたのでは?なんて考えていたところで、ホストから新しい条件が提示されました。

それは「顧客のほとんどは70代のお年寄り」というもの。すぐに私たちはすっかりその視点を欠いていたということに気がつきました。最初のワークには「ユーザーの声を聞く」という工程がまるっと抜け落ちていたのです。その視点をもって反省会をすると、自分たちが考えたアプリはどう考えても上手くいかない失敗作…!

幅広いアイデアを持つべきだ。ただしユーザーの声を聴きながら!

知らず知らずのうちに自分たちに近いユーザー像、20代の人を設定して、コンセプトを作ってしまっていました。早い段階でアイデアを検証して「失敗」に気がつくことで将来的なリスクを減らせる、ということを改めて教わりました。

デザインは重要だ

他にもたくさんのプレゼンテーション、ワークショップ、参加者の皆さんとのコミュニケーションと、刺激たっぷりで充実の2日間でした!

コミュニケーション改善のヒントから、伝統的な業界での新しいチャレンジ、社会課題へのアプローチまで。「Design Matters」= デザインは重要だ・大いに意味を持つ というタイトル通り、デザインの力を多面的に考えさせられるイベントでした。

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