見出し画像

NTTデータ 龍神さんと「サービスデザイン」協業トーク!「本当に大事なこと」をどこまでも追い続けるために

デザインとITという異なるバックグラウンドの強みを、サービスデザインの領域で掛け合わせるべく、2018年に資本・業務提携を結んだFOURDIGITとNTTデータ。実は、2社間の協業はその数年前から始まっていました。ゲストとしてお迎えしたのは、NTTデータの龍神 巧さん。龍神さんと当社の取締役である末成は、協業開始当初からタッグを組み、数々のプロジェクトにともに挑んできました。サービスデザインの難しさ、そして楽しさとは――? 代表の田口が聞き手となり、両名の想いに迫りました。

アートボード 1 のコピー 5-100

株式会社NTTデータ 龍神 巧
ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部 統括部長
1999年入社。ITコンサルを皮切りに、企業の収益向上に資するデジタル活用企画に注力。特に、モバイル、ペイメント、デジタルマーケティングなど、企業と生活者のエンゲージメント形成領域に強みを持つ。2018年のFOURDIGITとの資本・業務提携を主導。2019年4月より現職。

「エンドユーザーの視点」に立つ。未知の試みに必要だったパートナー

田口
龍神さんに初めてお声がけいただいたのは、2015年頃でしたね。なぜ、外部のデザイン会社と組もうと考えたのでしょう?

龍神
当時私はコンサルティング部門にいて、デジタルを活用した新規事業の創出をお客様と一緒に考える立場にありました。多くの企業が、従来のビジネスのあり方に限界を感じ始めている中で、AIやIoT、ビッグデータといったデジタルの活用で、新たな事業ポートフォリオを描けるのではないか? という漠然とした期待を皆が抱いていた時期ですね。

末成
AIとかビッグデータがバズワードっぽくなっていましたよね。

龍神
そうそう。それで新しい事業やサービスの検討を進めていく中で、「ところで、これをエンドユーザーにより良く利用していただくには一体どうすればいいんだっけ?」という問いにぶつかる瞬間があったんですよね。それまでは、お客様から求められる仕様を充足するべく、いかにシステムを作りこむかが私たちの「やらねばならぬこと」。でもその時初めて、エンドユーザーの視点に立ったアプローチという、新たな「やらねばならぬこと」が加わった。さて、どうしようと(笑)。たまたま、FOURDIGITさんとはそれ以前に一度お話をしたことがあって、末成さんの顔を思い浮かべました。

末成
当時は、「サービスデザイン」という言葉がようやく言われ始めたばかりで、世の中的にもまだふわっとした捉えられ方をしていましたよね。

龍神
そう考えると、FOURDIGITさんとNTTデータの連携って、今の事業環境下でなら特段の意外性はないと思いますが、当時としては結構チャレンジングでしたね。

画像2

田口
そうですよね。社内にデザインチームを設けよう、という動きにはならなかったんですか?

龍神
ユーザビリティの観点でUIデザインを手がけるチームは既にありましたが、事業やサービスのデザインとなるとなかなか難しいだろうなと。そもそも、新事業やサービス創出の取り組み自体が、当社にとってはその当時まだ珍しかった。しかも、ユーザー視点からのアプローチとなると、1万分の1くらいの希少性でしたから。

末成
よくプロジェクト化しましたよね。

龍神
それはお客様自身が、変化の必要性を強く感じて、こちらのアプローチを受け入れてくださったからですよね。ありがたいことだと思います。

近道のないチャレンジ。全方位をカバーし合いながら、ともに前へ

田口
実際、最初のプロジェクトはいかがでした?

龍神
一言で表すなら、「蛇行しながら最短距離を走り切った」という感じですね。

末成
やっぱり、いわゆる教科書的な手順とはかなりギャップがあるなと。ユーザーインタビューで、デジタルとの距離感がまちまちなユーザーさんの声に触れて、そもそもデジタル活用のアプローチってどうあるべきなんだろう、という段階から模索したり。プロトタイプがあった方がいいのは間違いないとして、どのレベルまで作りこむのがデザインフローとして望ましいのか、というようなことも探り探りでした。

画像3

田口
なるほど。龍神さんにお聞きしたいんですけど、実際に組んでみて、FOURDIGITに対してはどのような印象を持たれました?

龍神
一緒に悩みながら走り切ってくれたと思っていて、それはとてもありがたかったですね。お互いに、線引きしすぎない関係ができていた。そうじゃなければ、決して一本道とは言えないプロジェクトを完走することはできなかったと思います。

末成
型やパターンがないから、色んな方向から予期せぬ玉が次々に飛んでくるじゃないですか。それを全部拾い集めて、テーブルに載せて解決するには、互いに線引きしている場合じゃない。関わる全員が、課題を自分ごと化した上で能動的に関わっていかないとダメなんだろうなと。「ワンチーム」ですね。この言葉もあちこちで言い尽くされてますが(笑)。

田口
「走り切る」という部分も大事ですよね。NTTデータさんもFOURDIGITも、長年システムやWebサイトを手がけてきて、End to Endなビジネスをずっとやってきたわけじゃないですか。その「End」にまで責任を持って走り切るというスタンスの共通性があるからこそ、一緒にできたのかなという気がします。

画像4

安易な汎化ができないからこそ。真の目的のためこだわり抜く

田口
2015年当初のプロジェクトについては「蛇行しながら最短距離を走り切る」というふり返りでしたが、その後複数のプロジェクトを経験する中で、その感覚がどう変わっていったのか、あるいは変わらないのか…。

龍神
今も変わらないです(笑)。

末成
そうですね(笑)。

龍神
もちろん、この間にケーススタディはたまってきていて、「あっ、ここで左に曲がったらアウトだな」ということも徐々に分かるようにはなってきました。一方で、「こうすれば必ず最短でゴールにたどり着ける!」みたいな型はどこにもないので、そこは依然として蛇行しながらなんですよね。

末成
だからこそ、メンバーがどれだけ自分ごと化できているかが問われるんだと思います。環境や前提条件はどんどん変わっていくから、そこにアジャストする上でも、オペレーションの型化云々以上に、課題を自分ごと化して向き合うことが大事なんだろうなと。

田口
それ大事。

龍神
オペレーションの型化を完全否定するつもりはないのですが、やはりそれだけでは完走に結びつかないのがこの領域なのかな、と思います。だからこそ、「本当に大事なことは何だっけ?」ということを追い求め続けなければいけないと思うし、FOURDIGITさんとはずっとその問いを大切にしながら仕事をしていきたいです。

画像5

末成
やっぱり、バッターボックスでフルスイングすることが私たちの介在価値だと思うし、だからこそ自分たちも楽しめるんだと思います。出汁にも麺にもこだわって、仕込みがうまくいかなければ、お客さんをお待たせしてでも納得いくものができるまで粘る(笑)。そんな頑固親父が営むラーメン店くらいの覚悟は持っていたいなと。

龍神
ちゃんといい出汁とらないとね。

末成
それから、複数のプロジェクトを経験する中での気づきという意味だと、実際にエンドユーザーと長く接してきた現場のプロフェッショナルがプロジェクトにいらっしゃると、ユーザー調査を経て検討に至る営みが、ものすごく有機的なものになりますよね。現場を知り尽くした方しか持ち得ない視点には、やっぱり学ぶことが多い。そういった思わぬ気づきを得られる瞬間が、個人的にはすごく楽しいです。

名実ともにパートナーへ。資本・業務提携のいきさつ

田口
2018年の資本・業務提携についてもお伺いできればと思います。色々な選択肢がある中で、最終的にFOURDIGITとの提携という判断になったのは、率直になぜだったのかなと。

龍神
まず、先ほども出ていましたが、社内に専門のデザインチームを設ける案。これは、当社の内部にいながら「システム会社はシステムを作る存在である」という認識から抜け出すのは簡単ではないと思っていたので却下。それから、M&Aでどこかのデザイン会社を傘下におさめる案。これも却下。なぜなら、末成さんを筆頭にFOURDIGITさんのメンバーと数年間やりとりするなかで、思考方法やカルチャーがまったく異なる組織が融合するのは相当ハードルが高いなと感じていたから(笑)。プロジェクトでの協働はうまくいっても、「組織」と「組織」の融合となるとまた話は別ですから。だから社内で上申する際は、適切な距離感を保ちながら、互いにいい影響を与え合って成長していける関係を作ります、という話をしています。

画像6

田口
結果的に、その選択はどうでした?

龍神
すごく良かったと思っています。ただ、2021年4月で提携から丸3年経ちますし、今後さらに影響し合い、ともに成長していくために、関係の深化につながるような新しいアクションもそろそろやっていきたいなと。もっと互いのカルチャーを知ったり、人材交流したりという機会も持ちたいですね。

田口
そうですね、同感です。

いつか、新たな世界観が立ち現れるその日まで

田口
コロナ以降、ビジネス環境やお客様の価値観の面で何か変化は感じていらっしゃいますか?

龍神
幅広いプレイヤーの方たちと話をしていると、収益面でダメージを受けている企業も含めて、OMO(Online Merges with Offline)やネットの領域に対する投資意欲を鮮明にしている企業が多い、という感覚で一致していますね。ただ、そんな機運が盛り上がっている中だからこそ、エンドユーザーを念頭に「本当に大事なこと」を立ち止まって考えてみる必要があるのかな、と感じています。

田口
デジタルの活用が今以上に進むと、そこに作り手として携わる上での社会的責任が大きくなるのは間違いないので、FOURDIGITとしては期待が半分、身が引き締まる想いが半分という感じです。
さて、今回は20周年企画ということで、最後に龍神さんに今後のFOURDIGITに期待することをお聞きできたらと思います。

画像7

龍神
二つあります。一つは、先ほどもお話しした通り「本当に大事なことは何だっけ?」をともに追い続けていきたいということ。出会った当初は、サービスデザインのメンバーは末成さんも含め3~4人だったと思いますが、今や40名近くいらっしゃいますよね。組織が10倍になっても、コアになる志を持ち続けていただきたいです。

末成
心して臨みます。一番直近のプロジェクトは、かなりの難関ではありましたが、メンバーが全員フルスイングで課題と向き合って、サービスがユーザーにとって少しでもより良いものになるよう、自分ごと化しながら手を動かし続けることができたと思っています。今後も、あらゆるプロジェクトでそんな関わり方ができるように努めます。

龍神
そしてもう一つは、この先のどこかの時点でまた新しい世界観が見えてきたら、「ポストサービスデザインはこれです」という話は早く言っていただきたい(笑)。

田口・末成
(笑)

龍神
これまでのFOURDIGITさんの事業は、新しい世界観に対応しながら積み重ねてこられたものだと思っています。そしてこの先には必ず、次なる世界観があるはず。それを、探しにいくのか、自ら創るのか。いずれにしてもFOURDIGITさんらしい方法で引き寄せていただきたいし、そこから先も一緒に仕事ができるようなアジェンダを定義できたらなと。だから、早く教えてください(笑)。

田口
ありがとうございます。その時がきたら速やかにご報告します(笑)。本日はありがとうございました!

画像8

編集・執筆 glassy&co.
撮影 吉田周平