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金持ちとの結婚をめざした勘違い女の私

私は結婚したいと強く思っていた時期があった。
条件はステイタスがあって、お金持ち。
それが女の幸せだと思っていたし、いわゆる勝ち組になれると思っていた。

その時は妥協する気なんか全くなかった。

職業では、パイロット、医者、弁護士、社長……。身につけているもの、資産状況などもとても気になった。

私は派遣社員で見た目も普通。
お金持ちの人と結婚することは高望みだと分かっている。
それでもチャレンジしたいと思った。

合コンにもたくさん行ったし、色んなパーティーに潜り込んで、たくさんの人にあった。

でも、来る日も来る日も振られてばかり。
というか、全く相手にされない。

洋服やアクセサリーにお金を使っていたため、食費を最小限にしていた。

そんな生活が、3年ほど続き、身も心も疲れ果てた私は空腹と貧血で道端に倒れ込んでしまった。

そんな私に声を掛けてくれる人がいた。
「大丈夫ですか?!」

朦朧とする意識の中で、足元の白衣が見えた。

(い、医者だ!)
(このチャンスを逃すまい)

力を振り絞って、自分の中で最高の表情で彼を見上げた。

そしたら、その人は、ただの白くて長いシャツを着た男だった。

「なんじゃそりゃー!!」
「紛らわしいんじゃい!!」

心の声が最大限のボリュームで言葉として発せられていた。これは魂の叫びであったのであろう。

周りの人は驚いて、散歩していた犬がビクッとして、振り向いてきた。

その場で意識が途絶えた私を、白長シャツ男が救急車を手配してくれたという。

そして、入院したときに、看護師さんから、聞いた。
白長シャツ男は、有名な資産家の息子で、次期不動産王だと言うことを。

私は、ゴールを間違えていたんだ。
さすがに今から、次期不動産王に擦り寄る気持ちは起きなかった。
流石にそれは節操ないから。

実質的にこれで私の婚活は終わった。

私はどこへ向かえばいいのだろう。

〈了〉 

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