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新しいことを学ぶときに使える「サンプリング勉強法」

「どうやって新しいことを学んでるんですか」と聞かれることがある。回答用の記事を書く。サンプリング勉強法と名付けてみた。

この質問をする人達の共通点として「適当にあたりをつけて学んでいく」ことへの不安がある気がしたので、そこを中心に説明してみよう。

どんなときに使える勉強法か?

・何も知らなくて、何から学べばいいかすら分からない分野
・その分野に名前がついてるのかも分からない
・「こういうことを知りたいの?」と聞かれたら「近い」「全然違う」とかは答えられる
・何が分からないかも分からないので、専門家に質問もできない

簡単な例:腹減ったけど、何を食べたいかわからないとき

新しいことを学びたいとき、「こういうことを学びたいんだけど、何から手をつけていいかわからない」ことがある。ちょっと違うけど近い例としてわかりやすいので「腹減ったけど、何食べたいかわからないとき」を例にする。

何を食べたいかを見極めるフィルターと、フィルター後の「YES」「惜しい」「No」の3つの分類があるとする。

「カレーを食べたいですか?」と自分に聞いてみる。

聞かれると、「カレーじゃないな。それは違う」とわかったりする。

「じゃあ、みかん?」と聞かれると「惜しい。果物かも」と自分の意見がはじめてわかってくる。サンプリング勉強法は「問われると、自分の考えがわかる」という特徴を活用している。

これで、辛いものが食べたいわけではない。どうやら果物らしいということはわかってきた。ここでフィルターのバージョンアップをする。果物で、辛くないものが食べたいようだ。

じゃあ、みかん以外の違う果物をフィルターに入れて、何が食べたいのかを探っていく。イチゴを食べたいのかな?んーなんか惜しいけど違うな。

何が惜しいのかを考えて、フィルターをアップデートする。果物だけど、みかんとイチゴが食べたくない、惜しい理由を考えることで、フィルターをアップデートしていく。みかんは皮をむくのが面倒くさいし、イチゴみたいな甘い物が食べたいわけじゃない。フィルターをアップデートする。

もっと食べたい果物候補をフィルターに投入していく。はっさくを入れてみる。

はっさくは、味としてはまさに食べたいものだ!ちょっとすっぱい果物が食べたかった。でも皮をむくのが面倒くさいから、はっさくも「惜しい」にカテゴライズされる。

ただ、皮を剝くのは、別に自分でやらなくてもいい。よって、既に「皮がむかれたはっさくを食べたい」が、最終的に自分が見つけたかった答えになる。自分で剝かずにどうやって食べるかを調べていけばよい。「むき甘栗」の、はっさくバージョンとか。

画像はwikipediaより むいてあるはっさく

最終的に、皮がむいてあるはっさくがフィルターを通してOKに入った。

サンプリング勉強法とは?

いったんまとめる。サンプリング勉強法とは、何をしていいかわからないぐらい曖昧な自分のフィルターに、個別の事例(サンプル)をぶつけていって、だんだん明確にしていくプロセスのことだ。

あるジャンルを知りたいとき、その分野の本を10冊読め、とかも同じ

10冊読むと、複数の本に書かれている内容が、共通点としてフィルターに追加される。ただ、これは学びたいジャンルがわかっているときしか使えない。

フレームワークもフィルターを強化する参考になる

いろんな考え方(フレームワーク)を知っていれば、最初からフィルターが強化された形でスタートできる。ただ、自分の知ってるフレームワークの中から無理に当てはめると、実は使わないほうがよかった、みたいなことも発生する。

私の事例:上場企業の情報開示周辺

私は10年ぐらい人事をやっていて、2年前ぐらいに管理部門の責任者になった。今働いている会社は上場している。会社の情報を外部に情報公開していく必要がある。情報公開の施策で一貫した判断基準が必要である気がした。でも何から勉強してよいか分からない。これはサンプリング勉強法の条件に当てはまる。

・何も知らなくて、何から学べばいいかすら分からない分野
なにもわかってない。何からやればいいかもわからない。

・その分野に名前がついてるのかもわからない
IRとか財務とか、それっぽいけど、ドンピシャじゃない気がする。

・「こういうことを知りたいの?」と聞かれたら「近い」「全然違う」とかは答えられる
これは答えられる。

・何が分からないかも分からないので、専門家に質問もできない
相談内容がわからない。誰に相談して良いかもわからない。

この段階でのフィルターはこんな感じだ。

まずはいろいろ本を読んでみた。例えばこの本を買った。CFOとか近そうだし。

これは現段階だと参考になるが、2019年時点だと、ちょっと違った。CFOに求められる内容が網羅されているが、網羅されて過ぎてて「ここがポイントだ」という軸を探すのには役立たなかった。フィルターをアップデートする。

次に読んだ本。今回のお題に求めてるものではなかったが、ただ、会社の状態を会計をつかって把握する方法という意味ではすごくよかった。

「惜しい」に入れた。会社の状態を公開するときの軸が知りたいのだろう。ただ、会社の状態を会計を通して理解する方法も、自分はわかってないことに気がついた。

その後、いろいろ適当に本やサイトの情報を見ていたら、ふと目にとまったフレーズが出てきて「これだ!」とすぐにわかった。

引用元

上場企業が情報公開を考える時の軸として知りたかったのはこれだった。

普通に会計報告をやるだけではその企業の特徴をすべて伝えられない。これを前提に、情報公開時にどのような工夫をするか

これぐらいの抽象度の軸があれば、そこから個別の話は考えられる。上のサイトに元ネタの本が紹介されていた。

この本には「統合報告書」と呼ばれる、企業の非財務情報も含めて情報公開する方法が書かれていた。そんな専門用語も知らなかった。上場企業の情報公開の分野で、このあたりはど真ん中のテーマだろう。ある程度の期間通用するテーマであることがわかった。

フィルターがアップデートされた。何のキーワードで学んでいけばいいか、分かってきた。「非財務情報」とか「統合報告書」になる。

これで、最初のサンプリング勉強法に使える条件のうち、以下の二つは消えた

・その分野に名前がついてるのかもわからない
非財務情報の情報公開(手法としての統合報告書)というジャンル

・何が分からないかも分からないので、専門家に質問もできない
非財務情報の情報公開(手法としての統合報告書)について聞きたいという軸があれば専門家も探せる

ここまでいくと、エーザイさんの開示が優れている、みたいなことはすぐに見つけられる。

既存の知識とつなげることで、過去の知見が使える

10年やってきた人事の知識ともつながってきた。人事における非金銭報酬の話が、財務における非財務情報に近いだろう。これが頭の中でつながれば、人事の知識が今回学びたかったことに応用できる。

私の事例は以上で終わり。

ほとんど人は大量の「なんか違う」に耐えられない

今回省略しているが、実際には「これだ!」が見つかるまで半年以上かかっていて、この期間がとても不安なのだ。大量の「なんか違う」が発生するし、意味があるのだろうか、と不安になる。

慣れてくると、「いつか見つかるだろう」と少しは楽観的になる

何度かよく分からないことを学んでいくと、「いつか見つかるだろう」と少しは楽観的になれる。でも「少しだけ」だ。私もなんどかこの状態を経験しているが、毎回不安だ。

「サンプリング勉強法」的な動きをしている知り合いがいると、心強い

知り合いに似た人がいると良い。いつもなにか「よくわからないこと」を知ろうしている人だ。たまに話してお互いの「わかんないんだけど、ちょっとわかったことがある。たぶんこういう感じだと思う」を交換すると面白いし、不安感も少し減るかもしれない。

今回は以上です!

おまけ:配信しながら書いてみた

2時間ぐらいで書いたようだ。

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