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【詩】良心の欠片

日の入りとともに変化してゆく景色
よく見えないわ
流れの悪い人通りの中
あなたを見つけた
携帯を胸ポケットにしまい、ひとたび見せた
あなたの表情は誰に知られることもないはずなのに
今夜はわたしが悪者かのような気分にさせるの

影を落とした車内
窓から差込む明かりのせいかしら
無言でシートを倒す姿に諦観の境地さえ感じて
ただすることもなく
時折り走る鈍い痛みが現実を教えてくれる
過ぎゆく時間が愛の度合いを証明していくような気がして

頭がおかしくなりそう
図々しく事情を想像するなんてことまでしてしまう
なぜかしら、よく知りもしない他人のことを信じるなんて
馬鹿げてると思うでしょう
ああもう、いいから早く出てきなさいよ
そう思った

あなたを私は不幸にするでしょう
憎いでしょう 恨むでしょう
あなたは私の不幸を願うでしょう
いいわ だって 私、強いもの

点滅する青信号 一人幅のエスカレーター
薄汚れた革靴 見慣れた街並み
鳴らない足音 穴のあいた新品の鞄
全部、嫌いなのに
今日も週刊誌で勉強するアングル
見たくもないゴシップが知となり刻まれてゆくの

突然の来訪者
前に資料で見た顔ね
少し腫れた目元からいくつもの選択があったかのように主張されて
何を言っているのか
霊にもならない支離滅裂な言葉でさえ
ここにいる誰もが避けることすらできない

頭がおかしくなりそう
記憶を無くしたみたいに同情するなんてことまでしてしまう
なぜかしら、よく知りもしない他人の家庭を壊す手助けが仕事だなんて
馬鹿げてると思うでしょう
ああもう、これだからがきは嫌いよ
そう思った

あなたを私は不幸にしたでしょう
憎いでしょう 恨むでしょう
あなたは私の不幸を願うでしょう
いいわ だって 私、強いもの

矛先の行方がわからなくなったとき
一番にわたしの顔が出てくるように
良心の欠片を捧げましょう

詩あるいは詞


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