『いきなり本読み!』観劇感想
『いきなり本読み! in 東京建物 Brillia HALL』
@池袋ブリリアホール
2021.10.2 17:30開演
(ネタバレあります。といっても1度きりの公演なのでネタバレ困る人もいなさそうですが…)
ハイバイの岩井秀人さんの企画で、俳優に脚本を配って最初に読み合わせする時の面白さを直に伝えよう、的な企画。wowowで3回ほど観たけど、生観劇は初めて。
ハイバイの『ワレワレのモロモロ』(だったと思う)で岩井さん演じる無茶苦茶な演出家に苦しめられる劇団員、というメタ的な話があって、とても笑ったのを覚えている。この企画はあそこまで無茶な指示はしないけど、ニュアンスを伝えるための言葉遣いとかが面白く、それが俳優に伝わって演技が一変するのも楽しめる。
脚本はヨーロッパ企画の『来てけつかるべき新世界』。近未来の大阪・新世界が舞台の、テクノロジーの進歩に翻弄される人たちを描くコメディだ。
俳優は荒川良々さん、水川あさみさん、藤井隆さん、池谷のぶえさん(舞台並び順)。メンツだけで既に面白そうで、その予見は的中しました。
まず荒川さん。
素だと結構怖いというかとっつきにくい雰囲気ある。客に愛想を振りまくような感じはないし、サービス感のある演技はしない(笑わせにいったりしない)。職人肌な感じ。
もちろん巧い。
特にすごいと思ったのは最後のシーン。台本自体がそうなんだけど、「ここは感動させる」というシーンになった時の本気力が半端ない。マジで妻を亡くした夫が妻(の声)に再会したかのようだった。
水川さん。
この人関西のかただったんですね。知らなかった。
ロングヘアのイメージだったけど、ショートで驚いた。美しい人です。
マナツを一番可愛く演じていた。関西らしい意地悪な演技も上手かった。
当然関西弁は自然なんだけど、ちょっと違和感ある時があって、関西出身で東京が長い自分も「分かる,そうなる」と勝手に共感していた。
藤井さん。
脚本の方向性を感じ取るのがめちゃくちゃ速い。
キンジが登場するとき、「スベリキャラ」ということを一瞬で見抜いて、そう演じていたのに驚いた。飲み込め速いし対応速いし、頭の良さが滲み出てる。
サービス精神の旺盛さは流石。周りの演者を持ち上げ、お客さんを楽しませ。やはりコメディアン。
池谷さん。
神なの? という。
猫ニャー時代からのファンなので、巧さと引き出しの多さは知っていたけど、今回も圧倒的な能力をしれっと発揮していた。
まぁ、コケカキイキイを演じられるのは世界中に池谷さんしかいない(『ゲゲゲの先生へ』)しね。
最後のシーンは声にエフェクトかかったけど、池谷さんならエフェクトなくてもいいのではと思ったくらい。
ちなみにエフェクトかけられることを聞いた池谷さんが「すごーい」て言ってたのが可愛かった。
ーーという感じで、役者さんがみんな上手いので、岩井さんもあまりダメ出しを出したりできず、終始押され気味、という印象。
本来この企画は、一度演じた後に岩井さんが(そんなに厳しいものではないけど)役者さんにダメ出ししたり、演技の方向性を指示したりして、そこで変化していくのが楽しいんだけど、今回はあまりそういう感じにはならなかった。
配役変えてもう一度、という楽しみはあったけど、一度目の演技が良すぎてそこで(一種の「正解」が出てしまい)キャラが定着しちゃう、みたいなこともあった。
関西の人が関西を舞台に関西の人間を描いた関西弁の脚本だった、というのも大きいかもしれない。
基本的にベタなつくりになっているので、いい意味でキャラも了解しやすかったように見えた。ベタというのは作品全体のことではなくて、シーンにおけるキャラの役割とか、パロディ的なモチーフとか、そのへんが基本的に王道の喜劇になっているので、既知の了解事項が多いのではないかと感じた。
あと、役者さんに関西の人が二人いたのも大きいかも。
今まで観た『いきなり本読み』に比べて、「本読み」の面白さは少なかったけど、役者さんの演技自体、脚本の面白さ自体を楽しめた。生だからかもしれないけど。
以下、細かい感想
・役者さんって声を出すだけでも表情の演技をするんだなぁ。
・新世界を「ドヤ街」と言ったり(新世界と釜ヶ崎は近いが違う街、新世界に簡易宿泊施設はないと思う)、脚本に普通に「キチガイ」と出てきたり、wowowで放送できるのかなぁ、と後で心配に。
・近未来を舞台にした脚本なのにあまり古くなってなくてすごい(今なら言わなさそうなのは「ブログに書くぞ」ぐらいか、嗚呼ブログ文化の衰退…)。
・ヨーロッパ企画の公演は観ていないけど、この役はあの人がやっただろうな、と予想して楽しんだりした。再演あったら観たい。
・TVで観てても思ったけど、わりとメジャーな台本を使うので、役者さんの中には公演自体を観たことある人いるのでは。でもまぁ台本として読むと初対面感はあるのかも。
・岩井さんが画面上で見る台本(テキストデータ)に役者さんに配られてる紙版台本のページ数が反映されてないのは事務方のミスですね(笑)。広島の挨拶文ノリづけ事件と同じですね。(あれはフェイクニュース)
・台本にルビあった方が読みやすそうだけど。
・いろいろ書いたけど、終始笑いっぱなしで役者さんの凄さを堪能できた。
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