なんでCDOが必要なんだろう?

 初めまして。バルたんと申します。
 20年ぐらい、企業のIT活用に関連してコンサル/サービス開発/導入・定着をやってきました。

 本当は違うテーマで最初のエントリーを書こうと思っていたのですが、うまくまとめられずに煮詰まっているので、サクッとかけそうな内容でnoteの最初のエントリーを書こうと思います(始めることが肝心)。

「CDOって流行っているけど、みんな苦労しているみたいだよね」

 今日、雑談の中で言われてハッとした言葉です。

 確かに世の中はCDO(最高デジタル責任者)ブームで、いろいろな会社でCDOを任命したニュースを見かけますし、CDO Summitというイベントも開催されたようです。

 CDOのミッションといえばデジタルトランスフォーメーションの推進なので、CDOが苦労しているということは、いろんな会社でデジタルトランスフォーメーションがうまく進んでいない、ということになると思うのですが、考えてみれば当然の帰結なのではないかと思い至りました。

 そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX)とはなんでしょう?
 巷では、OMOとかRPAとかAIとか、色々なバズワードが飛び交っていますが、

 デジタル化=コンピュータなどのデジタル技術をビジネスに取り込むこと

と定義すると、コンピュータが生まれて以来、ビジネスの世界はずっとデジタル化が進められてきているわけです。

 一番最初は、会計処理に代表される数値計算への活用。いわゆる「電算化」という言葉で語られてきた世界です。

 続いて90年代中頃からコミュニケーション手段がデジタル化しました。電話やFAXがメールになり、足で稼がなくてもWebでかなりの情報が収集できるようになり、Amazonに代表されるように取引もオンラインで完結するようになりました。この流れはチャットなど新しい技術や電子請求などルールの改正を伴いながら今も進行中です。

 さらにコンピューティング能力の発展・低価格化とデータがデジタルデータとして蓄えられてきたこととによってブームとなったビッグデータは、これまで勘や経験、ノウハウといった暗黙知として属人的に蓄えられていた知恵を、データ分析によって誰でも手に入れられる世界をもたらしました。
 この第三の波も、スマホをはじめとする大量のデバイスが世の中に溢れつつあることで、入手できるデータの種類も量も拡大しつづけており、AIなどの強力な解析技術の進展と合わせて、日々進歩を続けています。

 デジタルトランスフォーメーションという言葉を、最新の技術によってもたらされるものと考えている人が多いのではないかと思いますが、上記のようにコンピュータ技術の進歩に合わせてビジネスをアップデートさせていくことと広く捉えるとこれまでもずっと行われてきたのです。

 例えば、「みーんな悩んで電子メール」という本には、急速に普及しつつある電子メールを自社導入しようとしたが投資対効果が示せずに困った、といったことが書かれています。
 それまでも電話やFAXでコミュニケーションは行われていたわけで、それをメールにしたからといって劇的にコミュニケーションが円滑化するわけではなく、定量的にどれだけの効果があるかを示すのは難しいといわれれば確かにそうです。ほんの20年ほど前はそんなレベルでデジタル化に悩んでいたのです。

 それでも、今では仕事のコミュニケーション手段としてメールは当たり前になり(もはや時代遅れという話もありますが)、注文や問い合わせがPCやスマホで完結せずに電話やFAX、郵便を使わなければならないという企業は、ほとんどなくなりました。
 どこの会社も、自分たちの業務をICT技術の発展に合わせて進化させてきているのです。

 大きな意味でデジタル化は、SDGsとか、米中関係の悪化とか、タピオカブームとかと同じように、追従しなければならない競争環境の変化の一つでしかありません。
 なのに、どうして「最高国際関係責任者」や「最高トレンド責任者」はいないのに「最高デジタル責任者」ポジションの設置はブームになるのでしょう。
 CDOというポジションに、デジタル化に対する経営者の距離感、あるいは本気度が現れているようで非常に残念な感じがします。

 もちろん、既存組織は今ある事業を推進するだけで手いっぱいなので新しいことに取り組む担当を新たに増やしたいとか、既存チャネルとカニバるデジタルチャネルを組織を分けて競争させたい、といった理由でデジタル推進組織をつくるのは、普通にあっていいと思います。
 また、将来のデジタル化に向けた研究開発や実験・評価検証などは、目の前の事業を考える組織とは目線も時間軸も違うので、R&Dに近い別組織が実施するというのもアリでしょう。

 ですが、いずれも今ある事業を次の時代に合わせてアップデートしていく過程のやりかたの話であって、それはつまりCEOとかCOOのミッションという点は変わらないはずだと思うわけです。
 あるいは、企業の情報システムの責任者であるCIOや技術開発の責任者であるCTOのミッションにデジタル化の推進が追加されたというのであればまだ理解できます。
 業務も情報システムも技術開発にも責任を持たず、デジタル化が推進できると考えているのであれば、それは何をデジタル化しようというのでしょう。

 なんとなく、船頭を増やして山を登ろうとしている構図、あるいは対岸から見物している構図が思い浮かぶのは、ひねくれ過ぎでしょうか。
 もし、これをお読みいただいたあなたが、変革を起こすために敢えて栗を拾いにいこうとされているのなら、その勇気に敬意を表するとともに、多少なりとも参考になりそうな提供していけるように精進していきたいと思います。


 仮説:新たにCDO職を設置するような会社はDXがうまく行かない

この仮説か棄却されることを願っています。
(ちなみに「最高データ責任者」や「最高デザイン責任者」もCDOですが、上記の仮説には関わりませんのであしからず)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?