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放置中

風呂場に居た虫を叩き潰して殺した。
自分は虫を絶対に触りたくないし何かを殺すのも嫌なはずで、そこそこ大きさを伴う物になればなるほど、殺したときしばらく手が震えて興奮状態に陥っているような自覚もある。でも風呂場は他の存在を許せない場所みたいで、殺すための道具もなくて、だから手で叩き潰した。それにぼくはどうしてか状況や暗示などでどうにでも自分の苦手をそうでもないことにしてしまえる傾向が幼い頃からあったから、この時もそうだったかも。
虫はいい塩梅に原型を留めたまま壁に張り付いて死んだ。風呂場の壁。白い壁によく見える。
それで、ああそういえば湿気が多い場所だなと思って、本当に腐敗菌などがついて腐っていくものかなと考えたので、ぼくはそのまま虫の死んだのを洗い流さずに、いまもそれは風呂場の壁に張り付いている。
うちはぼくが家事全般をやっていて、風呂場の掃除もぼくがやっている。ぼくが洗い流さない壁をそのまま残すのは容易なことだし、当然そのままで在る。
今日で一週間か、一ヶ月か、それなりの時間が経過したのにまだ虫は液状化することもなく形を留めている。液状化って結構時間が掛かるんだ。虫の大きさでもこれなのだから人間なんかは、大層長い間そこに置きっぱなしになるんだろう。
近付いてまじまじと見たわけではないからわからないけど、少しずつくらいは腐ってるんだろうか。顕微鏡などで拡大したらわかる?そこまでしたくはないな。


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