#5 ビブリオエッセイ。ただし二次創作
書きたかった話があったのに、書けませんでした。
ひとえに、私の能力不足が原因です。
漠然としたイメージがあるのに、それを文字にして出力しようとすると、筆が止まってしまう。
そんな良くある現象に襲われました。
正直、悔しいです。
その書きたかった話は、絶対に書いてnoteに投稿しますけど、今回は違う話を書こうと思います。
ネット小説って質の低いジャンクフードみたいな感じなんですけど、時たま、「これが商業化されていないの勿体無いな」、「ライトノベル業界の相場を余裕でぶっちぎってやがる」と感嘆させられる小説を書いている作者に出会えます。
今日は、その作者が執筆されているある小説について、紹介していきたいと思います。
ルシエドさんの『夏空の下、ウルトラマンは、友をいじめた子供達を虐殺した』です。
https://syosetu.org/novel/155396/#
……ッスー、ウルトラマンの二次創作小説です。
いやぁ、物騒なタイトルですね!
でも、めっちゃ面白いです。めっちゃオススメです。
この物語は、村ぐるみで虐められていた少女と、心優しい少年の出会いから始まります。
少女の名前は、郡千景。
少年の名前を、御守竜胆と言います。
千景の父親は家庭を顧みないクズで、そんな男に嫌気が刺した千景の母親は、他の男を作って不倫をしました。
田舎の村ですから、そんな醜聞は、当然すぐに広まります。
結果、千景は“クズの父親”と“淫売の母親”の“娘”として扱われることになりました。
クズならいくら虐げても良い。そんな歪んだ正義感から、千景は酷いイジメを受け、絶望します。
それに待ったを掛けたのが、余所からやってきた少年、御守竜胆です。引越してきたばかりの竜胆は、村の空気に染まっておらず、そして何よりも、「悲しむ者を決して見捨てない」光のような心を持っていました。
しかし、竜胆が戦う敵は、形のない常識です。
千景を虐めることは、村の常識では“正しい行為”であり、そこに割り込み、否定する異物は、村の人々にとっては明確な“悪”でした。
結果、竜胆の行為は何の意味も成さず、千景が虐められる現状を変えられない現実は、まだ小学生だった竜胆の心を鑢のように削り続けます。
そして、最悪の事件が起こりました。
竜胆の存在によって、いじめっ子達の悪意が暴走し、千景の身体に一生残り続ける傷を付けようとしたのです。
止めようとしても、体を他の奴らに抑えつけられていて、身動き一つ取れず、ただ竜胆は千景が傷つけられる様子を眺めていることしかできません。
そうして、自らが燃え尽きるほどの怒りと憎悪に飲み込まれた竜胆は、遺伝子に眠るウルトラマンの力を呼び覚まし、『ティガダーク』として覚醒。
憎悪によって暴走した竜胆は、千景をいじめる子供達を殺し、千景をこれまで虐めてきた人たちをウルトラマンの力で虐殺しました。……自らの妹をも巻き込んで。
ここまでがプロローグ。
同時刻、人類は、人の傲慢さに怒りを抱いた天の神によって、滅ぼされようとしていました(ちなみに、天の神とは、一神教的な神ではなく、日本神話の天津神の集合神です)。
ウルトラマンが宇宙から助けに来ましたが、まさに焼け石に水。
二年の月日が経つと、世界中のあらゆる人々が虐殺され、残された人類は四国の四百万人のみになってしまいました。
四国を守るウルトラマンは五人いましたが、二人が消息不明。一人が重症になるまで追い詰められます。
ジリ貧になった人類は、二年前に確保し、封じられていたティガダークこと御守竜胆の封印を解き、戦場に出すことを決意しました。
ここからが本編です。
闇に堕ちた竜胆は、多くの人を殺してしまった贖罪の為に、二人のウルトラマンと、ウルトラマンの隣で戦う五人の勇者と共に戦います。
で、その戦場なんですけど、めちゃくちゃ過酷です。
もう敵があまりにも理不尽過ぎて、仲間がバンバン殺されます。
ウルトラマンセブンの名言に「血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ」という台詞がありますが、まさにそれです。
走っても走っても、戦況は楽になるどころか悪化していき、足を止めた瞬間、人類が滅ぼされる理不尽なマラソンです。
竜胆はその戦いで仲間を殺される度に、その死を悲しみ、殺した敵を憎悪し、彼らの死から大切なものを受け継ぎます。
私がこの物語を好きだと思う理由の一つに、竜胆の死に対する向き合い方があるんです。
竜胆は決して死者を蔑ろにしません。
人の死を決して無価値にしないという決意。
死した誰かから、何かを受け継ぎ、次に繋げていこうとする信念。
その決意と信念によって、竜胆は新たな力を得て、その力で仲間を、世界を守ります。
まるで、たとえ誰かが死んだとしても、竜胆の心の中で、その人がずっと生き続けているかのようです。
死が決して終わりではないこと。
死しても、残した物があり、受け継いでくれる者がいるのならば、それを受け継いでくれた人の中で、人は永遠に生き続けることができる。
人生とは、もしかしたら、死者からのバトンを受け取り、次に繋げるリレーなのかもしれません。
この小説を読んでいると、そう思わされます。
まだまだ、書き足りないことは沢山あるのですが……そうすると今回の話のテーマからズレてしまいそうなので、ここで終わりにしておきましょう。
この文章を読んで、『夏空(略称)』を読んでくれる人が現れたなら、それに勝る喜びはありません。最後に、御守竜胆の台詞の中で、私が最も好きな台詞を書いて終わりにしたいと思います。
「大切な人が死んで、悲しみ、俯き、取り乱すことが弱さなら――」
「――その弱さは、愛すべきものだと思う。俺は、その弱さを愛する」
「強く在る責任と義務は、全部俺が引き受ける」
それでは、また。
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