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『芸術的創造は脳のどこから産まれるのか』

ケンブリッジ大学で音楽の神経科学を研究しているだけあって、脳の創造性について脳神経学、計算論、人工知能、心理学他様々な文献から考察されています。音楽が中心となっていますが難しい理論はなく、創造性やひらめきの構造について脳科学の視点からわかりやすく解説されているので、音楽に限らず新規事業のアイデア創出にも十分適応できると思いました。    広告の世界でも聞くイギリスの社会学者グラハム・ワラスの『思考の技術』「①準備(Preparation)→②あたため(Incubation)→③閃き(Illumination)→④検証(Verification)」を引用していたり、幅広い知見を統合して解説しています。
個人的には譜面も読めずにジャズの即興演奏をしている自分の脳で何が生きているのかについて明確に言語化されていたので自分の演奏を客観的に理解することができました。『自由な即興演奏は間違いという概念や明確な目標がありません。つまり、楽譜通りの演奏に比べると実行機能の必要性が弱いのです』とありました。これは前頭葉の実行機能<Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)>つまり、ロジカル思考が抑制され、大脳辺縁系の偏桃体から衝動や本能に関わる情報と統合され感性や感情をコントロールしながら表現することでより直感的に情緒的に表現しているということになります。

アート思考の本の多くはアートとビジネスの関係、または、アートを外のものとして如何に内在化させるか?アート思考がなぜ必要か?どう活用するか?が中心ですが、なぜ創造性が生まれるか?について脳生理学からは深く書かれているアート思考の本はありません。この本の中では、芸術性を内面から沸き起こる潜在的で内発的な不確実性を探求することで既存の知識から逸脱しながらも絶妙なバランスで社会に新しい価値をもたらすものとしています。まさに、アート思考です。では、それをどうやって生み出すのか?

実はここが大切なところですが、文章で説明するのはなかなか難しいところでもあります。そこで、自分のセミナーではワークショップを通じて、バイアスを自覚することから始めて、脳の中で起きていることを実際にシュミレーションしながらそれぞれの人に内在するアートマインドに気が付けるようにしています。
自己肯定感や拡散的思考と収束的思考、内発性モチベーションと外発生モチベーション、顕在的知能と潜在的知能などアート✖️デザイン思考入門セミナーのワークショップで実践しているので、セミナーを受講した人はこの本でより深く理解できると思います。また、この本を読んでアーティストではないけどアート思考を体験してみたい人は是非セミナーにお越しください。

芸術的創造は脳のどこから産まれるか?』 (光文社新書) 大黒達也 


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