見出し画像

CD 『74分間の信越トレイル』 ができるまで

2022年の7月に信越トレイルを歩くにあたって、「YouTube のネタにできたらいいな」くらいな気持ちで録音機材を持っていきました。で、歩き終えてみたら7時間を超える音を録っていて……これ、1日あたり1時間ほど、ボーッと突っ立っていたことになりますね(笑)

録音風景

雨続きのスルーハイクで大変でしたが、いろんな方の親切に触れたりもして「ああ、いいトレイル(旅)だったな」と思えて、「信越トレイルがこれからも続くといいな」という気持ちが芽生えたんです。

そこで、「録った音をCDにして売上を整備協力金に充てよう」と思い立ち、『74分間の信越トレイル』がスタートしました。もう、仕事でなく趣味ですね。

歩くための録音機材

録音が本業なので、音質にこだわりたかったのが本音。でも、機材が重いと歩くことを楽しめないし、誰かに頼まれて録っているわけでもないので、音質よりも機動性を重視した録音システムを考案しました。

録音機材を収めたサコッシュを木にぶらさげる

サコッシュに収めた機材は約290グラム。録りたいときにすぐ録れるからこそ、7時間超の音を集められた気がします。マイクを三脚に固定する選択肢は無かったので、木に吊るすとか、ただひたすら息を殺すとか、そうやって録音したんです。

音の選定

作品タイトル『74分間の信越トレイル』 の「74分」ですが、この中途半端な数字は何かというと「CDという規格に収めることのできる長さの上限」です。正確には74分43秒(だったかな?)で、規格を外れると80分程度までは収録できますが、タイトルとしても面白いなと思って「74分」の作品に。で、7時間超の音から削ぎ落としていきました。

すべての音を聞き返し、数回にわけて選定を進めた

編集の途中で問題発生。農村を歩いていたときに録った「防獣・防鳥アラーム」の品番を控え忘れていたんですよね……「この音は使ってもいいのだろうか?」。で、検索を駆使して製品を探し当て、開発会社さんに電話したんです。経緯を説明して電話口で音を聞いていただき、「それ、ウチの製品です!」と判明。音使用を快諾くださり、無事CDに収録となりました。


ジャケット・デザイン

「ロングトレイルを歩いたことのあるデザイナーさんにお願いしたい」という思いでネット上を探し回り、Twitterでたまたまフォローしていた bonbon (大窪美咲)さんに絵や題字をかいていただきました。依頼したら、奇遇なことにちょうど信越トレイルを計画されていたようで、実際に歩かれてからの制作となり……素晴らしいタイミング!

細かな注文はせず大窪さんにお任せすると、できあがってきたのは、信越トレイルの代名詞でもあるブナ林をモチーフにした絵。

水彩で表現した樹皮が面白いでしょ?

ただ、大窪さんはデザイナーでななく画家さん。なので、「入稿データはココナラで外注かな」と思って何気なくツイートしたら、以前にゲーム音楽収録でお世話になった だよタンさんが引き受けてくださることに! スペースのわりに情報が多くデザイナーさん泣かせかなところ、スッキリまとめていただきました。

翻訳は、ココナラで WordWizard さんに依頼。私の英語力と DeepL だけでは心許ないですからね。海外のハイカーさんにも届いたらいいなと思って、ひとまず英語のみ併記することにしました。

音づくり(マスタリング)


“自然音もの” って、あまり加工しないのが定石。ただ今回は、録音機材の S/N がそれほど良くない(いや、決して悪くはないですよ!)――つまり、静けさが録れなかったのです。どういうことかというと、静まり返った森の音を録ろうとしても、機器自体が持っているノイズがそれを上回ってしまって、「静けさ」として表現しきれない――ということは、微細な音が聞き取りにくいわけです。

そこで定石を破って、小さな音を目立たせる処理を施しました。逆に大きな音については、その新鮮さというか鮮烈さが少し犠牲になってしまうのですが、「カーオーディオやラジカセでも楽しめる音」を意識してマスタリングしています。

販売窓口

まず、私からの直販としてネットショップ(STORES)を立ち上げました。ここでのご購入に限り、CD1枚あたり 300円を信越トレイルの整備協力金に充てます。整備協力金は他の小売店・販売者さんに強要できないことなので、「CD購入のついで信越トレイルの維持に協力したい!」という方は、ぜひネットショップで買ってくださいね(2022年10月現在、在庫はゼロになっています)。

また、取り扱ってくださる販売店様を広く募集しています。基本的には卸価格での買い取りとなります。諸条件はお気軽にお問い合わせください。

そんなこんな、いろんな方の協力を得て、2022年12月発売予定です。

(実際にはバーコードが付きます)

音の数々は、苗場山から斑尾山へと流れて行きます(似たような音が続く場合には多少前後させたりと、一部例外あり)。歩いたことのある人は、「ああ、こんな情景もあったなあ」と当時を思い起こすかも知れません。これから歩く方には、「どんな風景んだろうなあ」と実際のトレイルを楽しみにしながら聞いていただけたらと思います。また、夏の雨の多い時期に録っているので、春秋に歩いた方には違った季節を脳内で楽しんでいただけることでしょう……たった74分でスルーハイクできますよ!


Special thanks to(CDに掲載スペースなく、不本意ながらこちらに)

信越トレイルクラブ、故・加藤則芳、整備ボランティアのみなさん、トレイル・エンジェルのみなさん、いいやまブナの森倶楽部、苗場山頂ヒュッテ、丸山荘、かたくりの宿、吉楽旅館、光ヶ原高原キャンプ場、福農産業株式会社、Steve Jones、斑尾山の麓まで迎えにきてくれた両親(敬称略)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?