一番怖いのは死ぬことじゃない
わたしが一番怖いのは『死』じゃないんだ、と、死にかけて気づいた。
意識が遠のいたのはあまりに急で、痛みが段々ほわーんとして、みんな泣かないで〜、頑張れってもう言わないで〜ってくらいにしか思わなかったけど、
しばらくICU、HCU、長い入院生活を通し、
「みんなの時間や体力をたくさん使ってもらって、わたしはなにもしてない」
ということが、わたしにはとても辛いことなのだと気付いた。
普段からわたしは、結構みんなに助けられるタイプで、これまでもたくさん支えてもらったことはあったのに、
"してもらうのが辛い"
そんなことを思ったのはほぼ初めてだった。
父と妹はまともに休みの取れない職場なのに飛行機でトンボがえりで通ってくれた。
母は田舎育ちで電車にも乗ったことがないような人なのに、慣れないわたしの一人暮らしの家に泊まり、満員電車に揉まれながら毎朝来てくれて、面会時間の終わりまでいてくれた。
友人は貴重な休日をわたしのお参りやお見舞いに何時間も費やしてくれた。
ここまでの愛を感じることって、皮肉にも初めてだった。
起き上がることはできるようになったわたしは、便箋を買ってきてもらい、お手紙を書くことにした。
その時のわたしができることは、「お見舞い無理しないで」と遠慮することの他には、感謝の気持ちを文章にして渡すことくらいしかできなかったから。
出会った時のこと、ふたりの思い出、ずっと元気でいてほしいこと、まるで遺書のようなラブレターだったと思う。
退院する時は、主治医にもお手紙を書いた。
いつも優しくしてくれた看護師さんには直接、どんな言葉が、どんな行動が嬉しかったか伝えて、ハグして別れた。
してもらったことにはとても返しきれないけど、気持ちは伝わったかなと思う。
退院してからは、家族にはプレゼントを。
内緒だけど、わたしが一生に分けてあげる予定だったものを、少し早送りしてあげているつもり。
お友達にはたくさんのお土産を、
先生にも時々(大袈裟なものは貰いづらいだろうからあえて柚子胡椒の小瓶とか(笑))
こんなに元気に動けるようになったよ、ありがとうって気持ちを込めて。
やっぱり、恩返しができるって、自分の気持ちも満たされるし、素敵なことだと思う。
抗がん剤に耐性がきて癌が進行するにつれ、また体力が奪われ、精神的に追い詰められ、貯金も減っていき、余裕がなくなるだろう。
だけどその時、またみんなが助けてくれるのは、もう間違いない。
わたしは有事に、どんな時でも恩返しができるように、これからでも備えなければと思った。
それが出来ないのが一番怖いんだもの。
もちろん、生きていてくれるだけでいいんだよ、ってみんなは言ってくれるんだろうけど。
そんな優しいみんなだからこそ、わたしはなにかしてあげたいんだよ。
そして、その優しさを、他の人にも渡す余裕も失いたくない。
応援したいと思った人にサポートできる人、ニュースを見て募金が出来る人、やっぱり素敵だもん。
平凡に生きてきたわたしがここからなにかを生み出して、育てて、還元するのは容易いことじゃないだろうけど、
自分自分!で終わる人生は嫌だし、やはりちゃんと誰かにとっての何者かでありたいのだ。
皆さんが一番怖いことはなんですか?
人生第二章を歩むための、なにか"きっかけ"を与えていただけたら嬉しいです!あなたの仕事や好きなことを教えてください。使い道は報告させていただきます。(超絶ぽんこつなので遅くなっても許してください)