【フィクション】怒りました

「ちょっと!冗談では済まないだろこれは!」



誰もが平穏に過ごそうと努めるこのお昼休みに平穏とは程遠い不服を申し立てるのは、私だ。しかし、これは私自身のお昼休みを平穏な時間にするための努力でもある。私とてこのような殺伐とした状況は好きではない。むしろ午後に備えるための貴重な時間を瞬間的な感情の昂りによって失うのは馬鹿らしいとさえ思う。しかし、それを表明した以上は引くに引けず、昼休みのうちに徹底的な議論をするしかないと思わされている。そもそも、きっかけは彼なのだ。よって、これは防衛戦である。



私は冷静だ。だが、理解できないこともある。ここは行動の意図を聞き出し、早急な解決を目指す。


「どうしてそんなことを?」


彼は動揺しているようだった。私としては当然の怒りだが、彼にとってこの状況は想定外なんだろう。そういうこともある。人の作る幻想を常識だと考えていた私が悪いのだ。私は、私の嫌だと思うことを彼に伝えるべきだと思う。


「いや、え?そんなに怒ること?」


彼は行為の悪質性を理解していないようだが、怒っている人にそれはないだろう。


「いや、怒るよ。それより、こっちはどうしてかって聞いているんだけど。」

「いやでも本当にこれ美味しいから、一回食べてみて。」

「は?」


悪びれる風もない。私が揶揄されているのか、彼が本当に自身の正当性を信じているのか、わからないほどである。とにかく、そんな言葉に乗せられるほど馬鹿ではない。


「あのさ、人のご飯に砂かけるってどういうこと?冗談のレベル超えてるよね。」


彼は驚いた表情を見せた後、笑い始めた。なるほど、私は最初から負けていたのだ。ご飯に砂をかけられた後すぐに食事を諦め、彼との縁を切るべきであったのだ。腹立たしいが、清々しくもある。私は斜めに視線を落としてため息をついた。

席を立とうとした瞬間のことであった。なんと、彼は先刻私のご飯にかけたものと同様の砂を自身のご飯にもかけ始めた。罰のつもりだろうか、しかし私の心は動かない。この異常者と今後関わることはないだろう。

彼はそのご飯を見せつけるようにかきこむ。いたずらをするためにここまで身を張ることができる人間はそういない。敵ながら天晴れとでも言おうか。私は最後の言葉をかける。


「美味しいですか。」

「うん、いや冗談抜きで!」


滑稽である。

私はその場を去った。彼は嫌がらせのために砂を携帯している異常者であったのだ。世の中にはこういう人間もいるということを認識しないければならない。同じことを言うが、常識は疑わなければならないのだ。時にはこういった災難もあるが、自分の意思で物事を選択していくことを忘れてはならない。自分の身は自分で守るのだ。





















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