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【ダンジョン潜り】 (2-3) ~強化~

~前~


 私が工房を出た時、空はすでに暮れかかり、静かに燃える最後の陽光が街ゆく人々の顔を照らしていた。
 街路を吹き抜ける風は冷たく、私は外套をしっかりと肩にかけ直した。

 外は冷たかったが、私の体は熱かった。
 腰に吊った短剣は鞘の中で脈打つかのように揺らぎ、老鍛冶の振り下ろした槌の音が今も響くように感じられた。

 「我が主は慈悲深い!」
 老いた盲目の鍛冶屋は何度もそう叫んだ。彼は祈りを述べ、時に歌い、楽器のように槌を振るった。

 彼の "演奏" が洞窟じみた工房の中でこだまし、歌が混ざり、小僧の操る砥石の音がそれに加わる。
 老鍛冶は私に、戦神ヤデムへの祈りを吟じるよう命じた。

 私がヤデムに捧げる戦場の詩をたどたどしいながらも "演奏" に乗せると、その不思議な音楽に鼓舞されたかのように炉の火がわっと燃え上がった。
 老鍛冶は笑い、剣は赤熱した。私たちは歌い、祈り続けた。

 そうして彼の手から受け取った短剣は、鈍いが侮りがたい光を放っていたのだ。
 私はただ剣を研ぎに出たつもりであったが、剣は彼の手ですっかり見違えるようになってしまった。

 「お前の祈りが、まさに通じたようだ」
 老鍛冶は微笑んだ。

 剣の刃元には、魔法的な力によるものか、新たな銘が浮き出ていた。
 それはエスの神殿文字であり、こうあった。
 「+2」

~つづく~

~目次~

金くれ