【ダンジョン潜り】 (2-12) ~腕輪~
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私は皆の無事を確かめつつガイオに歩み寄った。
彼が掲げた手の中には、真っ黒に汚れた金属片。見たところ腕輪だ。
「スライムどもはあらゆるものを飲み込むからな、体内に戦利品が紛れ込んでいることはよくあるんだ。」
彼は嬉しそうに腕輪を掌でころがした。
「司書殿!」
「は、はい。」
ガイオが呼ぶと、すこし離れて控えていたエレクトラが進み出た。
「鑑定は専門だと言っていたな。これがわかるか?」
エレクトラは真っ黒の腕輪をおそるおそる両手で受け取ると、汚れの中にかすかに浮き出た表面の装飾から内側にいたるまで、詳しく調べ始めた。
「これは......銀製の、ティラの術具に間違いないと思います。この縁どり装飾のスタイルから見るに相当に古いものではないでしょうか。」
「うん、そうか。神官殿のご意見は?」
エレクトラから腕輪を受け取ったリドレイは神妙な面持ちで答えた。
「もしそうなら、この大きな腕輪の術具、ティラの神官長が身に着けるものに違いないな。」
ティラの神官長は、各神殿に数人だけ任命される高位聖職者だという。
「少し待ってくれ。」
リドレイはそう言うと、腕輪を両手で包みこみ、静かに祈りの詠唱を始めた。私たちが見守る中、腕輪はおこる炭火のように光りだし、黒い汚れはじわじわとぬぐわれていった。
すっかり汚れがはらわれた銀の腕輪は、たった今つくられたかのように光り輝いている。満月の意匠と、緻密な細工が誇らしげですらあった。
「これはこれは。貴殿にはぴったりの戦利品だ!」
ガイオは笑いながらリドレイの肩を叩いた。
「あいにく俺は神官長ではないが。」
「だがダンジョンの報酬とは、まぎれもないその資格の証。」
「そういうことだな。」
リドレイも笑い、右腕に腕輪をはめた。
「ああ。大きな月のちからが流れ込むようだ。」
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我ら徒党が大祭壇の間に踏み込むと、そこには変わらず壊れたティラの座像があり、月の石のはめこまれた彫刻画、そして大祭壇があった。魔物の姿はなかった。
「ここで一度休もう」
ガイオの号令で皆は立ち止まり、荷物をおろした。
テレトハは陣を敷いて結界を張り、リドレイは下層の感知を始めた。
エレクトラに目をやると、彼女は掌より一回り大きな革表紙の呪文書のようなものを取り出し、開きはじめた。
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ガイオ 戦士 ○
リドレイ プリースト ○
ぼるぞい 魔法戦士 ○
カリス レンジャー ○
テレトハ メイジ ○
エレクトラ 司書 ○
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金くれ