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2024 KORG VOLCAを再評価する 初号機発売から10年以上

※画像はkorg.comより

電子楽器には時々、業界全体や音楽業界全体を変えるエポックメイキングな機種が発売されることがあります。

古くはDX7によるデジタルシンセ。
そのあとD50を経てのM1によるPCMシンセ全盛期とかありました。

また、発売直後はそんなに影響与えなくても、そのあとジワジワと浸透して、実は影響が大きかったんだっていう機種も多いと思います。
まさにvolcaがそのようなエピックメイキングな機種だったのでないでしょうか。

とはいえ、volcaは今思うと新発売時からかなり衝撃的な機種でした。未だに新発売が発表された時の興奮を覚えています。安いのに本物のアナログサウンドやmidi同期が楽しめる機材でコストパフォーマンスが余りにすごくこれはとんでもない機種が出たんだ、と。

2013年4月10日に公開されたPVです。いやあびっくりしたものです。


volcaの特徴

korg  volcaは2013年くらいからKORG社によって何機種か発売されていました。
シリーズ共通の特徴としてこのような特徴があります。

VHSビデオテープ大

といっても今は廃れている企画ですが、コンパクトでいい感じです。

スピーカー内蔵

ちっちゃいスピーカーがついてて簡易的に音出しできて便利です ただしあくまでも簡易的なもので、これで本当の音が出ると思ったら悲しいですね。

電池駆動

電池入れられてどこでも駆動できるのでいいですよね
単三電池6本で駆動します。
(確かvolcamixだけ電池駆動できない)

sync端子付き

midiなくても同期ができます
monotribe、volcaが普及するまではsync端子はほぼ忘れ去られていた規格に思えます。
2008年くらいより前にsync端子ついているのは大昔の機材しかなかったように記憶しています。
モジュラーシンセのシーケンスやリズム作りはsync端子が基本になってくるので、モジュラーシンセとも合わせて使えますね。

midi端子付き

volca mixを除く全機種にmidi端子がついているのも偉大ですね。
2013年時点でmidi端子が出てから30年が経ちますが、いまだに使われるのはすごいことです
大昔のシーケンサーとか最新のdawからもシーケンスできます。最新のvolca FM2はTRS midiになってますが、普及しつつあるType-Aなのでいいですね。

音や機能は本物

値段が安く、筐体もプラスティックですが、不思議とおもちゃっぽさはなく、本物のシンセとあまり変わりのない機能と音が出ます。ツマミは小さくてちょっと回しづらいですけどね。


volcaの功績

今考えるとKORGのVOLCAは一部電子楽器界隈にかなりの影響を及ぼしてそうです。
(その前のmonotribeの影響や、DS-10、カオシレーターの功績も無視はできなさそうですが)

  • 安くて小型のガジェットシンセの浸透

  • syncの普及によるmidi以外の同期規格の再興
    (volcaはsyncとmidiの変換にもいいんですよね)

  • アナログシンセの再興

  • ミニプラグ搭載機材の増加

  • モジュラーシンセブーム

モジュラーシンセブームやマシンライブが盛んになったのにはvolcaの功績が非常に大きいのでないかと。
volcaの凄いところは、価格は安くてもMIDI端子を積んでいたり、安くて小さくてもオモチャではなく本物の電子楽器というところです。

volcaには今でも中古で1万円以下で買える機種がたくさんあり、、(と思いましたが、最近は少し高騰していて1万円台前半くらいが相場でしょうか。それでも十二分に安いですが)
1万円以下で、フル機能のシーケンサー付きのシンセサイザーやリズムマシンが買えるのって実は素晴らしいことなのでないでしょうか。

またバーチャルではない、midi端子つきの本物のアナログシンセが極めて安価で手に入るのは、ある意味DX-7みたいな革命に近いです。

volca以前は小型で本格的な音の出るアナログシンセというのはなかったのですね。
(volca前夜のKORGのmonotronとかありましたが、性能が圧倒的に違います)
またvolcaは各機種工夫を凝らしたシーケンサーを積んでるのも特徴です。
この値段で音源もシーケンサーも積んでるのは凄いのでないでしょうか。


KORG VOLCAって初号機のvolca beats bass keysが2013年の6月に出てからもう10年以上経ったのですね。

volcaの歴史と各機種を振り返りたいと思います。

初期

volca keys(過去所有)

他の記事でも書きましたが、コストパフォーマンスが素晴らしいアナログポリシンセサイザーです。
800dvという70年代のシンセの設計を参考にしたというオシレーターの音も実にいい音がします。手放してしまいしましたが、まだ値段が安いうちに買い直したいくらいですね。
標準midiというのも便利ですね。
独特な煌びやかな音がするような気がします。
unisonしたり、コード演奏したり5thを重ねたりオシレータを選択できた気がします。
なお、同時発音数は3音ですが、3音でもアナログポリシンセ自体が珍しいので非常に貴重な機種です。

volca beats(過去所有)

アナログリズムマシンです。本当のアナログの音がします。スネアが弱かったりするところもありますが、これはこれで愛されて個性もあるんじゃないでしょうか。スタッターで連打をかけるのも楽しかった記憶があります。
スネアの音を強化する改造も結構簡単にできるみたいです。
当時他に買える安価なアナログリズムマシンってなかったんでないでしょうか。
この機種が出た後に、akaiとかarturiaとか各社からも手頃なアナログリズムマシンが発売されました。
また、パラアウト化改造もできるみたいです。

volca bass(過去所有)

銀色のボディがみんな大好きなあの機種みたいですね。あの303を意識したアシッドベースマシンということでしたが、なかなか凶暴で分厚い音が出て扱い難い機種だった記憶があります。
3vcoあるので擬似和音なども出来た記憶があります。
なんせ音が太いので、EWI4000のようなウインドシンセにつないでも良い音が出たような。ただ、フィルターがすごくクセがあった気もします。とはいえ、この独特な音も再評価されそうな気がします。

中期

volca FM(過去所有)

DX7エミュレーターを積んでいるというFM音源シンセです。この大きさで元のDX7と同じ6op機ですが、小さいシンセで6opは珍しく、なかなか太い音が出るように思えます。2回買って2回売りました。
(FM音源の場合、一般的にop数が大きければ大きいほど複雑な音作りができると言わせているようです。近年のdigitoneやrefaceといったFM音源だと4opしか積んでないのが殆どですが、波形選択の自由度とかで6opと音があまり変わらないという説もありますね)
3和音なので、コードを本気に弾く人には物足りないかもしれません。

近年になり、volca FM2として再販されて、リバーブがついたりdin midiからtrs midiになりました。同時発音数も6音になりました。

確かvolca FMとsampleだけリニューアルして再販されています。機能もありますが、内部の部品構成とかが影響しているんでしょうか。

ちなみに私はFM音源大好きなんです。

volca sample

2015年頃に発売された、lobitサンプリングが出来ると売りの機種です。残念ながら所有経験がありません。ただし本体ではサンプリングができず、専用アプリからオーディオデーター転送(だったかな)でオーディオデーター転送ができるというのが売りの機種です。
リバーブとアイソレーターがポイントの様です。
チープなPCM音源マシンとしても使えそうですね。
これってストリングスとかピアノとかの和音も入っているんでしょうか?
80年代のサンプラーみたいな素敵な音が出るハードウェアってなかなかないので少し気になるところです。

プロモビデオが面白いバンドのOKGO版が出てました。あとこちらもvolca sample2としてリニューアルされています。

volca kick(過去所有)

KORGのモノシンセ名機 ms20のオシレーターを取り出してバスドラシンセとして作成した機種です。
これもまた独特な音が出ます。低域にフォーカスしたアナログモノシンセとも捉えることができそうです。
バスドラとしては不安定なのでベースやタムシンセとして使うと良いという話もありました。
あまり使いこなせないまま、モジュラーシンセ移行時に売ってしまいました。(ある意味モジュラーシンセ的な機種っぽい気がします)上手く使えばフロアーですごい音が出そうですね。

volca mix(過去所有)

volca用のミキサーとして、volcaサイズで発売されたミキサーです。ステレオ1系統、モノラル2系統が接続できます。また電源供給も可能です。
搭載されているイコライザーやダイナミクスが面白いのですが、入出力の少なさや電源周りのノイズなど課題も多く、今ひとつ人気がありません。
エフェクターとして面白いのでブレイクしても良いのですが。
また、自己発振パッチングでセミモジュラーのようにBEEP音を鳴らすこともできるみたいです。

後期(現在)

volca nubass

新世代のチップ型真空管を積んだvolcaのベースマシーンです。
最近かと思いましたが、2018年に出たらしく実は結構時間が経っているんですね。
他のvolcaより定価もちょいと高いですね。
ただ、日本語のamazonのレビューを読むと、普通のベースマシーンということであまり評判がよろしくないです。
しかしながら、機材は実機でないとわからないんですよね。操作性の相性とかもあるので。モノしか発音できないベースマシーンもそれぞれ個性がありますね。

気のせいか、使ってる人をあまり見ませんがなんとなく買った方が良い気がします。
Rolandのベースマシーンのaira TB-3も独特の音が出るマシンでしたが、終売後に人気が出て高くなってしまいました(あれはあれでかなり独特な音が出ます)
volcaも終売後にかなり人気が出そうな気がしますね。これ以外にもvolca kickとか。

volca drum(過去所有)

これはなかなかすごい機種で、物理モデル音源をベースにした謎の打楽器を6台搭載しています。アナログシンセをベースにしたアナログリズムマシンとも、PCMリズムマシンともまた違います。
モジュラーシンセだとかつてmutable instrumentsが物理音源を発売して、かなり人気があったそうです(2015年くらい?)ringsとかelementsというやつですね。
どうもその辺りの発想でドラムマシンを作ろうということで物理音源が搭載されています。時折凄まじい音が出ます。

ただ、、この機材は小さすぎて操作性が難しいです。そもそもの機能が多すぎるのと、そもそも概念自体がなかなか難しく、音色が予想しずらいところがあります。uneuneさんという使い込まれている達人もおります。私には無理でしたorz

ちなみに物理モデル音源は90年台にYAMAHAが開発して、超高額機種を数機種発売して、そのあと2000年前後の初期electribe(ER-1)で korgが搭載してるくらいで、実はハードウェアがあまり出ていません。
モジュラーシンセだと色々あるのですが。
そういった意味でも実はかなり貴重な機種のように思えます。他の機材では出ない物凄い音が出ますね。

volca modular

volcaサイズでもパッチングができるというセミモジュラーシンセです。
一般的なアナログシンセによくある減算式(東海岸シンセシスとも言うらしい)ではなく、ブックラ等をベースにする西海岸シンセシスを採用している機種です。
これはこれで実に面白いのですが、通常のユーロラックモジュラーと電圧の互換性がないと言う欠点があります。単体で使ってもいいのですが、やはり勿体無いですよね。BASTLのセミモジュラーと互換性があるとも言われていますね。

誰か開発者の方が上から被せてユーロラックモジュラーと互換性を持たせるアタッチメントの開発案を出していたような記憶があるのですが、一向に出ないのでもしかして夢だったのかもしれません。

volca fm2

volca fmのところでも触れた、volca fmの後継機です。

以下の記事にも詳しいですが、同時発音数が6音になっていて、リバーブ搭載、ベロシティ受けができるというのは、外部FM音源としても非常に良いのでないでしょうか。midi端子もTRSmidiになりましたが、一般的なAタイプなので比較的安心できますね。

volca sample2

volca sampleの後継機です。メモリーが増えて、シーケンサーも強化されたようです。大きいところはサンプルの転送方法にUSBを使えることでしょうか。


volcaの落とし子たち

2013年にvolcaが生まれて以降、volcaの影響を受けたのでは?という小型で廉価の電子楽器が各種生まれています。volcaとSyncして楽しめそうです。また、ここには取り上げなかったのですが、手のひらサイズ以下の小型のセミモジュラーシンセやガレージシンセが国内外の開発者によって多々発売されています。(BASTLなど)それらの中にも、Volcaからインスパイアされてできた機種もありそうですね。

sonicware livenシリーズ

日本のベンチャー電子楽器メーカーです。素敵な機材を多数販売しています。
中でもlivenシリーズがvolcaによく似たコンセプトでかなり良いです。
volcaより少し大きく、その分操作がやりやすいです。
din midi やスピーカー付き、電池駆動とかvolcaに似ていますね。
またFM音源ゲーム機のメガドライブを意識した筐体やlofiサンプラーなど、面白い機材もあります。なお、volcaのacアダプターがそのまま使えます。

Roland aira compact

Rolandがairaシリーズの新規軸として、小型機種シリーズを出しています。
midiもsyncもついていて、volcaと似ていますね。(でもスピーカーはついてない)volcaよりもさらにコンパクトでさらに高性能になっていて、Rolandの技術力の高さを感じます。
便利なのはUSB-TypeCがついていて、充電式バッテリー内蔵というところでしょうか。
全部で9種類くらい出るのではないか、といわれてますがまだ揃ってません。

behringer mini & microシリーズ

近年、各種クローンシンセで気勢を吐いてるベーリンガー社ですが、ここからもvolcaを意識した小型シンセシリーズが発表、発売されています。

microシリーズはUSB接続で音源のみに割り切ったものです。Rolandの90年代バーチャルシンセの名曲、JP-8000シリーズを意識した機種が出ています。
端子がヘッドフォン兼ねる音声出力と、USB Type-Cだけで割り切った作りとなっていますね。PCにつないで、気楽な拡張音源として使うことを想定しているのでしょうか
(最近発表された機種ではTRS-midiもついてる機種がありますね)

miniシリーズはmidi端子やsync端子を搭載し、もう少しvolcaに近く、実戦投入しやすい作りとなっています。(ただしスピーカーや電池駆動はなし)
こちらはsequential circuitのデジタルサンプラー prophit-vsを意識したシンセが出ています。

2シリーズとも他にも色々新商品が予告されていて、miniシリーズには80年台の名機、matrix1000の互換チップを使ったmonotribeの再来のようなhirotribeとか興味深いモデルがたくさん発表されてます。しかし、全然発売されません。この会社は戦略が謎です。

Stylophone GEN X-1

金属鍵盤を持つ独特の電子楽器、Stylophone。
昔はシンプルな機種しかなかったのですが、近年はフィルターやディレイもついて楽しそうです。スピーカーもついていてvolcaを彷彿とさせますね。

teenage engineering POシリーズ(Pocket Operator)

北欧の電子楽器メーカー、teenage engineeringから電卓状の基板にコンパクトに機能をまとめた小型シンセサイザーシリーズ、POシリーズが出ています。Syncもついていて、楽しく同期して遊べそうです。
実は一部機種を持っていたのですが、純正カバーがあまりにも操作性がイマイチですぐ売ってしまいました….
少々おもちゃ感が強すぎるのか、普及している割にはあまり使っている人を見かけません。基板とつまみむき出しなので現場での運用が結構難しそうですね。

KORG NTSシリーズ

KORGから近年発売されている小型シンセのシリーズです。筐体を自分で組み立てるようにして、安価にしてるようです。
楽しそうなデジタルシンセやオシロスコープ、最近カオスパッドも出ました。
リンクは高性能なデジタルシンセのNTS-1 mkiiです。
sync in outとmidi in outがついていますね。
端子だけを見ると、electribe2並に高性能です。
お手頃価格なので揃えてもいいかもですね。


まとめ

改めてまとめると、volcaには実に魅力的な機種が揃っています。

volcaに限らず、グルボなどの機材持ち全般に言えるのですが、機材が多くなるとモジュラーシンセで実はまとめられるのでないか?という気がして、どこかでモジュラーシンセに乗り換える人も自分含めて多い気がします。ライブに使うとacアダプターとかケーブルとか結構大変なんですよね。

しかしながら、やはりvolcaにはvolcaの良さがすごいのでまた何機種か買いたくなってきました。
最近はあまり新機種も出ていなくて寂しいですが、また新しい機種に期待したいです。volcaはコスパが良すぎるので、他のシンセも売れなくなりそうで企画が難しそうです。
volcaと同じ機能をモジュラーシンセで実現しようとしたら10万以上するのでは?と思うとき多いですね。

VOLCAは発売後30年の2043年くらいでも愛されていそうな機材のように思えます。そのころは基板とかツマミとかヘナヘナですが、リペア手法とかカスタム手法とか、魔改造する手法とか色々生まれていそうですね。



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