短編 異次元人 

俺はトラベラー。そして、探窟家だ。
俺のチームは、この山にあるアビスに次元の歪みがあることを発見した。
「なんだか視界がボヤけるな」
「見えている次元が変化していっているんですから当然ですよ」
「そうか」
そして、俺たちは下へ降りて行った。強い霧が出ていて視界はほとんど見えなくなった。
下へ行けば行くほど寒くなり、ロープを握る手がかじかんだ。
そして、俺らはアビスの底についた。
そこで待っていたのは、異次元人そのひとだった。
異次元人は全身が透明で、顔は無く、表情は体の色が変化することで分かるシステムになっていた。
「我々のことが分かるのか?」
そう質問すると、異次元人は緑色になった。
色々話してみると、どうやら温厚な性格であるということが分かった、赤色になった時を除いては。
赤色になった時は危険信号を出しているようなもので、とても危険な空気感になった。多分、仲間を呼ぶときに赤くなるのだろう。赤の時は、異次元人は暴走し始め、俺のチームの隊員一人が腕で殴られてケガを負った。そのくらい危なく、暴れていた。まぁ、すぐに収まったので良かった。

だが、いろいろ会話をしても、異次元人が何を求め、何を糧として生きているのかは分からなかった。
そして、もう得るものはないと早々判断した俺は、ロープを掴み、アビスから出ていった。

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