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【小説】まれびと

東北の山奥に寂れた村があった。
季節は冬で、皆は家の中に入って暖をとって夜を過ごしていた。
ある家ではお爺さんが孫たちに怪談を聞かせており、ある家では娘たちが民謡を歌っていた。
平和な時を各々の家で過ごしている、その時だった。
クマが現れたらしい、山に最も近い家から悲鳴が村中に響いた。
村の人々は驚き、男達は武器となる物を持ってその家へと直行した。
男達は雪道を踏みしめながら思った。
縁起の悪い物ではないかと。
やがて、その家が見えてきた、戸は全開にされており明かりが漏れていた。
声は聞こえず、中を男達が見るとクマが死んでいるのだが、その場に長身の男が立っている、後ろ姿は裸で、赤かった。
男達はまじまじとその様子を見ていると家の後ろから家主一家が回ってきて男達に言った。
「なまはげ様だ」
皆が驚き、家をまた見ると、なまはげと思しきソレは振り向いた。
まさに、なまはげである、鬼のようなゴツゴツとした体、赤い肌で鼻は高く目の色が青かった。
なまはげは異界の言葉を喋り、怒ったような不安そうな顔をして男達の間を通り抜けて山の中へと消えていった。

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