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【小説】約束の場所【自動タイトル】

「20年後のここで、また会おう!」
そう言ったのは小学生の頃の親友だった、アッちゃんが引っ越す前に言った言葉だ。
この約束の場所、住み慣れた街を見下ろした高台にある場所だった。
アッちゃんは、その後、どうなったか分からない今もあの約束を覚えているかもしれないし覚えていないかもしれない。
僕は、毎日この街でぐうたら過ごしていて、あの約束の場所を通ることも少なくなった、街も随分変わってしまって、行きつけの駄菓子屋が潰れ、空き地と友達のみっちゃんの家は無くなって、そこに大きいスーパーが横たわり、バスの路線が増えて、道がでかくなった。
そんなこんなで20年が経ってしまった、明日は約束の日、約束の場所にアッちゃんが来る。
本当に来るのだろうか、僕は何か胸が高鳴りながらも、だらんと天井を見つめて夜を過ごした。
ハッと起きて気付くと時計は五時を指していた。
部屋は黄色に輝いていて僕は焦って、約束の場所まで走る。
焦っているからか周りのものが異物に見えた、標識に大きい目が描いている感じがした、だが、そんなことよりも約束の場所へと走る駆ける。
坂がいつもより急だ、最近、通ってないからか。
約束の場所が見えた、紫色に照らされた人がいるアッちゃんに違いない、僕は走りながら、謝罪の文言と最初にかけるべき言葉を考える。
アッちゃんがこちらを向いたので声をかける。
「アッちゃん!久しぶり!ごめん待たせて!」
「よぉ!」
アッちゃんじゃない。
そいつは紫色に照らされた顔でニッコリ笑っていた。
時が経過しているが明らかにアッちゃんではない僕は、そう確信した。
この街も、この場所も……
そうだ、なんだよ紫って。
僕がそう横を向くと太陽ではない大きな紫色の星が輝いて、空を、街を照らしていた。

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