私について_2
前回からの続き。小中学生時代。
植物人間になる
小学校の高学年になる頃には、他者の期待に盲目的に応える自分の生き方に嫌気がさし、鬱っぽくなりかけていた。
私はもともと自由奔放な部分を持っているのだが、当時はこの奔放さは「女の子らしくない」「生意気」とされ、私は自分らしく振舞うことを諦め従順な子どもになっていた。
このまま、いい学校に入って、いい会社に入って、いい人と結婚して・・・という人生を想像すると、人生はとてもつまらないもののように思えた。
夏休みの家族旅行もクリスマスも、形式的な行事で中身が無いように感じられ、年々楽しくなくなる自分に違和感を感じるようになっていた。
そんなある日、高熱が出て学校を何日か休むことになった。体感的に「いつもの風邪と違うなぁ」なんて思っていたら、あれよあれよという間に歩けなくなった。難しい脳の病気だった。
緊急入院した日から次第に体が動かなくなり、最後にはまばたきもできなくなった。ベッドに、横になったまま動けない私はとことん無力だった。
ある晩、ベッドの脇で、医師が母に「今晩が山です」と伝えるのがかすかに聞こえた。当時、私はその意味を知らなかったが泣き崩れる母の声を聞き、自分は今晩死ぬのだと悟った。
死を目前にして、悲しい気持ちになるのかなと思いきや、私に悲しみはなかった。家族を愛していたが、なぜか未練はなかった。おそらく、私は人生にとても疲れていたのだと思う。
白い光に包まれるようにして、その夜私は眠りに落ちた。「これで、人生終わるんだな」と思いながら。
しかし、翌朝、強いカサブランカの香りで目が覚めた。
お見舞いでいただいたカサブランカの香りが病室いっぱいに広がっていたのだ。この花が私を呼び戻してくれたように感じられた。
その後、植物状態から奇跡的に回復した。そこから、私の2度目の人生が始まったように思う。
受験と不登校
植物人間の状態から奇跡の復活を遂げた私は、不本意ながら精神的な発達を遂げてしまった。
強烈な自我が芽生え始め、他者の期待に応えるのではなく、奥底から湧き上がる「自分を生きたい」という衝動を抑えきれなくなっていた。しかし、そんな私の変化は周囲からは受け入れてもらえず「退院してから、言うこと聞かなくなったよね?頭がおかしくなった」と親からも親戚からも言われるようになった。
実のところ、それまで周りの言うことに従順に生きていたので、自分の意見が言えるようになるという変化に私自身も驚いた。自分は悪い子になってしまったのではないかと、自分を責めることもあった。
それまでの「従順な自分」と「自己主張が出来る自分」との葛藤で苦しんでいる中、中学受験というイベントがやってきた。
母自身が中高一貫の女子校出身ということもあり、母の私に対する期待は大きかった。私は「公立に行きたい」と希望を伝えてみたものの、この中学受験というものを回避することはできず後ろ向きな気持ちで受験に臨んだ。
無事、中学には合格したものの、1年生の冬には原因不明の頭痛でベッドから起き上がることができなくなった。状態が悪化し入院をした末、不登校になった。病院では自律神経失調症との診断が下り、親子でカウンセリングを受けることになった。
家族の呪い
原因不明の体調不良は中学3年の終わりまで続いた。その間、定期的に母娘でカウンセリングに通った。
カウンセリングは母とは別で行われる。私は大人を信用していなかったのだろう。守秘義務が守られるはずがないと思い、最初の数か月はカウンセリングルームで沈黙を貫き通した。
せっかく入学した学校に行けなくなり、勉強も疎かになり、体調不良で歩くだけでもフラフラする自分は生きている価値がないと本気で思っていた。
悪いのは根性の無い自分だと思い込んでいた。早くこの世界から消えてなくなりたいと願っていた。
しかし、カウンセラーの辛抱強い関わりをきっかけに、私は少しずつ自分のことを話せるようになっていった。話していくプロセスの中、自分が悪いと思い込んでいたけれど、私だけが悪いわけではないのかもしれないという視点を持てるようになっていった。
家族とのつながりの中で、私に何らかの現象が起こっているのだと、初めてシステム(※)として家族を捉えることが出来た。家族のシステムの歪みによって、私に何かが起こったかもしれないという気づきは大きかった。
実のところ、体調不良になるまで、自分の家族に原因があるとは思っていなかった。
詳細を記すことは差し控えるが、家族や親戚の中に根付いている男尊女卑文化、親戚からの性的ハラスメント、モラルハラスメント、暴力など表には見えないところで様々なことがあった。辛いことがある度に、気持ちを抑圧し誰にも言わずに墓場まで持っていかなくてはと思っていた。私が我慢すればいいと思っていた。
(※)システム:お互いに影響しあう要素や構造のつながり
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