佐藤伝『命がホッとする生き方』☕
花巻市博物館では、年1回のペースで『多田等観展』を開催しています。
1900年代初頭に単身チベットに潜入し、チベット密教の僧侶として最高位の称号を得た秋田出身の方で、世界的なチベット研究者の一人です。
辛亥革命を機に等観がチベットを去る際、ダライ・ラマから贈られた宝物の一部が、戦時中に彼が疎開していた岩手県花巻市の博物館に所蔵されています。
私は2021年にこちらの本に出会いました。
著者である佐藤伝さんは、等観の孫にあたる方なのですね。
本の中で祖父との交流を回顧しながら、生きることについて語っています。
親しみやすい文章が、そういうことか!という気づきを与えてくれます。今ではその気付きが、私の大きな支えになっています。
読み進めていて、2015年の出来事とつながったことがありました。
2015年。私は半年間のビジネス研修のなかでマンダラチャートなるものを知りました。
中心に主なる目標があって、それを実現するための行動を8つ書き、更にその8つの行動を実現するための行動を8つ書くというものです。
講師は「大谷翔平は寮の壁にマンダラチャートを貼って目標を実現した」と我ら生徒に語っていたことを覚えています。
大谷翔平さんが活躍すると同時に、この目標管理の手法をメディアでも取り上げていましたね。
オオタニサーンの母校、花巻東高校に、このマンダラチャートの導入を推進したのが、国際ナイン・マトリックス協会会長で、本の著者であるお孫さん(佐藤 伝さん)だったのです。
大谷翔平選手の行動の背景にあるのが、佐藤伝さんのナインマトリックスで、さらにその背景には多田等観さんの経験があることが分かりました。
人は繋がるんですね。
『考えを整理して、行動に移す。』その取り組む姿勢の中に、美しい心があるように思えます。
花巻東高等学校の、硬式野球部の監督である佐々木洋氏は、高校時代の大谷さんは骨が成長しきっていないことをレントゲンで把握していました。
負荷をかけすぎると将来に懸念があったため、科学的なアプローチで生徒の健全を推し進めたと思われます。
そのお陰なのか、驚異的な活躍で日本だけではなく世界が認める活躍を見せてくれるようになりました。
科学技術の活用で健全な肉体を作り、古来からの教えで心を鍛える、その結果が今の大谷翔平さんなのかも知れません。
技術や道具は日々進化しますが、大事なことは昔から変わっていないことの証だとも思いました。
『技術が心を超えてはいけない』。これは私の持論です。
メジャーリーガーのスーパースターが、球場のゴミを拾っている。これは技術ではなく、心ですよね。それも美しい心。
『そんなのメジャーリーガーのすることじゃない』などと批判されもしましたが、それを吹き飛ばす信念と活躍。
ゴミが有ることを人のせいにせず、「運を拾った」と自分の事として受け入れる。
この「受け入れる」考え方こそ、多田等観が示したチベット密教の真髄なんだと、著書を通じて学んだことです。
辛いこと、嫌なこと、気が向かないこと。そんなのにあふれる毎日だし、社会です。
運命のままに受け容れて、流されるほうが圧倒的に楽ですよね。
佐藤伝さんのこの本では、『それで良いんです』と教えてくれます。
その極意を知ったときに、心がとても楽になりました。
語りかけるような文章で、スイスイと読めてしまう。
迷ったときに、悩んだときに、読み返して心をリセットする、そんな一冊です。